ヨーロッパ封建制の発展をどう書く?出題パターンと典型解答【論述問題対策】

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封建制度は「中世の社会構造の中心的な枠組み」として、大学入試の論述問題で最頻出のテーマです。

しかしその本質は、単なる「主従関係」や「土地制度」ではなく、時代の変化に合わせて政治・経済・宗教の三要素が再構成された“秩序の進化”にあります。

つまり、「防衛の共同体」から始まり、「契約の社会」へ、そして「神の秩序」「貨幣の秩序」「王の秩序」へと変化したその流れこそが問われます。

以下の5段階の整理を通じて、封建制の全体像を明確にし、その後に実際の出題パターンと典型解答を確認していきましょう。

目次

第1章:封建制の発展5段階 ― 防衛から秩序、そして崩壊へ

封建制度とは、土地を媒介とした主君と臣下の双務的契約(忠誠と保護)によって成立する分権的な政治秩序です。

その変遷は単線的ではなく、政治・社会・宗教・経済の相互作用によって段階的に変化しました。

以下の5段階は、そのダイナミックな発展過程を体系的に示したものです。

特に論述問題では、この時代区分を意識して「どの段階の変化を問う問題か」を見抜くことが重要です。

封建制の発展5段階 ― 防衛から秩序、そして崩壊へ

封建制度とは?
 土地を媒介とした主君と臣下の双務的契約(忠誠と保護)によって成立する、分権的な政治秩序である。


第①段階:フランク王国期(8〜9世紀)― 封建制度の萌芽期

性格:政治的・軍事的な “官僚的主従関係”

背景
カロリング朝の成立とともに王権が強く、王や宮宰が直接家臣を統率していた。
外敵の侵入(イスラーム軍など)に備え、中央集権的な防衛体制が構築された。

根拠
「恩貸地制度(beneficium)」によって、王が家臣に土地を貸与し、軍役と行政奉仕を課した。

目的
王国防衛と地方統治の補助。忠誠と軍役を基盤にした公的秩序の維持。

関係の性質
主から臣への一方向的な「恩恵」に基づく支配。
契約よりも、王の威光と恩寵によって忠誠が成立した。

社会的基盤
国家的秩序(公的主従体制)。
荘園制の原型がこの時期に芽生え、農業生産の中心となる。

要するに
王権中心の軍事的・官僚的な封建制の原型が形成された。
忠誠の対象は「王」=「国家」であり、まだ私的な契約社会ではなかった。

関連記事:
カール大帝の内政 ― 帝国統治の構想とその限界
カール=マルテルの軍制改革


第②段階:外敵侵入後〜封建制成立期(10〜11世紀)

性格:私的で相互契約的な “封建的主従関係”

背景
ヴァイキング・マジャール・サラセンなどの侵入で中央権力が崩壊。
各地の豪族が自衛を強め、地域ごとの防衛共同体が形成された。

根拠
「封土(fief)」を媒介とした主従関係。
主君が封土を与え、臣下(ヴァッサル)が忠誠と軍役を誓う仕組みが一般化した。

目的
地方防衛と秩序維持。外敵に備えた恒常的な軍事体制を確立すること。

関係の性質
主と臣が契約的・双務的に結ばれる「相互扶助関係」。
忠誠は誓約(homagium)に基づく人格的信頼に変化。

社会的基盤
荘園制が経済の核となり、領主の支配と農民の従属が固定化。
農業技術(重量有輪犂・三圃制など)の進歩が生産性を高め、封建社会を支えた。

要するに
国家的秩序に代わって、地方領主の主従契約の網が社会を支えた。
封建制と荘園制が結びつき、政治・軍事・経済が一体化した社会が成立した。

関連記事:
西ヨーロッパ 防衛から秩序へⅠ:外敵侵入と防衛の共同体(8〜10世紀)
カロリング帝国の分裂と封建制の成立 ― 王権から領主権への転換


第③段階:教会の時代(11〜12世紀)― 封建制の確立期

性格:宗教的・道徳的な “神の秩序としての主従関係”

