英語学習者が「英字新聞を読めるようになりたい」と目標に掲げるのはよくあることです。
しかし、実際に紙面を開いてみると、難しい単語の連続で途中で挫折してしまう方も少なくありません。
英字新聞には、一般的な日常会話では使われない高度な語彙や表現が多く登場し、「語彙の壁」が大きな障害になるのです。
英字新聞を読みこなすために必要な語彙数や語彙レベル、またどの新聞がどれくらいの難易度なのか、語彙力をどう伸ばせばよいのかを詳しく解説します。
そもそも語彙数とは何か?
英語の語彙力を表すとき、よく「英単語を〇〇語覚えよう」と言われますが、そもそも語彙数とは何を指すのでしょうか?
大きく分けて次の2種類があります。
- 受容語彙(Receptive Vocabulary):読む・聞くときに理解できる語彙
- 発信語彙(Productive Vocabulary):話す・書くときに使える語彙
英字新聞において重要なのは「受容語彙」、つまり読んで理解できる単語の数です。これが一定以上なければ、記事の内容がつかめず、読解が困難になります。
英字新聞や英語ニュースサイトに必要な語彙数は何語?
英字新聞や英語ニュースサイトとひと口に言っても、子供向けのニュースサイトから、いわゆるクオリティペーパーと言われる高級紙まで幅広いです。
研究やコーパス(大量の文章を分析したデータ)によれば、英字新聞をある程度快適に読むには、最低でも6,000~8,000語レベルの語彙が必要とされています。
子ども向け英字新聞・英語ニュースサイト(DOGOnews, TIME for Kids)
- 必要語彙数:約2,000語〜3,000語
- 中学英語レベルの英語力だと少し厳しい

The Japan Timesのような英字新聞はまだ自分には難しいから、子ども向けの英語ニュースサイトから取り組もうと思うの。



いいと思うよ。でも、子ども向けだからと言って、簡単ではないよ。



子ども向けだから、中学レベルの英語でも読めるんじゃないの?
中学英語で学ぶ語彙数は、日本の文部科学省の学習指導要領に基づいておおよそ1,200語〜1,600語程度です。



子供ども向けニュースサイトと言えど、中学レベルの英語力だと少し厳しいと言えるかな。



でも、他のサイトでDOGOnewsは読みやすいと書いていたわよ。



一般的な英字新聞に比べて読みやすいだけで、決して簡単なわけではないよ。ちなみに以下の英文はDOGOnewsの記事の一部引用だよ。
Chimpanzees are well known for their intelligence, especially in using tools to hunt and gather food. Now, new research on chimps at Gombe Stream National Park in Tanzania, Africa, suggests these clever primates are not just tool users — they may also natural engineers.
引用元:
https://www.dogonews.com/2025/6/4/chimpanzees-use-smart-tool-tricks-to-catch-bugs



本当だわ!確かに高校生や大学生なら読めそうだけど、高校受験を控えた中学生でも難しそうな内容ね。



単語数だけでなく、子ども向けのニュースサイトが必ずしも簡単でない理由がまだあるよ。
受験英語の盲点として、「生活単語」をよく知らない



「生活単語」ってどんなもの?
日本の英語受験生は、文法や読解力には強くても、意外と「生活単語」に弱い傾向があります。



生活単語とは、日常生活の中で使われる基本的な単語のこと。たとえば、「くし(comb)」「ゴミ箱(trash can)」「踏む(step on)」「ほうれん草(spinach)」などが該当するかな。



確かに!ほうれん草(spinach)なんて、現地の子供なら誰でも知ってそうだけど、日本の教科書や参考書ではなかなかお目にかからないわね。
こうした語は入試や教科書にはあまり登場しないため、体系的に学ばないまま高校・大学受験に臨むケースも多いのです。その結果、英語圏での実践的なコミュニケーションに困ることもあります。
当然、これらの生活単語は、こども向けのニュースサイトに当たり前に出てきて、英語が得意な高校生や大学生でさえ意外と手こずります。
一般紙(The Japan TimesやThe Guardian)の場合
- 95%の語彙をカバーするためには:約6,000語
- 98%をカバーするためには:約8,000語〜10,000語
文を読むとき、知らない単語が全体の5%以上あると読解に支障をきたすと言われています。
つまり、語彙カバー率98%以上を目指すのが理想です。



