【世界史】商業ルネサンスを徹底解説|中世ヨーロッパ経済の変革と近代資本主義への道

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「商業ルネサンス」とは、中世ヨーロッパにおいて農業生産力の向上を背景に、都市の復活、定期市の発展、遠隔地交易の拡大が進み、さらに金融・信用制度の革新が加わった時代を指します。

封建社会の中で制約を受けていた商業活動が、13世紀以降飛躍的に成長し、近代資本主義や大航海時代の基盤を築いたのです。

本記事では、商業ルネサンスの背景から、その具体的展開、そして後世への影響までを体系的に解説していきます。大学入試においても頻出のテーマであり、論述・一問一答・正誤問題でも問われやすい分野です。

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また、各章末には重要論述問題とその解答例を準備しています。これらは理解を助けることを目的に作成した参考例であり、実際の入試や模試でそのまま最適化された解答とは限りません。

論述問題本番では、ここで得た知識を叩き台にして、自分の言葉で答案を再構成しブラッシュアップしていってください。

目次

第1章 商業ルネサンスの背景と前提条件

商業ルネサンスは突然始まったわけではなく、農業技術の進歩や人口増加、都市の再生といった複数の要因が重なって生じました。

封建制度が基盤であった中世社会のなかで、これらの条件が商業の発展を可能にしたのです。まずは、その背景を見ていきましょう。

1-1 農業技術の発展と余剰生産物

中世ヨーロッパでは、三圃制(秋耕地・春耕地・休閑地の三分割)の普及や、重量有輪犂(じゅうりょうゆうりんすき)の導入によって農業効率が高まりました。

水車・風車の利用も生産力を向上させ、農業の余剰が生まれることで市場に出回る物資が増加しました。

1-2 人口増加と都市の復活

11〜13世紀には人口が増加し、農村から都市へ人々が流入しました。

古代ローマ以来衰退していた都市が再び活気を取り戻し、都市は商業活動の拠点として発展していきます。

中でもイタリアやフランドル地方の都市は、交易の要所として大きな役割を果たしました。

1-3 封建社会の限界と商業活動

荘園制に依存する封建的な生産体制では、人口増加に伴う需要を満たすことが困難でした。

これにより、農村を越えて商人が活動し、物資を広範囲に流通させる必要が生じます。

結果として、領主や騎士に依存しない経済活動が広がり、商業ルネサンスの基盤が形成されました。

1-4 入試で狙われるポイント

  • 三圃制の仕組みと効果
  • 重量有輪犂や水車の普及と農業生産力の向上
  • 都市復興とフランドル・イタリアの商業都市
  • 封建制の制約を超えた商業活動の拡大

重要論述問題にチャレンジ

商業ルネサンスが生じた背景を、農業生産の変化と都市の復興に注目して200字程度で説明せよ。

中世ヨーロッパでは、三圃制や重量有輪犂、水車の普及により農業生産力が向上し、余剰生産物が生まれた。これに伴い人口が増加し、衰退していた都市が再び活気を取り戻した。都市は商業活動の中心地となり、農村からの物資供給と相互に依存することで市場経済が発展した。封建制の制約を超えるこうした動きが、商業ルネサンスの基盤を築いたのである。

第1章: 商業ルネサンス 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1 三圃制とはどのような農業方式か。
解答:耕地を秋耕地・春耕地・休閑地の三つに分け、輪作する方式。

問2 重量有輪犂の導入により特に耕作が進んだのはどの地域か。
解答:北ヨーロッパの重い土壌地帯。

問3 水車・風車の普及がもたらした効果は何か。
解答:粉ひきや排水などの効率化による農業生産力の増加。

問4 11〜13世紀にヨーロッパで大きく増加したものは何か。
解答:人口。

問5 中世後期に再び活気を取り戻したものは何か。
解答:都市。

問6 交易の拠点として発展したイタリアの都市を一つ挙げよ。
解答:ヴェネツィア(またはジェノヴァ、フィレンツェ)。

問7 毛織物工業で有名になったフランドル地方の都市を一つ挙げよ。
解答:ブリュージュ。

問8 荘園制に依存する経済体制を何というか。
解答:封建制。

問9 農村を越えて商人が活動するようになった背景には何があるか。
解答:人口増加による需要拡大と封建制の限界。

問10 商業ルネサンスは後の何につながったか。
解答:近代資本主義・大航海時代。

正誤問題(5問)