背景
外敵が去り、社会が安定。教会権が拡大し、信仰による秩序再建が進む。

根拠
「神の平和(Pax Dei)」「神の休戦(Treuga Dei)」などの宗教的誓約によって、
暴力と戦争を抑制し、社会の倫理的統一を目指した。

目的
信仰と倫理を通じて社会を統合し、暴力を制限する。

関係の性質
忠誠は契約義務ではなく、“神の前での誓い”へと昇華。
主従関係が宗教的・道徳的正当性によって支えられた。

社会的基盤
教会・修道院が荘園を経営し、精神的・経済的両面から社会を支配。
信仰と労働の理念(「祈る者」「戦う者」「働く者」)が社会を安定化させた。

要するに
「王への忠誠」から「主君との契約」、そして「神への誓約」へ。
封建制は信仰と倫理によって完成し、“神の秩序”として定着した。

関連記事:
西ヨーロッパ 防衛から秩序へⅡ:教会が築いた中世の平和(955〜11世紀)


第④段階:十字軍期(12〜13世紀)― 封建制の変質

性格:宗教的忠誠から経済的契約への転換 ― “信仰の秩序”の亀裂

背景
十字軍遠征によって多くの封建領主や騎士が土地を失い、
資金調達のために封土を売却・抵当に入れるようになった。

根拠
軍役の代替として「貨幣納(スカト税)」が導入され、
封建的な義務が貨幣で処理されるようになった。

目的
遠征資金の調達と戦費の確保。経済的な取引が忠誠関係に介入する。

関係の性質
契約関係が貨幣化し、忠誠の基盤が土地から金銭へと移行。
忠誠は信仰ではなく「経済的信用」に基づくものとなった。

社会的基盤
商業と貨幣経済が急速に発展し、都市と市民層が台頭。
荘園制は自給自足的性格を失い、次第に市場経済へ組み込まれていく。

要するに
封建制は宗教的理念を保ちながらも、内部から経済化・貨幣化が進行。
「土地と忠誠」の秩序は、「貨幣と契約」の秩序へ変化した。


第⑤段階:封建制の崩壊と終焉(14〜18世紀)

性格:分権的秩序の崩壊と中央集権の確立 ― “王の秩序”への転換

背景
百年戦争・黒死病・農民一揆の頻発により、封建社会が動揺。
黒死病による人口激減が労働力不足を招き、荘園経営が崩壊。

根拠
常備軍・官僚制・租税制度の整備により、国王が直接統治を実現。
封建的軍役や地代よりも、貨幣経済と中央財政が主導権を握る。

目的
封建的分権を打破し、王権のもとで秩序を再建(絶対王政)。

関係の性質
主従関係は形骸化し、貴族は宮廷貴族化。
忠誠は土地や信仰ではなく「官職・恩典・報酬」へと変質。

社会的基盤
商業革命・貨幣経済の拡大・市民階層の台頭。
農業技術の革新が進む一方、荘園制は最終的に崩壊し、近代的賃金労働へ移行。

要するに
「神の秩序」は「王の秩序」へ、そして「国民と法の秩序」へ。
封建制はその崩壊を通じて、近代国家誕生の基盤を築いた。

🧭 時代の流れで見る封建制の発展(長期スパン)

時期段階特色社会的変化
9〜10世紀成立期(外敵・分権)封建制の起源と防衛社会の形成王権衰退・領主台頭・荘園制発展
11〜12世紀確立期(教会・安定)神の秩序社会の完成騎士道・十字軍・商業復興
13〜14世紀成熟期封建的均衡と理性の調和大学・スコラ哲学・王権再興
14〜15世紀衰退期封建秩序の崩壊百年戦争・黒死病・農民反乱
16〜18世紀終焉期絶対王政から近代国家へ市民社会・啓蒙思想・フランス革命

この第1章をもとに、次章では、「どの段階の変化を問う論述が多いのか」「典型問題と解答例」を段階ごとに解説していきます。

第2章:封建制の成立と確立 ― 防衛社会から“神の秩序”へ(①→②→③)

フランク王国期の「防衛のための主従関係」は、外敵の脅威を契機に地方へ分散し、やがて教会の指導によって「信仰に基づく秩序」へと再構築されました。

この過程(①→②→③)は、大学入試で最も狙われる典型テーマです。

特に問われやすいのは次の3点です。

  • 「恩貸地制度」から「封土制」への転換
  • 「王の命令」から「契約と誓約」による秩序形成
  • 「暴力の抑制」と「神の平和運動」による社会の安定化

この3つを押さえることで、封建制が制度から精神へと進化した流れを論理的に説明できます。

封建制度の発展段階(①→②)

