「破裂音が聞こえなくなる」のは、口の省エネのため、破裂音が「最後まで発音されない」ことにより生じる現象です。「脱落」や「リダクション」とも言われます。
※「破裂音」とは、[p][t][k][b][d][g]の6つの音です。
「最後まで発音されない」というのは、破裂音の口の形だけを作って、息を出さないということです。つまり、破裂のない破裂音ということです。
破裂を伴わないで発音されることを、「飲み込まれる」と表現されることもあります。
「子音が飲み込まれる」の意味と具体例
例えば、「p」の発音で言えば、次の③の段階がなく、①②の2段階で終わってしまうことになります。
②そのまま息の流れを止めておく
③唇を急に開いて、「プッ」と息を吐き出す
なじみ深いところで、具体的な例を挙げれば、
→ グッ()タイム
・sit down スィット ダウン
→ スィッ()ダウン
これらを、恐らく中学生の時から右のように発音していたと思います。
ただ、注意して頂きたいのは、()の部分は音が抜け落ちますが、その部分を①②の段階まで口を作って発音しようとした“ほんの一瞬の間”が存在するということです。
子音が飲み込まれる理由
では、どんな時にこういった現象が起こるのかと言えば、
(イ)「同じ子音」「似た子音」が連続して発音しにくいとき
(ロ)「大きなエネルギーが必要な子音」が連続するとき
つまり、「口が省エネ」する訳です。
日本語でも、「まったく」のことを「ったく」と言ったりするのと同じことです。
子音が飲み込まれるパターン(イ)「同じ子音」「似た子音」の連続
「同じ子音」が連続したときの、「破裂音が聞こえなくなる」現象の具体例を挙げます。
□[d]+[d]
(例) good day グッド デイ
→ グッ()・デイ
□[g]+[g]
(例)big game ビッグ ゲイム
→ ビッ()・ゲイム
「似た子音」が連続したときの、「破裂音が聞こえなくなる」現象の具体例を挙げます。
□[d]+[t]
(例)good time グッド タイム
→ グッ()・タイム
□[v]+[f]
(例)I’ve found アイヴ ファウンド
→ アイ()・ファウンド
これらのパターンはよく見かけます。
子音が飲み込まれるパターン(ロ)大きなエネルギーが必要な子音の連続
「同じ子音」「似た子音」が連続したとき以外にも次のような場合にも、最初の破裂音は聞こえなくなります。
□破裂音+破擦音[t∫,dʒ,tr,dr]
(例)that church ザット チャーチ
→ ザッ()チャーチ
□破裂音+摩擦音[f,v,θ,ð,s,z,∫]
(例)at the アット ザ
→ アッ()ザ
□破裂音+鼻音[m,n]
(例)Good morning グッド モーニン
→ グッ()・モーニン
音が消える現象
今までは、2つ以上の単語の間で音が脱落する現象を紹介しましたが、1つの単語内で「音が消える」現象を紹介します。
多くのパターンがあるのですが、主なものを紹介します。
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[t][d]は消えやすい
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[nt][nd]の形
□[nt]→ tが消える
(例)twenty トウエンティ
→ トウエニィ
□[nd]→ dが消える
(例)handle ハンドル
→ ハンヌル
[tn][dn]の形
□[tn]→ tが消える
(例)certain サートゥン
→ サー()ン
□[dn]→ dが消える
(例)sudden サドゥン
→ サ()ン
[tli]の形
□[tli]→tが消える
(例)exactly イグザクトリー
→ イグザク()リー
これらのパターンでは、文字上の発音からは、想像もつかない発音になるものが多いので、注意が必要です。
例えば、元アメリカ大統領のクリントン(Clinton)大統領の発音は、「クリンン」と聞こえます。
私も外国人と話しているとき、暫くの間、『一体「クリンン」って誰だろう?』と思っていました。
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語末の破裂音は消えやすい
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[p]が消える例 help ヘルプ → ヘル()
[d]が消える例 God ガッド → ガッ()
破裂音が聞こえなくなる現象を学ぶお勧めの書籍
「破裂音が聞こえなくなる」現象を学ぶにも、CD付きのテキストが必須になります。
リエゾンの現象を学ぶときと同じ書籍の紹介になりますが、以下がお勧めです。
・ハイディ矢野の法則77(ハイディ矢野 著)
☞最初の一冊のお勧め
・『英語の耳』になる!BAISICリスニング基本30のルール
(長尾和夫、アンディーバーガー 著)
☞「耳慣らし」の量をこなすのに最適の一冊
・英語の発音パーフェクト学習辞典 (深沢俊昭 著)
☞これ一冊で疑問が解消できる骨太の一冊
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・「リスニングパワー」
☞発音指導の権威による最強教材
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