すべての日本人に贈る「話すため」の英文法と銘打たれた『一億人の英文法』は、大西泰斗氏とポール・マクベイ氏による共著で、人気の英文法書です。
Evergreen（Forest)や実践ロイヤル英文法とも比較される人気と知名度の高い英文法書です。ひと昔前までは、文法書といえば、無味乾燥で退屈で一般的には売れないジャンルでした。せいぜい高校の先生のインテリア程度の存在だった文法書ですが、前述の３冊は爆発的な売り上げかつロングセラーとなっています。
コンパクトな参考書が好まれる時代に、７００ページ近い分厚い参考書が売れるというのは異例だと思います。
著者の大西泰斗氏は、 NHK語学番組の人気講師です。ポール・マクベイ氏との共演も多数あり、息のあった２人の代表作です。
Evergreen（Forest)との比較
もちろん、Evergreen（Forest)も、単に丸暗記をするのでなく、「なぜ？」に答えることを重視している点で共通しています。
しかし、ネイティブの意識や感覚を重視するという点で、一億人の英文法は、異色な存在と言えるでしょう。
ただし、受験英文法をまんべんなく網羅しているという点では、Evergreen（Forest)が優れています。そこは高校の指定教材に選ばれることが多い同書のメリットです。
あくまで一億人の英文法のゴールは、「英語を話せるようになること」にあります。
比較されることの多い文法書ですが、目的に合わせて選択するといいでしょう。
一億人の英文法の特徴
一億人の英文法の特徴は、「話すための英文法」を学べる点です。
英語は話すことができて、初めて役に立つのです。
従来の英文法書は、文法項目の羅列とその解説というものがほとんどでした。その結果、読書は膨大な規則とその例外の暗記に忙殺されることになります。まさに英文法のための英文法でした。
しかし、一億人の英文法では、丸暗記に頼るのではなく、ネイティブの意識や感覚を理解することで、ネイティブの持つシンプルなシステムを理解することを目指しています。
膨大な規則や例外も、そのシステム内に内包されていることを知れば、暗記は最低限で済みます。
こういった姿勢が、英会話習得を目指す大学生や社会人だけでなく、大学受験を目指す受験にさえ支持されて、ベストセラーになり得たのだと思います。
英語はとても単純なことばです。だけどその単純さに気づかなければ大変な回り道をしてしまうことばでもあります。
ネイティブの意識や感覚を理解するとは？
ネイティブの意識や感覚を理解するというのは聞こえはいいですが、一体、どういうことでしょうか？
抽象的過ぎますよね。
一億人の英文法の一部を引用して説明します。
例えば、「他動詞」の説明です。
普通の文法書だと、「目的語を従えた動詞」という型に注目した説明になると思います。
しかし、一億人の英文法では、
動詞の「力」が対象物（目的語）に加わる・及ぶ
このように他動詞の文型について説明しています。
そして、次のようにさらに詳しく説明されています。
次の文を見て見ましょう。（1）は多動型、
（2）は前置詞が使われた自動型です。
（1）He shot the bird.
（2）He shot at the bird.
（1）は目的語に力が及ぶ多動型。彼は鳥
を撃った ー 鳥に命中するところまでを
意味に含んでいます。一方、（2）は単な
る行為。
目標を示すatが加わり「鳥を目がけて撃っ
た」。命中までを意味に含んではいないの
です。他動型と自動型の持つ意識の違いが
クッキリと浮かび上がりますね。
上記の通り、一億人の英文法では他動詞の文の型だけに注目するのではく、ネイティブの意識にある、単語の持つパワーに言及しています。
これを理解していれば、ターゲット１９００に指摘があった、searchとsearch forの違いが一発で理解できます。
・search for 人・・・人の行方を探す
※他動詞の方は、人に“強い力”が及びます
こういった説明は、力のある予備校の講師なら教えてくれる方も多いのです。しかし、通える環境にない人とっては、一億人の英文法は、目から鱗の内容のオンパーレドになります。逆に言えば、こういった他動詞の説明が肌に合わないと思えば、一億人の英文法は購入しない方がいいでしょう。
もちろん、ゴリゴリ暗記で押すのも、人それぞれの学習スタイルです。優劣はありません。
一億人の英文法の評判
一億人の英文法は、英語教材完全ガイド2018でジャンル別のベスト教材（読み・書きの部）で第１位に選ばれています。
全英語学習者必携の１冊。日本における教材の最高峰
厚い本なので苦手な分野から読み始めるのがオススメです
暗記するまで例文音読すれば基礎力アップは確実です！
TOEIC得点が伸び悩んでいる そんな人にもオススメの一冊
一億人の英文法の学習法
一億人の英文の学習法は厚い参考書ですが、辞書代わりにするのはもったいないです。
「英文法を巡る冒険」という小説を読むかのように、一気に通読をすることをオススメします。高校レベルの学力がある方なら、１日１００ページ×７日で読了することができると思います。（大変かも知れませんが・・・）
一気に読むのがコツ！
小説もチマチマと読むと、登場人物や設定を忘れてしまい、楽しさが半減します。一億人の英文法の世界観を楽しみながら読み込みましょう。
最低３周しよう
１度では理解できなかったところが、２度３度と読むことで、しっかりと理解することができます。全体像が分かったことで、細かい部分も見えやすくなります。
これは、日本史や世界史の勉強と似ているかも知れません。
分かりにくいところは、気にせずスピードを重視
分かりやすいところが定評の参考書ですが、感覚的にしっくりしないところが出てくるかも知れません。
特に１度目は気にせずに、次に読んだ時に理解できればいいやと気にせずに読み進めましょう。
重要分野は音読してみる
何しろ分厚い参考書ですので、全てを音読するのは大変です。比較とか前置詞とか重要分野や苦手分野を中心に音読すると応用の効く勉強法になります。
前置詞の章は必見！
読みやすいですが、時間のない人、挫折する人も出てくるでしょう。しかし、途中でやめようと思っても、前置詞の部分は必ず読んでいただきたい箇所です。
一億人の英文法のまとめ
一億人の英文法は、分かりやすさを追求した万人向けの英文法書です。
もちろん、受験勉強に忙しい受験生には遠回りに見えるかもしれませんが、コアとなる英文法のイメージを掴むことで、暗記の量を減らせる効果が期待できます。
もちろん、話すことや英作文にも役立ちますし、リーディング能力の向上にもつながるはずです。
オススメの一冊です。
ただし、一億人の英文法の目指すところは、話すための英文法です。
知識で眠らせることにならないように、スピーキングの学習に結びつけこそ、この参考書の真価を発揮できます。