問題1
カロリング朝の分裂が封建社会の成立にどのような影響を与えたか。

解答例
カロリング朝の分裂により王権が弱体化すると、統一的な防衛体制は崩壊した。その結果、各地の貴族は自領の防衛を担うようになり、王に代わって地域社会の秩序維持を行った。このとき、主君が封土を与え、臣下が忠誠と軍役を誓う封建的主従関係が広がった。王の命令ではなく、土地と契約を媒介とした私的な主従関係が社会の基本単位となり、政治の重心は中央から地方へ移行した。これが封建社会成立の直接的契機である。

🟦【解説】

  • 「恩貸地制度」→「封土制」の転換を明示すること。
  • 「中央の崩壊」+「地方防衛」+「主従関係の定着」という三段論法が鉄則。
  • ヴェルダン条約・メルセン条約を背景として挙げると得点が安定します。

封建制度の発展段階(②→③)

問題2
“神の平和”運動が封建社会の秩序形成に果たした役割を説明せよ。

解答例
10〜11世紀のヨーロッパでは、領主や騎士同士の争いが絶えず、民衆は戦乱に苦しんでいた。この混乱の中で教会は、暴力を制限し平和を回復するため、神の平和運動を推進した。この運動は聖職者・巡礼者・農民への暴力を禁じ、一定の期間や祭日には戦いを停止させる“神の休戦へ発展した。こうして教会は、信仰と倫理を通じて社会を統合し、封建社会を“神の秩序”として正当化した。

🟦【解説】

  • 「神の平和」「神の休戦」という語を明記することが得点の決め手。
  • 単なる宗教運動ではなく、“暴力の制度化と抑制”という社会的意味を示すと上位答案。
  • 「防衛の秩序」→「信仰の秩序」への転換を一文でまとめるのが理想。

封建制度の発展段階(①→③)

問題2
フランク王国期から教会中心の中世秩序に至る主従関係の変化を説明せよ。

解答例
フランク王国期には、王が家臣に土地を与えて軍役を課す恩貸地制度が主であり、忠誠は王に対する一方向的な奉仕であった。しかし外敵の侵入により王権が衰退すると、地方領主間の相互契約的主従関係が生まれた。その後、教会が社会秩序の再建を担い、“神の平和”運動によって暴力を抑制し、忠誠を神への誓約として道徳的に再定義した。こうして、王のための忠誠は、主君との契約を経て、“神の前での誓い”という倫理的義務へと変化した。

🟦【解説】

  • “忠誠の対象の変化”を一貫して書くのがコツ(王 → 主君 → 神)。
  • 教会が「秩序の仲裁者」として登場する点を明記。
  • この問いは早慶・MARCHで頻出(特に早大教育・立教文など)。

書き方のポイント(①→②→③の流れ)

書くべき要素具体的キーワード採点で評価される点
中央の崩壊カロリング朝分裂/ヴェルダン条約政治構造の転換を説明できるか
地方防衛封土・主従関係/誓約防衛の共同体を社会構造化できるか
教会の秩序神の平和/神の休戦/祈りの共同体信仰と倫理の統合を論理的に書けるか

まとめ:成立から確立への流れ(①→②→③)

観点フランク王国期(①)外敵侵入後(②)教会の時代(③)
秩序の担い手王(中央集権)領主(地方分権)教会(信仰の秩序)
結合の原理恩貸地・軍役封土・契約信仰・倫理
忠誠の対象主君
経済基盤荘園制の萌芽荘園制の定着教会荘園・修道院領
社会的性格防衛国家私的契約社会神の秩序社会

第3章:封建制の変質と崩壊 ― 信仰から貨幣、そして国家へ(③→④→⑤)


11〜14世紀にかけて、封建社会は「神の秩序」という安定を得たかに見えました。

しかし、十字軍の遠征・貨幣経済の浸透・黒死病の流行・百年戦争の長期化といった出来事が、その秩序の根幹を少しずつ崩していきます。

この章では、信仰による秩序が経済的・政治的な再編へと変わる過程(③→④→⑤)を、入試で頻出のテーマを通して整理していきます。

封建制度の発展段階(③→④)

