9.11後のアメリカの戦争― 対テロ戦争と終わらない戦争の時代

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2001年の同時多発テロは、アメリカだけでなく、世界の戦争のあり方そのものを大きく変えました。

これ以降、戦争の相手は特定の国家ではなく、「テロ」という曖昧で国境を持たない存在へと変わります。アメリカはこの事件を受けて「対テロ戦争」を宣言し、前例のない形で軍事行動を拡大していきました。

アフガニスタン、イラクをはじめとする一連の戦争は、従来の国家間戦争とは異なり、明確な終戦や勝利条件を持ちませんでした。政権を倒しても安定は訪れず、テロを抑え込むはずの介入が、かえって混乱や新たな過激派を生むという逆説的な状況が続いていきます。

本記事では、9.11後にアメリカが実際に行ってきた戦争や軍事行動を整理しながら、なぜ「対テロ戦争」が終わりの見えない戦争になったのかを考察します。

国家間戦争の時代が終わった後、世界はどのような不安定さを抱え込むことになったのか。その全体像を、現代史の流れの中でわかりやすく解説していきます。

目次

第1章 アフガニスタン戦争

― 対テロ戦争の出発点

9.11後のアメリカの戦争は、アフガニスタンから始まりました。この戦争は、単なる報復ではなく、「対テロ戦争」という新しい戦争概念を世界に示した最初の事例でした。

国家を相手にする従来型の戦争とは異なり、テロ組織とそれを庇護する体制を同時に排除するという、前例のない目標が掲げられます。

1.9.11と開戦の論理

2001年9月11日の同時多発テロの直後、アメリカ政府は事件を「戦争行為」と位置づけました。実行犯が国家ではなくテロ組織であったにもかかわらず、軍事力による対応が選ばれたのです。その理由は明確でした。

テロ組織はアフガニスタンに拠点を持ち、**タリバン**政権がそれを匿っていると判断されたからです。

こうしてアメリカは、テロ組織の排除と同時に、庇護する政権そのものを倒すという二重の目標を掲げて開戦に踏み切りました。

2.短期勝利と政権崩壊

2001年10月に始まった軍事作戦は、圧倒的な航空戦力と現地勢力の協力によって進められ、タリバン政権は短期間で崩壊します。軍事的に見れば、戦争は成功したかに見えました。

この段階でアメリカは、
・テロ組織の拠点は破壊された
・敵対政権は排除された
と考え、対テロ戦争のモデルケースを示したつもりでした。

しかし、この「早すぎる成功認識」が、後の長期化を招くことになります。

3.国家建設という新たな課題

政権崩壊後、アメリカと国際社会は、アフガニスタンを安定した国家として再建する必要に迫られました。ところが、ここから状況は一変します。

民族構成の複雑さ、地方軍閥の存在、長年の内戦による社会の疲弊などにより、中央政府の統治は思うように進みませんでした。さらに、敗走したタリバンは完全には消滅せず、地方や国境地帯で勢力を回復していきます。

ここで戦争の性格は、「テロ組織の排除」から「終わりのない治安維持戦」へと変質しました。

4.対テロ戦争の矛盾の露呈

アフガニスタン戦争は、対テロ戦争が抱える矛盾を早くも露わにします。

政権を倒しても、テロは消えない。

軍事力で制圧しても、社会は安定しない。

テロという非国家主体を相手にした戦争は、明確な勝利条件や終戦の形を描きにくく、戦争そのものが常態化していきました。この構造は、その後のイラク戦争や世界各地での対テロ作戦にも引き継がれていきます。

アフガニスタン戦争は、9.11への直接的な対応であると同時に、「終わらない戦争の時代」の始まりを象徴する出来事だったのです。

第2章 イラク戦争

― 対テロ戦争の拡大と最大の誤算

アフガニスタン戦争に続いて、アメリカは次の戦争へと踏み出します。それが、2003年に始まったイラク戦争です。

この戦争は、9.11後の対テロ戦争がなぜ、どのように拡大していったのかを理解するうえで、最も重要な事例と言えます。

1.なぜイラクだったのか

イラクは、9.11の実行犯を直接生んだ国ではありませんでした。それにもかかわらず、アメリカはイラクを次の標的とします。

理由として掲げられたのが、

・大量破壊兵器の保有疑惑
・テロ組織との関係
・独裁体制の危険性

でした。

これらは、対テロ戦争の論理を大きく拡張したものでした。テロを「起こした国」だけでなく、「起こす可能性がある国」も先制的に排除するという考え方が採用されたのです。

ここで戦争は、防衛から予防へと性格を変えていきました。

2.短期的勝利と政権崩壊

2003年、アメリカ軍はイラクに侵攻し、サダム・フセイン政権は短期間で崩壊します。軍事作戦そのものは、アフガニスタンと同様に圧倒的な力の差によって早期に決着しました。