大学入試で必要語彙数の目安が4,000語~5,000語程度と聞いたことがあるから、一般紙はさらに難しいのね。
語彙レベルとは?CEFRや語彙リストとの関係
語彙数だけでなく、「語彙レベル」も重要です。これは単語がどれほど難しいかを示す指標で、以下のように評価されます。
CEFRと語彙レベルの目安
CEFR | レベル | 必要語彙数の目安 | 英字新聞対応度 |
---|---|---|---|
A1 | 初級 | 500〜1,000語 | × 無理 |
A2 | 初中級 | 1,000〜2,000語 | △ 子ども向けで可 |
B1 | 中級 | 2,000〜3,500語 | △ 簡単な社説など |
B2 | 中上級 | 4,000〜6,000語 | ○ 一般記事読解可 |
C1 | 上級 | 7,000〜10,000語 | ◎ 大半の記事に対応 |
C2 | 最上級 | 10,000語以上 | ◎ 専門記事・文学も可 |
NGSLやAWLとの対応
- NGSL(New General Service List):3,000語で英語の90%以上をカバー
- AWL(Academic Word List):大学レベルや論説文に多い語彙
英字新聞の多くは、このAWLに含まれる単語を多用しているため、大学入試やアカデミック英語対策とも相性が良いのです。
NGSLとは?
NGSL(New General Service List) とは、英語学習者が英語の文章を効率よく理解するために、最も頻出する英単語を厳選してまとめた語彙リストです。
英語の「基礎語彙」の中でも、使用頻度が高く、実用的な単語が選ばれています。
1. NGSLの誕生背景
NGSLは、アメリカの語彙学者チャールズ・ウェストブラウン(Charles Browne)らによって2013年に公開されました。
彼らは、かつて広く使われていた GSL(General Service List)(1953年発表)をベースに、現代英語に即した改良版を作成したのです。
- GSL:約2,000語で構成(1953年)
- NGSL:2,818語で構成(2013年)
NGSLは、より大規模な現代英語コーパス(約2億語)をもとに、最新の英語使用状況を反映して再編されています。
2. NGSLの語彙数とカバー率
単語数(見出し語) | 語彙の種類 | 英語コーパスのカバー率(一般的な英文) |
---|---|---|
約2,800語 | 中学~高校初級程度 | 約92%(日常・一般英語の英文) |
つまり、NGSLをマスターするだけで、英語の文章の約90%以上をカバーできるという非常に高効率な語彙リストなのです。
AWLとは何か?
AWL(Academic Word List) は、大学の教科書や学術論文、研究報告書などのアカデミック英語(学術英語)で頻出する語彙を厳選したリストです。
英語圏の大学・大学院に進学する人、IELTSやTOEFLなどの試験対策をする人にとって、非常に重要な語彙群です。
- 作成者:Averil Coxhead(ニュージーランド・ヴィクトリア大学の研究者)
- 発表:2000年
- 対象:アカデミック英語学習者全般
AWLの語彙数と構成
内容 | 詳細 |
---|---|
総単語数(見出し語) | 570語 |
派生語を含む語形数 | 約3,000語以上 |
分類 | 10のサブリスト(Sublist 1~10)に分かれている |
頻度 | Sublist 1が最も頻出(使用頻度順) |
AWLのサブリストの例(抜粋)
サブリスト | 語彙例 | 特徴 |
---|---|---|
Sublist 1 | analyze, concept, data, method, theory | どの分野でも頻出する基礎学術語 |
Sublist 5 | consult, expand, modify, precise, sustain | より専門的な論文で使われやすい |
Sublist 10 | adjacent, forthcoming, levy, invoke, whereby | 抽象度や難易度が高い語彙 |
AWLの対象ジャンルと用途
AWLは、以下のような幅広い学術分野の文章をコーパス(学術文章8.5百万語)で分析して作られました。
- 経済学
- 法学
- 心理学
- 社会学
- 生物学
- 教育学
- 医学
- 工学
このように、特定の専門分野ではなく、すべてのアカデミック分野で共通して使われる語彙を抽出したのがAWLの大きな特徴です。
主要な英字新聞やニュースサイトごとの語彙レベルと難易度比較
語彙レベル別新聞マップ
新聞名 | 推定語彙レベル(CEFR) | 特徴 |
---|---|---|
DOGOnews | A2〜B1 | 子供向け・易しい |
TIME for Kids | B1 | 中学生向け・教育的 |
VOA Learning English | B1〜B2 | シンプル英語使用 |
The Japan Times Alpha | B2〜C1 | 学習者向け新聞 |
The Japan Times | C1 | 一般紙・やや難 |
The Guardian | C1〜C2 | 硬派で語彙も難 |
The New York Times | C2 | 知的・抽象的表現が多い |
特にThe New York TimesやThe Guardianでは、政治・文化・哲学的な内容に専門語彙が多く登場するため、読解難易度は非常に高くなります。
英字新聞や英語ニュースサイトを読むと語彙力は本当に伸びるのか?
英字新聞を読む最大の利点は「文脈の中で語彙を学べる」点です。
インプット強化に最適
知らない単語に出会ったとき、前後の文脈から意味を推測する力が養われ、受容語彙が拡張されます。
アウトプットにも波及
新聞の見出しや社説に多く見られる「抽象語」や「論理表現」は、英作文やスピーキングにも応用できます。
語彙レベル別におすすめの読み方と対策
語彙数2,000〜3,000語(初級)
- 読むべき:DOGOnews, TIME for Kids, News in Levels
- 方法:音読・語注つき教材で精読
語彙数4,000〜6,000語(中級)
- 読むべき:The Japan Times Alpha, VOA Learning English
- 方法:スラッシュリーディング、意味類推トレーニング
語彙数6,000〜10,000語(上級)
- 読むべき:The Japan Times, The Guardian, CNN
- 方法:辞書を控えめに使い、推測力と読解力を鍛える
語彙力を伸ばす具体的な学習法
英字新聞を使った語彙学習のステップ
- 1日1記事を選ぶ(300~500語)
- 語彙リストを自作し、知らない単語を記録
- 意味を推測→確認→例文化
- 翌日以降に繰り返し復習(Spaced Repetition)
補助教材の活用
- 『速読英単語 上級編』:新聞で頻出する語彙に特化
- 『でる順パス単 準1級〜1級』:新聞語彙との親和性高
- 『大学入試 無敵の難単語PINNACLE 420』:個人的におすすめの単語集です
大学受験を終えたばかりの大学生がさらなるステップアップのため、英字新聞に挑戦するケースが多いと思います。