問題4
十字軍が封建制度に与えた影響を説明せよ。

解答例
十字軍遠征によって、多くの封建領主や騎士は遠征資金を調達するため、封土を売却・担保化し、封建的土地関係は動揺した。また、遠征を通じて東方との交易が拡大し、貨幣経済がヨーロッパに浸透した。その結果、軍役の代替として貨幣納(スカト税)が導入され、忠誠と軍事奉仕の関係は土地から金銭へと移行した。封建制は信仰を背景に維持されつつも、内部から経済化が進行し、「土地と忠誠」の秩序は「貨幣と契約」の秩序へと変化した。

🟦【解説】

  • 「封建制の経済化」と「信仰秩序の動揺」を両立して書くのがコツ。
  • 「貨幣納(スカト税)」という具体語が入ると加点されやすい。
  • 「土地 → 貨幣」「忠誠 → 契約」の構造転換を明確に書く。

封建制度の発展段階(④→⑤)

問題5
百年戦争が封建制の崩壊と王権の強化にどのような影響を与えたか。

解答例
百年戦争の長期化により、封建的軍役では戦争を維持できなくなった。そのため、国王は徴税によって資金を集め、常備軍と官僚制を整備した。これにより、領主に依存しない中央集権的な国家運営が進み、封建的主従関係は形骸化した。さらに黒死病による人口減少で荘園経営が崩壊し、農民は地代や賃金労働で生活するようになった。こうして、封建的分権体制は終焉し、王権を中心とする近代国家の基盤が確立した。

🟦【解説】

  • 「百年戦争」「常備軍」「官僚制」「黒死病」の4要素を含めると完璧。
  • 「封建的軍役 → 租税と常備軍」への移行を軸にする。
  • 「荘園制の崩壊」と「貨幣経済の台頭」をセットで説明。

封建制度の発展段階(③→⑤)

問題6
信仰の秩序から貨幣と法の秩序へ――封建社会の変化を説明せよ。

解答例
11世紀のヨーロッパでは、教会が“神の平和”を唱え、社会を信仰で統合していた。しかし十字軍遠征によって封建領主の土地支配が崩れ、東方貿易の発展とともに貨幣経済が広がった。さらに黒死病による人口減少で荘園制が崩壊し、
封建的義務に代わって金銭的契約が社会を動かすようになった。百年戦争を経て国王が常備軍と官僚を整備し、
分権的な主従関係に代わる中央集権的秩序が誕生した。この過程で、ヨーロッパは“神の秩序”から“貨幣と法の秩序”へと転換し、封建制は近代国家形成の土台として終焉を迎えた。

🟦【解説】

  • 「信仰→経済→国家」の三段変化を一文ごとに区切ると論理が明快。
  • 「荘園制の崩壊」と「貨幣経済の進展」を因果でつなぐ。
  • 結論文は「封建制は終わったが、その構造は近代に引き継がれた」と締めるのが高得点の定型。

書き方のポイント(③→④→⑤の流れ)

観点封建制の確立期(③)十字軍期(④)封建制の崩壊(⑤)
秩序の中心教会(信仰)領主と都市(経済)国王(国家)
忠誠の性質神への誓約貨幣的契約官僚的服従
経済基盤教会荘園商業・貨幣経済市民経済・租税制
社会構造三身分社会市民層の台頭市民社会・国民国家
歴史的転換神の秩序信仰と経済の融合信仰から国家への転換

🟧 まとめ:封建制崩壊の歴史的意義

  • 封建制の崩壊は「衰退」ではなく、「転換」である。
  • 経済の発展と中央集権化によって、封建制の原理(契約・忠誠・秩序)は近代国家の基礎へと組み込まれた。
  • “神の秩序”が“王の秩序”に変わる過程で、「主従関係」は「臣民と国家の関係」へと再定義された。

🟦【入試頻出テーマまとめ】

出題大学主題対応段階
慶應法十字軍と封建制の動揺③→④
早稲田政経黒死病と農民反乱④→⑤
上智文貨幣経済と荘園崩壊④→⑤
明治政経百年戦争と王権強化④→⑤
立教文封建制と絶対王政の関係
中央法教会秩序から国家秩序へ③→⑤