この時点で、アメリカは、脅威となる体制を排除し、中東の安定に寄与したと考えていました。

しかし、この「政権崩壊=問題解決」という認識が、後に深刻な混乱を招きます。

3.国家崩壊と宗派対立の激化

イラク戦争の最大の誤算は、戦後統治の失敗でした。バアス党体制の解体と軍の解散によって、国家を支えていた仕組みが一気に失われ、治安は急速に悪化します。

その空白の中で、

・スンニ派とシーア派の対立
・武装勢力の乱立
・外国勢力の介入

が重なり、イラクは内戦状態に近づいていきました。

ここで重要なのは、テロを抑え込むための戦争が、かえって過激派が活動しやすい環境を生み出したという点です。

4.「テロとの戦い」がテロを生む逆説

イラク戦争後、イラクは国際ジハードの新たな拠点となっていきます。国家が崩壊し、暴力が日常化した社会では、過激な思想が浸透しやすくなりました。

この流れの先に登場したのが、後にISへとつながる過激派勢力です。彼らは、イラク戦争という混乱を土壌として成長しました。

つまりイラク戦争は、テロを防ぐための戦争でありながら、次のテロを準備する戦争にもなってしまったのです。

5.対テロ戦争の性格を決定づけた戦争

イラク戦争は、9.11後のアメリカの戦争が抱える問題点を最も鮮明に示しました。

・敵が曖昧
・勝利条件が不明確
・戦後の安定像が描けない

これらの問題は、その後の対テロ作戦全体に引き継がれていきます。

アフガニスタン戦争が「出発点」だったとすれば、イラク戦争は対テロ戦争が迷走し始めた転換点でした。

次章では、こうした戦争が中東に限定されず、世界各地へと広がっていく過程――すなわち、対テロ戦争のグローバル化について見ていきます。

第3章 対テロ戦争のグローバル化

― 戦場なき戦争の広がり

イラク戦争後、アメリカの対テロ戦争は特定の国や戦場に限定されない形へと移行していきました。

もはや「宣戦布告→戦場→終戦」という従来の枠組みは成り立たず、世界各地で断続的に続く軍事行動が常態化します。この変化こそが、9.11後の戦争を「終わらない戦争」にした最大の要因でした。

1.戦争の相手は「国家」ではなくなる

アフガニスタンやイラクでは、少なくとも形式上の敵国が存在していました。しかし対テロ戦争が進むにつれ、敵は国家ではなく、組織・ネットワーク・個人へと変わっていきます。

テロ組織は国境を越えて活動し、特定の領土に縛られません。そのため、戦争もまた、国境を越えて行われるようになります。ここで戦争は、地理的な「戦場」を失い、世界全体が潜在的な作戦空間となりました。

2.空爆・ドローン・特殊作戦という新しい戦争形態

対テロ戦争の中心となったのは、大規模な地上侵攻ではなく、

・空爆
・ドローンによる標的攻撃
・特殊部隊による秘密作戦

でした。

これらは、アフリカ、中東、南アジアなどで実施され、正式な戦争と宣言されないまま行われることも少なくありませんでした。こうした作戦は、テロ組織の指導者を排除する点では一定の成果を上げた一方で、戦争と治安維持の境界を曖昧にする結果をもたらします。

3.同盟国を巻き込む「連鎖的戦争」

対テロ戦争は、アメリカ単独の戦争ではありませんでした。NATO諸国や中東・アジアの同盟国も、軍事協力や基地提供を通じて関与していきます。

その結果、テロはアメリカだけでなく、同盟国に対する報復の対象ともなり、戦争の影響は世界規模で拡散しました。

対テロ戦争は、安全を確保するための行動であると同時に、新たな脅威を生み出す連鎖でもあったのです。

4.テロとの戦いが「常態」になるという問題

この段階で、対テロ戦争は明確な終結点を失います。

テロは完全に根絶できない。
新しい組織や個人が次々と現れる。

その結果、戦争は一時的な非常事態ではなく、平時に組み込まれた恒常的政策となっていきました。これは、国際社会にとっても、民主主義国家にとっても、大きな転換でした。

対テロ戦争のグローバル化は、9.11への対応をはるかに超え、世界の安全保障のあり方そのものを変えてしまったのです。

次章では、この流れの中で登場したISと、その出現がなぜ「対テロ戦争の失敗」を象徴する出来事とされたのかを詳しく見ていきます。

第4章 ISの台頭と対テロ戦争の限界

― 「戦争の成果」が生んだ新たな脅威

対テロ戦争が世界規模で展開される中、2010年代に入って登場したのが、ISでした。ISの出現は、9.11後のアメリカの戦争が抱えてきた矛盾と限界を、最も分かりやすい形で示す出来事だったと言えます。