地獄のように勉強した大学受験の英語を乗り越えたのだから、英字新聞は辞書を引きながら、コツコツ勉強すれば大丈夫と考える大学生が多いよね。



えっ、そうじゃないの?



大学受験英語と英字新聞の語彙に乗り越えるべき壁があるかな。



じゃあ、大学受験の英語は役立たないということ?



そうではないよ。『ターゲット1900』とか『DUO3.0』のような受験の鉄板の単語帳レベルをほぼマスターした上で、さらなる上積みが必要ということだよ。
英字新聞に必要な語彙は英字新聞を読みながら、分からない部分は辞書を引いて覚えるのもひとつの方法です。
しかし、分からない単語が多すぎては、挫折の原因になります。自分に足りないレベルの語彙を市販の単語集で補うのは効率的かつ挫折の少ない方法です。



具体的には、英検準1級や英検1級レベルの単語帳がお勧めだよ。
英字新聞に挑戦するなら、最低でも準1級、できれば1級の語彙はカバーしたいところです。
英検1級 でる順パス単 5訂版


英検1級 でる順パス単 5訂版


特に英検1級レベルは、「大学受験でここまで必要ないだろ!」と思いたくなりますが、英字新聞ではよく見かける単語・熟語のオンパレードです。
また、個人的にはお勧めなのは次の2冊です。大学受験と英字新聞の語彙のレベルのギャップを埋めるのに役立ちます。
大学入試 無敵の難単語PINNACLE 420


『大学入試 無敵の難単語PINNACLE 420』では、unwavering(揺るぎない、断固とした)、avid(熱心な)などの受験用の単語集に載っていないような難単語が掲載されています。
大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300


難単語は無限にあるので、それらを気にしていたらキリがない。
だからと言って、語彙力増強をしなくていい理由にはならない。
学習の進度を測るには?
無料語彙診断サイト
- TestYourVocab.com
→ 英語の語彙数を推定してくれるサイト。自分の語彙レベルを定期的に測定可能。
読解率チェック
同じ英字新聞を月に3回読み返してみて、「前は読めなかったけど今回は読めた」と感じたら、それは確実に語彙力と読解力が上がっている証拠です。
まとめ:英字新聞は「語彙の宝庫」だ!活用しない手はない
英字新聞を読むには、確かに高い語彙力が求められます。最初は6,000語、最終的には10,000語以上を目指す必要があるかもしれません。
しかし、段階を踏んで語彙レベルを上げていけば、必ず読めるようになります。
「子ども向けからスタート→学習者用新聞→一般紙」という流れを守れば、誰でも英字新聞を読めるようになります。
英字新聞を読むことで、語彙力、読解力、時事知識、さらには論理的思考力まで鍛えることができます。一歩ずつ、あなたの英語力をレベルアップさせていきましょう。
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