第4章:入試で狙われる封建制の論述テーマ10選 + 書き方の鉄則

封建制度の論述問題は、単なる制度説明ではなく、「変化の方向性」や「社会構造の意味」を問う出題が中心です。

つまり、「どのように変化したか」「なぜそのように変化したか」「その結果どんな秩序が生まれたか」を一貫して説明できるかがカギです。

ここでは、出題頻度が高い10テーマを抽出しました。

それぞれ、狙われる観点・出題意図・対策ポイントを明確に整理しています。

封建制の論述テーマ10選

No.テーマ出題意図・狙われる観点対応段階
1カロリング朝の分裂と封建制成立中央集権崩壊から地方分権への流れを説明できるか①→②
2封土と主従関係の形成「土地」と「忠誠」の関係性を構造的に書けるか
3“神の平和”運動と中世秩序の再建教会が秩序を再構築した意義を説明できるか②→③
4教会の経済的基盤と荘園制精神的支配と経済的支配の二重構造を描けるか
5十字軍と封建制の変質信仰の秩序が経済化する過程を論理的に示せるか③→④
6黒死病と荘園制の崩壊人口減少が社会構造をどう変えたかを因果で説明できるか④→⑤
7百年戦争と王権の強化常備軍・租税制度の意義を中心に国家形成を説明できるか④→⑤
8封建制と絶対王政の関係封建制の「崩壊」ではなく「継承」として書けるか
9忠誠の変化と社会秩序の再構成王→主→神→貨幣→国家という連続性を描けるか全段階横断
10封建制の歴史的意義中世から近代への“秩序の継承”としてまとめられるか総合問題

書き方の鉄則 ― 合格答案の3ステップ構成

大学入試の封建制論述では、「原因 → 展開 → 結果」の三段構成を守ることで論理性が明確になります。

✅ ステップ①:原因(何が変化を引き起こしたか)

  • 例:「カロリング朝の分裂によって中央の権力が弱体化し…」
  • 外敵侵入・経済発展・宗教的運動など、変化の起点を一文で明示。

✅ ステップ②:展開(どのように変化したか)

  • 例:「各地の領主は自衛のために主従契約を結び、封土を介して…」
  • 制度・契約・信仰・経済など“メカニズム”を具体的に描写。

✅ ステップ③:結果(どのような秩序が生まれたか)

  • 例:「こうして“神の秩序”としての封建社会が成立した。」
  • 結論で「秩序の性質」を明示し、全体をまとめる。

🟦 よくある失点パターン

❌ パターン1:単なる制度列挙

「封建制は土地と主従関係によって成立し…」
→ ×「どう変化したか」が抜けており、因果がない。

❌ パターン2:信仰と経済を切り離して説明

「神の秩序が広がった」だけでは不十分。
→ 「なぜ教会が秩序を担ったのか」「経済や戦争とどう関わったか」を書く。

❌ パターン3:時代混同

カロリング朝と十字軍期を同列に扱うミス。
→ 年代・段階(①〜⑤)を意識して因果の流れを整理。

封建制の「終わり」ではなく「継承」を書け

封建制は、14〜18世紀に形式的には崩壊しました。

しかし、その根幹にあった「契約」「忠誠」「秩序」という理念は、絶対王政・市民社会・近代国家へと形を変えて生き続けました。

つまり、封建制の論述では「消滅」よりも「継承」を描くことが本質です。

防衛の共同体 → 信仰の秩序 → 経済と国家の秩序

この連続性を説明できれば、どの大学の論述問題にも対応できます。

封建制論述 ― 「構造と理念」を問う重要5題【解答例つき】

問題1
封建制と荘園制の関係を説明せよ。

解答例
封建制と荘園制は、政治と経済の両面から中世社会を支えた制度である。封建制は主君と家臣の双務的契約による政治的秩序であり、荘園制は領主と農民の従属関係による経済的基盤であった。荘園での生産物が家臣の軍役維持を支え、
主従関係の存続を可能にした。つまり、封建制が「土地と忠誠の秩序」であるなら、荘園制はその「経済的支柱」であった。両者の結合によって、王権が弱体化しても社会秩序が維持された。

🟦【ポイント】

  • 「政治的秩序 × 経済的基盤」として対比で書く。
  • 「どちらが支えるか」を明確に。
  • 「王権が弱くても秩序が続く理由」として締めると高評価。

問題2
教会が封建社会において果たした役割を述べよ。

解答例
教会は、封建社会の精神的支柱であり、同時に経済的支配者でもあった。“神の平和”運動によって暴力の抑制を図り、
信仰を通じて主従関係に倫理的正当性を与えた。また、修道院や司教領は広大な荘園を経営し、封建経済の中核として機能した。教会は「祈る者」として社会的秩序を神意のもとに統合し、“信仰による秩序”を形成した。その支配は精神・経済の両面に及び、封建制を単なる契約社会から宗教的共同体へと昇華させた。

