英語のリエゾン(liaison)とは、話し言葉で単語同士が滑らかにつながる音声現象のことです。
特に、ある単語の語尾が子音で、次の単語の語頭が母音の場合、子音が次の単語の先頭にくっつくように発音されます。
たとえば「pick up」は「ピック・アップ」ではなく「ピカップ」のように聞こえます。このようなつながりを「リンキング」とも呼びます。
また、語尾の音が脱落したり、逆に /r/ や /j/、/w/ のような音が挿入されることもあります。
リエゾンはネイティブの自然な発話には不可欠で、英語らしいリズムやイントネーションを作る重要な要素です。
英語学習者にとってリエゾンの理解は、リスニングとスピーキングの両方において極めて重要です。
単語単体での発音練習に加えて、フレーズや文全体での練習を取り入れることで、リエゾンを体感し、自然な英語の流れを習得することができます。ネイティブのような滑らかな発音を目指すなら、リエゾンのパターンを知識として理解し、それを口と耳で体得していくことが不可欠です。
リエゾンは、英語のリスニング学習の一分野と言えますが、かなり重要なウェイトを占めていると言えるでしょう。

リエゾンの仕組み
「hand」と「in」の前後するふたつの語のうち、
・1番目の語が子音で終わる
・2番目の語が母音で始まる
上記などの場合、2つの語がつながって発音されます。
(ここで、「上記など」と書いたのは、「母音」+「母音」のパターンも
あるからですが、ここでは割愛し、「子音」+「母音」のみ説明します。)
ですから、「ハンド イン」と切れて発音するのでなく、「ハンディン」と
つながって発音されます。
日本語と異なり、英語では、このリエゾンという現象が頻繁に起こります。
リエゾンの代表的パターン
リエゾンには、無数の組み合わせがあるのですが、代表的なパターンを押さえることによって、リスニング能力が短期間で向上しやすいです。
逆にリエゾンのパターンを学ばず、闇雲に英語を聞き流すのは、効率が悪いと思われます。
リエゾンのうち代表的なパターンを紹介します。
① 子音+母音のリンキング
単語末が子音、次が母音で始まるとき、多くの場合その子音は次の語頭母音へ滑らかに移動する。
- take‿it → /teɪ kɪt/(語間ポーズ無し)
- pick‿up → /pɪ kʌp/
「子音を次の単語へくっつける」と意識すると舌や唇の動きが自然になり、自分の発音も滑らかになる。日本語の「テイクイット」と区切って言うと /ku/ の後に母音 /ɪ/ が遅れ、英語らしいリズムが崩れる点に注意。
[t+母音]
just a moment ジャスト ア モーメント → ジャスタ モーメン(ト)
[d+母音]
mind if マインド イフ → マインディフ
[n+母音]
an apple アン アップル → アナップル
[k+母音]
talk about トーク アバウト → トーカバウ(ト)
[r+母音]
far away ファー アウェイ → ファーラウェイ
[l+母音]
tell us テル アス → テラス
[3語以上の連結]
mind if I マインド イフ アイ → マインディファイ
② 同じ子音の重複簡略化
隣接する単語が同じ子音で終わり/始まる場合、その子音は一度しか発音されない。
- big‿girl → /bɪɡ ɡɜːl/(/ɡ/は1回)
- stop‿pushing → /stɒp pʊʃɪŋ/(/p/は1回)
日本語では意識的に促音「っ」を入れて区切りがちだが、英語ではむしろ子音を伸ばさずに一拍で処理する方が自然だ。
③ 破裂音の同化・脱落
/t d k g p b/ などの破裂音は後続音に影響されて同化あるいは脱落することが多い。
- good‿boy → /gʊd bɔɪ/ → /gʊb ɔɪ/(/d/ が有声同化)
- next‿year → /nekst jɪr/ → /neks tʃɪr/(/t j/ が /tʃ/ に変化)
- just‿ask → /dʒʌst æsk/ → /dʒʌs tæsk/(/t/ が次語に移動)
破裂音は完全に爆発させず舌先を閉じたまま次の音へ移る「ストップ音」を意識すると、ネイティブの発音に近づく。
④ 挿入音(linking /r/・intrusion)
語末が /r/ で終わる非音声的綴りや、母音同士が連続する場面では半母音が挿入される。
- far‿away → /fɑː rəˈweɪ/(linking-r)
- china‿and → /tʃaɪnə jænd/(/j/ intrusion)
- go‿out → /ɡoʊ waʊt/(/w/ intrusion)
英国英語では non-rhotic のため語末の <r> は通常無音だが、後ろが母音なら現れる。この違いを知れば国ごとの訛りも聞き取りやすくなる。
このように文字上の発音と実際の発音が大きく異なりますので、聴き取りにくい原因になっています。
- スペリングに頼りすぎる
文字の区切り=音の区切りと誤解しやすい。 - 子音をはっきり出し過ぎる
日本語の「明瞭さ」が逆に不自然な間を生む。 - リズムを無視
ストレスと弱形の差が小さいと連結が起こりにくい。
2つの単語の連結は割とイメージしやすいのですが、3語以上の連結にはかなり慣れが必要です。
この種類の連結が起こるのは、次のような理由です。
英語は子音で終わる単語が多い(talk、picnic、us、stop など)
↓
最後に口を開ける方が発音しにくい
↓
子音が母音を求めて結合する
日本語が「子音+母音」をもとに発音されるため、日本人にとっても口になじみやすいです。
そのため、この連結は無理に覚えようとせず、口に何度かなじませるといいでしょう。
リエゾンの学習法
一般的なリエゾンの学習法は、次の通りになると思います。
①リエゾンの知識を頭に入れる
②正しい発音を聴く
③口に馴染むまで練習する
①に関しては、カタカタでリエゾンパターンを解説している書物が多いので、最初はカナで学んでもいいですが、②のようにCDで実際の音声を確認すると実践的です。
そして、音で確認したら、③のように何度も練習するといいでしょう。
リエゾンを学ぶお勧めの書籍
リエゾンを学ぶためには、CD付きのテキストが必須になります。
リエゾンに関する書籍は、発音分野の中でも、比較的多くの種類が販売されています。
その中でもお勧めは次の通りです。
絶対『英語の耳』になる!リスニング50のルール

かなりボリュームがありますので、『英語の耳』を獲得するのに十分な練習がつめます。おすすめの1冊です。
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