問1 三圃制は耕地を二つに分けて耕作する方式である。
解答:誤(正しくは三分割)

問2 重量有輪犂の導入により、南ヨーロッパの軽い土壌での耕作が進んだ。
解答:誤(北ヨーロッパの重い土壌)

問3 水車・風車の普及は農業生産力を高めた。
解答:正

問4 11〜13世紀にヨーロッパの人口は減少した。
解答:誤(増加した)

問5 フランドル地方の都市は毛織物工業で発展した。
解答:正

よくある誤答パターンまとめ

  • 三圃制を二圃制と混同する
  • 重量有輪犂の利用地域を南ヨーロッパと誤答
  • 人口動態について「減少」と誤る
  • フランドル地方とイタリア都市を混同
  • 都市復興の要因を「宗教改革」と混同する

第2章 定期市と商業ネットワークの発展

農業の発展と人口増加によって生まれた余剰生産物は、市場に出回るようになり、各地で定期的に開かれる「定期市」へとつながりました。

定期市は商人や農民が物資を交換する場であり、広域的な商業ネットワークの形成に欠かせない存在でした。また、こうした活動の中心には商人ギルドや自由都市が存在し、商業の発展を支える重要な役割を果たしました。

2-1 シャンパーニュ定期市と国際商業

フランスのシャンパーニュ地方では、12〜13世紀に定期市が開催され、北イタリアの商人と北ヨーロッパの商人が集まりました。

ここでは毛織物、ワイン、香辛料などが取引され、ヨーロッパ規模の流通を可能にしました。

2-2 自由都市と商人ギルド

中世都市の多くは領主の支配下から自治権を獲得し、「自由都市」として発展しました。

都市内部では商人や手工業者がギルドを結成し、商業活動を統制するとともに、都市の政治にも影響力を持ちました。これは都市の独自性を強め、封建領主や聖職者に対抗する力ともなりました。

2-3 北ヨーロッパの商業ネットワーク ― ハンザ同盟

バルト海や北海沿岸の都市は「ハンザ同盟」を形成し、リューベックを中心に交易網を築きました。

北ヨーロッパの商人は、魚・木材・穀物を供給する一方で、イタリア商人から香辛料や奢侈品を輸入することで、ヨーロッパ経済の循環を支えました。

2-4 入試で狙われるポイント

  • シャンパーニュ定期市と国際商業の展開
  • 自由都市とギルドの役割
  • ハンザ同盟の商業圏とリューベックの位置
  • 都市自治と封建領主への対抗関係

重要論述問題にチャレンジ

シャンパーニュ定期市の発展とその歴史的意義を200字程度で説明せよ。

12〜13世紀のシャンパーニュ定期市は、北イタリア商人と北ヨーロッパ商人が集う国際市場として発展し、毛織物やワイン、香辛料などが取引された。この定期市は、南北ヨーロッパを結ぶ交易ルートを形成し、経済的な統合を促進した。また、信用取引や手形制度の基盤をつくる契機ともなり、後の商業革命へとつながる重要な役割を果たした。

第2章: 商業ルネサンス 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1 シャンパーニュ定期市が栄えたのはどの世紀か。

解答:12〜13世紀

問2 シャンパーニュ定期市で主に取引された品の一つを挙げよ。

解答:毛織物(他にワイン・香辛料なども可)

問3 中世都市が獲得した自治権を持つ都市を何というか。

解答:自由都市

問4 都市内部で商人や手工業者が結成した組織を何というか。

解答:ギルド

問5 北ドイツを中心に形成された商業同盟を何というか。

解答:ハンザ同盟

問6 ハンザ同盟の中心都市はどこか。

解答:リューベック

問7 ハンザ同盟の都市が供給した商品の一つを挙げよ。

解答:魚(他に木材・穀物など)