🟦【ポイント】

  • 「精神的支配+経済的支配」の二本立てで。
  • “神の秩序”や“信仰による統合”というキーワードを入れる。
  • 形式的に「倫理的正当性を与えた」と書けると上位答案。

問題3
封建制がヨーロッパ社会の安定に寄与した理由を説明せよ。

解答例
封建制は、分権的でありながら秩序を維持できる社会構造であった。王権が衰えた後も、主君と家臣の契約関係によって地域ごとに防衛と統治が行われた。忠誠と保護の双務関係は、外敵の脅威に対する“防衛共同体”として機能し、荘園制による経済的自立がその基盤となった。また、教会の権威が道徳的統一をもたらし、暴力社会を倫理的秩序に転換した。こうして封建制は、中央権力が不在でも社会の安定を保つことができた。

🟦【ポイント】

  • “分権的なのに安定した理由”=試験で最重要。
  • 「契約・防衛・自給自足・教会の倫理統一」を4点書ければ完璧。

問題4
封建制がヨーロッパの“国家形成”に与えた影響を述べよ。

解答例(約250字)
封建制は分権的体制であったが、その内部に「契約」「義務」「忠誠」といった政治的理念を育てた点で、国家形成に重要な役割を果たした。主従関係の体系が、後の「臣民と国家の関係」へと継承され、王権強化期には忠誠の対象が個人(主君)から国王・国家へと転換した。また、封建制が培った地方行政・軍事の慣行は、常備軍・官僚制に再編され、
絶対王政の制度的基盤となった。したがって封建制は、崩壊したのではなく、近代国家の骨格に吸収された制度であった。

🟦【ポイント】

  • 「崩壊」ではなく「継承」を強調。
  • 「忠誠→法・契約」「封土→官職」「軍役→常備軍」などの転換を書けると差がつく。

問題5
封建制の理念的側面と現実的側面の乖離を説明せよ。

解答例
封建制は本来、主君と家臣の間の忠誠と保護に基づく契約的秩序であった。理念的には、相互扶助による“正義の秩序”を目指したが、現実には領主間の私闘や農民への過酷な支配が頻発した。“神の平和”や“神の休戦”といった宗教的誓約がこの矛盾を抑えるために生まれたが、経済格差の拡大と貨幣経済の進展により、忠誠は次第に形式化した。すなわち、理念は秩序を説いたが、現実は権力の分裂を生んだ。この乖離こそが、封建制崩壊への伏線となった。

🟦【ポイント】

  • 「理念=忠誠・正義・秩序」/「現実=格差・暴力・形式化」と対比。
  • “神の平和”を「矛盾を調停する装置」として使うと得点が伸びる。

封建制の流れをつかむ!理解で解く正誤問題20【解説つき】

封建制は「土地と忠誠の関係」として覚えるだけでは不十分です。

入試では、時代によって変化する主従関係・秩序原理・経済基盤の流れを理解しているかが問われます。

ここでは、暗記ではなく「流れをたどって解く」ことを目的に、フランク王国から封建制の終焉までをカバーする20問を用意しました。

解き進めるうちに、制度の意味が“立体的”に見えてくるはずです。

【第①段階:フランク王国期 ― 官僚的主従関係】

問1
カロリング朝の王は、家臣に土地を私有地として与え、自由に相続させた。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
土地はあくまで「恩貸地」として貸与されたもので、王が与える権限を持っていた。
家臣は軍役・行政奉仕で応える義務があり、私有ではなく公的性格が強い。

問2
恩貸地制度は、土地を媒介として王が家臣を統制する制度であり、封建制の原型といえる。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
この制度がのちの封土制の基礎となる。
王を頂点とした中央集権的構造の中に「主従関係」の種が生まれた。

問3
フランク王国の主従関係は、相互契約に基づく私的な関係として成立していた。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
この段階では一方向的な忠誠関係
契約的要素が生まれるのは、外敵侵入後の分権化以降。

問4
伯制度や巡察使制度は、王権の地方支配を強化するための官僚的仕組みである。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
フランク期では「国王が地方を統治する」体制。
封建的分権化とは対照的な“中央的秩序”の表れ。

問5
カール大帝は、主従関係を宗教的な誓約として制度化した。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
宗教的誓約化はまだ行われていない。
それは後の「神の平和」運動によって教会が導入する。