1.イラク戦争後の混乱が生んだ土壌

ISは、まったくのゼロから生まれた組織ではありません。その起源は、イラク戦争後の混乱の中で活動していた過激派勢力にあります。国家の統治機構が崩壊し、治安が悪化した社会では、武装勢力が根を張りやすくなります。

特に重要なのは、

・旧体制の解体による権力の空白
・宗派対立の激化
・長期的な占領への反発

が重なった点です。

これらは、対テロ戦争が「安全」をもたらすどころか、過激化を促進する環境を生み出してしまったことを示しています。

2.「国家」を名乗る過激派

ISが従来のテロ組織と異なっていたのは、自らを「国家」と称し、領土支配を前面に打ち出した点でした。都市や油田を掌握し、行政や徴税まで行う姿は、国際社会に強い衝撃を与えます。

しかしこの現象は、逆説的でもありました。国家を破壊する戦争の結果、国家の空白を過激派が埋めるという構図が、ここで露わになったのです。

3.対IS戦争という新たな介入

ISの拡大を受けて、アメリカは再び中東への軍事介入を強めます。ただし今回は、大規模な地上侵攻ではなく、空爆と現地勢力支援を中心とする限定的な介入でした。

これは、過去の失敗を踏まえた選択である一方、問題の根本解決を先送りする形でもありました。ISは領土を失いましたが、思想やネットワークは完全には消えていません。

4.「テロとの戦争」は成功だったのか

ISの台頭とその後の対IS戦争は、対テロ戦争の評価を一層難しくしました。

テロ組織は壊滅しても、別の形で再生する。国家を倒しても、安定は保証されない。

この現実は、9.11後のアメリカの戦争が、軍事力だけでは解決できない問題に直面していることを明確に示しています。

ISの登場は、「テロとの戦い」が終盤に差しかかっている証拠ではなく、むしろ終わりが見えない構造に組み込まれていることを象徴する出来事でした。

次章では、これまでの戦争を総括し、9.11後のアメリカの戦争が国際秩序と中東に何を残したのかを整理します。

まとめ章 9.11後のアメリカの戦争とは何だったのか

― 「終わらない戦争の時代」の本質

本記事では、9.11以降にアメリカが行ってきた戦争と軍事行動を振り返りながら、対テロ戦争がどのように始まり、なぜ終わりの見えない戦争へと変質していったのかを見てきました。最後に、その全体像を整理します。

1.9.11は「戦争の定義」を変えた

2001年の同時多発テロを受けて、アメリカはテロを犯罪ではなく「戦争行為」と捉え、軍事力による対応を選択しました。ここで戦争の相手は、国家ではなく、国境を持たない組織や思想へと変わります。

この時点で、戦争は

・明確な敵国
・はっきりした戦場
・終戦の形

を失いました。

9.11は、戦争そのものの性格を変えてしまった出来事だったのです。

2.アフガニスタンとイラクが示した限界

アフガニスタン戦争では、テロ組織を匿う政権を短期間で崩壊させることに成功しました。しかし、その後の国家再建は困難を極め、戦争は長期化します。

イラク戦争では、対テロ戦争の論理が拡張され、「潜在的脅威」を理由とした先制攻撃が行われました。その結果、国家の崩壊と宗派対立が進み、過激派の温床が生まれました。

この二つの戦争は、「政権を倒せば安定する」という発想の限界をはっきりと示しました。

3.戦場なき戦争と常態化する介入

その後の対テロ戦争は、特定の国に限定されず、空爆やドローン、特殊作戦という形で世界各地に広がっていきます。戦争と平時の境界は曖昧になり、軍事行動は恒常的な政策として組み込まれていきました。

これは、安全保障の名の下に「例外」が常態化する時代の到来を意味します。対テロ戦争は、もはや一時的な非常措置ではなく、国際秩序の前提条件となっていきました。

4.ISの登場が示した逆説

イラク戦争後の混乱から台頭したISは、対テロ戦争の最大の逆説を象徴しています。テロを抑えるための戦争が、かえってより過激で組織的な脅威を生み出してしまったという現実です。

国家を壊せば、秩序は自然に生まれるわけではありません。むしろ、国家の空白を暴力が埋めることすらあるのです。

5.「終わらない戦争の時代」と私たち

9.11後のアメリカの戦争は、単にアメリカの外交・軍事政策の問題ではありません。

それは、国家間戦争が主役だった20世紀の秩序が崩れた後、世界がどのような不安定さを抱え込むことになったのかを示す、現代史の重要なテーマです。

対テロ戦争は、明確な勝利も終戦も持たないまま続いてきました。

その背景には、

・非国家主体の台頭
・外部介入と内部不安定の連鎖
・宗教・政治・暴力の複雑な結びつき

があります。

9.11後のアメリカの戦争を理解することは、現在の中東情勢や国際政治を読み解くための前提条件でもあります。

「終わらない戦争の時代」とは何なのか――その問いは、今なお私たちに突きつけられているのです。

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