問8 自由都市の発展は何に対抗する力となったか。

解答:封建領主や聖職者の支配

問9 シャンパーニュ定期市はどの地域を結ぶ国際市場であったか。

解答:南ヨーロッパと北ヨーロッパ

問10 定期市の発展は後の何につながったか。

解答:商業革命

正誤問題(5問)

問1 シャンパーニュ定期市は北イタリアと北ヨーロッパを結ぶ交易の中心であった。

解答:正

問2 自由都市とは国王の直轄都市であり、領主の支配を受け続けた。

解答:誤(領主の支配から自治を獲得した都市)

問3 ギルドは商業活動を統制する組織であった。

解答:正

問4 ハンザ同盟の中心都市はジェノヴァであった。

解答:誤(リューベック)

問5 ハンザ同盟は主に地中海交易を担った。

解答:誤(北海・バルト海沿岸の交易)

よくある誤答パターンまとめ

  • シャンパーニュ定期市を「14世紀以降」と誤る
  • 自由都市を「王の直轄都市」と混同する
  • ハンザ同盟の中心都市をジェノヴァやヴェネツィアと誤答
  • ハンザ同盟の活動範囲を地中海と勘違い
  • 定期市の意義を単なる地元市場と誤解する

第3章 金融革新と制度の発展

商業ルネサンスの進展は、単なる物流の活性化にとどまらず、金融・信用制度の革新をもたらしました。

遠隔地間での大規模取引が増える中、現金の運搬に代わる安全かつ効率的な取引手段が求められ、手形や信用制度が発達しました。

さらに、銀行家や大商人の台頭によって都市経済は国際的に結びつき、やがて大航海時代と資本主義経済の基盤へとつながっていきます。

3-1 手形と信用制度の発展

遠隔地交易では、現金を持ち歩くことは盗難の危険があり、非効率的でした。

そこで、商人は手形(信用証書)を用いることで、現地での換金や決済を可能にしました。

こうした信用制度の発展は、国際商業の安全性を高めるとともに、商人ネットワークを拡大させました。

3-2 銀行家と金融資本の台頭

イタリアのメディチ家やドイツのフッガー家は、金融業を通じて巨額の富を蓄え、国王や教皇に資金を貸し付けることで政治的影響力も持つようになりました。

これにより、金融資本が国家権力と結びつく時代が始まり、商業ルネサンスの枠を超えた歴史的意義を持ちました。

3-3 株式会社と東インド会社の萌芽

16世紀以降、長距離交易や海外進出のためには巨額の資本が必要となりました。

これに対応して、多数の出資者から資金を集める株式会社制度が生まれ、オランダ東インド会社やイギリス東インド会社の設立につながりました。

これは近代資本主義的な経済システムの始まりを示しています。

3-4 入試で狙われるポイント

  • 手形・信用制度の役割と仕組み
  • メディチ家・フッガー家と金融資本の影響力
  • 株式会社制度の意義と東インド会社の設立
  • 商業ルネサンスと近代資本主義の連続性

重要論述問題にチャレンジ

商業ルネサンスにおける金融制度の発展とその歴史的意義を200字程度で説明せよ。

商業ルネサンス期には、遠隔地交易の拡大に伴い手形や信用制度が発達し、現金運搬の危険を回避しつつ大規模取引が可能になった。また、メディチ家やフッガー家などの銀行家は、金融業を通じて国王や教皇に資金を供給し、政治的にも大きな影響力を持った。さらに、株式会社制度の誕生は大航海時代の海外貿易を可能にし、近代資本主義の成立に直結した。これらは商業革命と資本主義社会への重要な橋渡しであった。

第3章: 商業ルネサンス 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1 遠隔地交易で現金運搬に代わって利用された金融手段は何か。