【第②段階:外敵侵入後 ― 封建制の成立】

問6
外敵の侵入(ヴァイキング・マジャール人など)は、地方領主が自衛的に軍事力を組織する契機となった。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
外敵の脅威が、地方分権と封建制の定着を促した。
“防衛の共同体”→封建社会という流れを押さえる。

問7
封建制では、主君が封土を与え、臣下は忠誠と軍役で応じる双務的関係が基本となった。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
これがfief(封土)とhomagium(誓約)による典型的主従関係。
恩貸地制度の“公的忠誠”が“私的契約”へと変わった。

問8
封建制の成立期には、荘園制が衰退し、都市経済が支配的になった。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
逆である。荘園制が発展し、自給自足経済が社会の基盤となった。
都市経済はもっと後、十字軍以降。

問9
この時期の農業技術(有輪犂・三圃制など)は、生産力を高め、封建社会を安定させた。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
技術革新による生産性の向上が、荘園制の持続を支えた。
「封建制の安定=農業生産の安定」と覚える。

問10
封建制成立期には、主従関係が階層的に連鎖する「主従のピラミッド」が完成した。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
この段階ではまだ水平的な契約関係
王―諸侯―騎士の厳密な階層化は11〜12世紀以降に整う。

【第③段階:教会の時代 ― “神の秩序”としての封建制】

問11
“神の平和”運動は、農民や教会への暴力を抑制する目的で始まった。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
暴力の多い時代に、教会が社会安定の主導権を握る。
“祈る者・戦う者・働く者”という三身分秩序が形成。

問12
“神の休戦”は、戦争そのものを禁じる運動であった。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
完全禁止ではなく特定の時期・日を休戦日とした制度
社会秩序の「時間的管理」による平和の実現。

問13
この時期の修道院(ベネディクト会・シトー派)は、労働と信仰を結びつけ、社会的秩序を支えた。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
修道院は「働く者」の模範として荘園を管理し、経済・倫理の両面で秩序を強化。

問14
封建社会の安定期において、忠誠はもはや契約ではなく、“神の前での誓い”とみなされた。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
主従関係は宗教的・道徳的義務へと昇華。
「忠誠=信仰的徳目」となる。

問15
教会は経済的に荘園制から切り離され、信仰のみを支えた。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
司教領・修道院領などを通じて、経済的支配者でもあった
精神と経済の両面で封建制を支える。

【第④段階:十字軍期 ― 封建制の変質】

問16
十字軍は宗教的理想のもとに行われ、封建制度の安定を高めた。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
遠征により封建領主が没落し、封建秩序はむしろ動揺
貨幣経済化の契機となった。

問17
十字軍期には軍役の代わりに貨幣納(スカト税)が導入され、忠誠関係が経済化した。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
“封建義務の貨幣化”が進む。
これは封建制の実質的解体の始まり。

問18
都市の発展と商業の拡大は、封建社会に新しい社会階層を生んだ。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
**市民階層(ブルジョワジー)**の台頭。
封建制の外に経済的自由を求める人々が現れる。

【第⑤段階:封建制の崩壊と近代国家の形成】

問19
黒死病による人口減少は、農民の地位を低下させ、荘園制を安定させた。
解答:✕ 誤り
🟦【解説】
逆である。労働力不足により農民の地位は上昇し、賃金労働化・封建制崩壊が進んだ。

問20
百年戦争後、常備軍と官僚制の整備によって、国王が中央集権的統治を確立した。
解答:〇 正しい
🟦【解説】
これが封建制から絶対王政への転換点
忠誠の対象が「主」ではなく「国家」へと変化した。

総括:流れで理解すれば、正誤問題は怖くない

封建制を「暗記事項」ではなく「変化の物語」として理解すれば、どんな正誤問題にも因果で対応できます。

恩貸地制度 → 封土制 → 神の秩序 → 貨幣経済 → 絶対王政

この一本の線が頭にあれば、「どの時期のどんな秩序を問われても」瞬時に判断できるようになります。

結論

封建制の発展は、ヨーロッパ史における「秩序の探求」の記録です。

その変化を、制度・信仰・経済・国家の4つの軸から説明できれば、どの時代の論述問題にも応用が可能です。

封建制は崩壊しても、“秩序を求める精神”は生き続けた。

それを読み解くことこそ、世界史論述の醍醐味です。


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