解答:手形

問2 手形の使用がもたらした最大の利点は何か。

解答:現金運搬の危険を回避し、安全な取引を可能にした。

問3 15世紀フィレンツェで銀行業を営み、芸術保護でも有名な一族は何か。

解答:メディチ家

問4 16世紀ドイツで皇帝に資金を貸し付け、鉱山経営にも関わった豪商は何か。

解答:フッガー家

問5 メディチ家やフッガー家の活動は経済だけでなく何に影響を与えたか。

解答:政治

問6 海外進出に必要な巨額の資金を多数の出資者から集める仕組みを何というか。

解答:株式会社制度

問7 世界初の株式会社とされるのはどこの会社か。

解答:オランダ東インド会社

問8 イギリスで1600年に設立された海外貿易会社は何か。

解答:イギリス東インド会社

問9 株式会社制度の登場は後の何につながったか。

解答:近代資本主義経済

問10 商業ルネサンスの金融革新は、何世紀以降の大航海時代を支える基盤となったか。

解答:16世紀

正誤問題(5問)

問1 手形は遠隔地交易で安全な決済を可能にした。

解答:正

問2 メディチ家はローマを中心に活動した銀行家であった。

解答:誤(フィレンツェを拠点とした)

問3 フッガー家はドイツの豪商で、ハプスブルク家に資金を提供した。

解答:正

問4 株式会社制度は多数の出資者がリスクを分担する仕組みである。

解答:正

問5 イギリス東インド会社はオランダに先立って設立された。

解答:誤(オランダ東インド会社が1602年、イギリスは1600年だが、実質的に世界初の株式会社とされるのはオランダ東インド会社)

よくある誤答パターンまとめ

  • 手形を「貨幣そのもの」と誤解する
  • メディチ家の拠点をローマと答える誤り
  • フッガー家とメディチ家の活動時期や地域を混同
  • 株式会社制度を「国王の専売会社」と誤解する
  • オランダ東インド会社とイギリス東インド会社の設立順を逆にする

第4章 地理的拡大と交易圏の変遷

商業ルネサンスの発展はヨーロッパ内部にとどまらず、地理的な広がりを見せました。

地中海世界と北ヨーロッパを結ぶ交易に加え、東方世界や新航路発見による大西洋交易が加わり、ヨーロッパの経済構造は大きく変貌しました。

特に新大陸からの銀の流入は価格革命を引き起こし、ヨーロッパ全体の貨幣経済を揺るがすこととなりました。

4-1 地中海交易と北ヨーロッパ

イタリアのヴェネツィアやジェノヴァは、東方との中継貿易を担い、香辛料や絹織物をヨーロッパに供給しました。

一方、北ヨーロッパではフランドル地方の毛織物工業やハンザ同盟の海上交易が発展し、南北ヨーロッパを結ぶ経済圏が形成されました。

4-2 新航路発見と大西洋交易

15世紀後半、大航海時代が幕を開けると、ポルトガルやスペインはアフリカ航路・インド航路・アメリカ大陸へ進出しました。

これにより、大西洋交易が新たな中心地となり、従来の地中海交易の比重は相対的に低下しました。

4-3 アメリカ銀と価格革命

16世紀以降、スペイン領アメリカから大量の銀がヨーロッパに流入しました。

この銀はスペイン経済を一時的に潤したものの、物価の急上昇(=価格革命)をもたらし、封建的な経済構造を揺さぶりました。

これによって固定地代収入に依存していた領主層は打撃を受け、貨幣経済に適応できる都市商人や農民が台頭していきました。

4-4 入試で狙われるポイント

  • ヴェネツィア・ジェノヴァの役割と地中海交易
  • フランドル地方の毛織物とハンザ同盟の北欧交易
  • 大航海時代による大西洋経済圏の成立
  • アメリカ銀流入と価格革命の社会的影響

重要論述問題にチャレンジ

新航路発見以降の大西洋交易の発展が、ヨーロッパ経済と社会に与えた影響を200字程度で説明せよ。

新航路発見によってポルトガルやスペインはアジアやアメリカと結びつき、大西洋交易が拡大した。これにより、地中海中心だったヨーロッパ経済は大西洋へ重心を移した。また、アメリカからの銀の流入は価格革命を引き起こし、物価上昇によって地代収入に依存する封建領主層は打撃を受けた。一方で貨幣経済に適応した都市商人や農民が台頭し、資本主義経済への転換を促進した。

第3章: 商業ルネサンス 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1 東方との中継貿易で繁栄したイタリアの都市を一つ挙げよ。

解答:ヴェネツィア(またはジェノヴァ)

問2 フランドル地方で盛んだった工業は何か。

解答:毛織物工業

問3 北ヨーロッパの海上交易を担った都市同盟は何か。

解答:ハンザ同盟

問4 新航路発見の先駆けとなった国を二つ挙げよ。

解答:ポルトガル、スペイン

問5 スペイン領アメリカから大量にヨーロッパへ流入したものは何か。

解答:銀

問6 16世紀の銀の大量流入によって起こった経済現象を何というか。

解答:価格革命

問7 価格革命によって打撃を受けた社会層は誰か。

解答:封建領主層(固定地代収入に依存する層)

問8 価格革命によって台頭した社会層は誰か。

解答:都市商人や貨幣経済に適応した農民

問9 大西洋交易の拡大は従来のどの交易圏を相対的に弱めたか。

解答:地中海交易

問10 大西洋経済圏の成立は後の何につながったか。

解答:近代資本主義・世界経済の形成

正誤問題(5問)

問1 ヴェネツィアやジェノヴァは東方交易の中継貿易を担った。

解答:正

問2 フランドル地方では絹織物工業が発展した。

解答:誤(毛織物工業)

問3 ハンザ同盟はバルト海・北海を中心に活動した。

解答:正

問4 新航路発見に最も早く乗り出したのはイタリア諸都市であった。

解答:誤(ポルトガルとスペイン)

問5 価格革命は銀の流入による物価の急上昇を意味する。

解答:正

よくある誤答パターンまとめ

  • フランドル地方を「絹織物」と誤答
  • 新航路発見の先駆けを「イタリア」と答える
  • ハンザ同盟の活動範囲を地中海と混同
  • 価格革命を「価格下落」と誤解
  • 価格革命で打撃を受けたのを「商人」と誤答

第5章 商業ルネサンスが社会・政治・文化にもたらした影響

商業ルネサンスは経済活動の活発化にとどまらず、社会構造や政治体制、さらには文化にも深い影響を与えました。

新たに台頭した商人層は封建社会に揺さぶりをかけ、王権強化や中央集権化を後押ししました。

また、都市の経済的繁栄はルネサンス文化や人文主義の発展を支える基盤ともなり、やがて宗教改革や近代国家形成にもつながっていきました。

5-1 ブルジョワジーの台頭と封建制の変容

商業活動の発展は都市に富裕な商人層を生み出しました。

彼らはブルジョワジー(市民階級)と呼ばれ、領主や聖職者とは異なる新しい社会的勢力を形成しました。

貨幣経済の拡大は荘園制を弱体化させ、農奴制の解体を促進しました。

5-2 王権強化と中央集権化

富裕な商人や銀行家は王に資金を貸し、国家の戦費や行政を支える存在となりました。

その結果、王権は封建諸侯を抑える力を増し、中央集権国家の形成が進展しました。

商業ルネサンスは封建的分権体制から近代国家への移行を支える原動力となったのです。

5-3 文化・思想への波及

都市の経済的繁栄は、学問や芸術のパトロンを生み出しました。

フィレンツェのメディチ家に代表されるように、商人・銀行家はルネサンス芸術や人文主義を支援し、文化の隆盛を可能にしました。

また、貨幣経済と印刷技術の普及は宗教改革の思想拡散にも寄与しました。

5-4 入試で狙われるポイント

  • ブルジョワジー(市民階級)の台頭とその歴史的意義
  • 貨幣経済の拡大と封建制の解体
  • 王権強化・中央集権化と商業の結びつき
  • メディチ家などのパトロン活動とルネサンス文化

重要論述問題にチャレンジ

商業ルネサンスが社会・政治・文化に与えた影響について、ブルジョワジーの台頭と文化の発展に触れながら200字程度で説明せよ。

商業ルネサンスは都市の商業活動を活発化させ、富裕な商人層であるブルジョワジーが台頭した。彼らは封建領主に依存しない新たな社会勢力となり、貨幣経済の拡大は荘園制の衰退を招いた。また、商人や銀行家は王に資金を貸し与え、王権強化や中央集権化を後押しした。さらに、都市の繁栄は芸術や学問のパトロンを生み出し、ルネサンス文化を支えた。これにより、商業の発展は社会・政治・文化に広範な変化をもたらした。

第4章: 商業ルネサンス 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1 商業ルネサンス期に台頭した都市の富裕商人層を何というか。

解答:ブルジョワジー

問2 貨幣経済の拡大が解体を促した中世的制度は何か。

解答:荘園制・農奴制

問3 商人や銀行家が王に資金を貸したことが後押しした政治的変化は何か。

解答:王権強化・中央集権化

問4 ルネサンス文化を支えたフィレンツェの有力銀行家一族は誰か。

解答:メディチ家

問5 商業ルネサンスにおける王と商人の関係を一言で表すと何か。

解答:相互依存関係

問6 貨幣経済の普及により封建領主の固定地代収入はどうなったか。

解答:価値が低下し打撃を受けた

問7 商業ルネサンスが文化面に与えた最大の影響は何か。

解答:ルネサンス芸術・人文主義の発展を支えた

問8 宗教改革の思想が広まるのを助けた要因の一つは何か。

解答:貨幣経済と印刷技術の普及

問9 商業ルネサンスにより力を失ったのは、封建領主ともう一つどの社会層か。

解答:聖職者層(教会権威の一部)

問10 商業ルネサンスは後のどのような国家形成に寄与したか。

解答:近代国家の形成

正誤問題(5問)

問1 ブルジョワジーとは中世ヨーロッパの農村に住む農民を指す。

解答:誤(都市の商人層)

問2 貨幣経済の拡大は荘園制や農奴制の衰退を促した。

解答:正

問3 銀行家が王に資金を貸したことは王権強化の要因となった。

解答:正

問4 メディチ家は軍事活動によって権力を得た。

解答:誤(銀行業を基盤とした)

問5 商業ルネサンスの発展はルネサンス文化の隆盛に寄与した。

解答:正

よくある誤答パターンまとめ

  • ブルジョワジーを農民層と混同する
  • メディチ家の権力基盤を「軍事」と誤解
  • 王権強化の要因を「農業生産の拡大」として商業との関連を無視する
  • 貨幣経済の影響を「封建領主の強化」と逆に答える
  • ルネサンス文化のパトロンを「教皇のみに限定」してしまう

終章 商業ルネサンスの意義と現代へのつながり

商業ルネサンスは、中世の農業技術革新を土台に、都市の復興・交易の発展・金融制度の革新を通じて、ヨーロッパ経済を大きく変貌させました。この変化は単なる商業活動の活性化にとどまらず、社会構造の変化(ブルジョワジーの台頭、封建制度の衰退)、政治体制の転換(王権強化と中央集権化)、文化的発展(ルネサンスや宗教改革の推進)にまで及びました。

さらに、新航路発見とアメリカ銀の流入により、大西洋を中心とする世界経済が誕生し、ヨーロッパは近代資本主義の時代へと移行していきました。商業ルネサンスは、まさに「中世から近代への架け橋」であり、今日のグローバル経済を考える上でも重要な歴史的プロセスです。

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商業ルネサンス関連年表

年代出来事関連内容
11世紀頃三圃制・重量有輪犂の普及農業生産力の向上
12〜13世紀シャンパーニュ定期市の繁栄南北ヨーロッパを結ぶ国際市場
12〜13世紀自由都市・ギルドの発展都市自治と商業統制
13世紀ハンザ同盟形成北ヨーロッパの商業ネットワーク
15世紀メディチ家の銀行活動芸術保護・ルネサンス支援
15世紀後半大航海時代の始まりポルトガル・スペインの進出
16世紀アメリカ銀の大量流入価格革命の発生
16世紀初頭フッガー家の活躍皇帝選挙に資金提供
1600年イギリス東インド会社設立株式会社制度の登場
1602年オランダ東インド会社設立世界初の本格的株式会社

商業ルネサンスの流れ(フローチャート)

  1. 農業技術の革新(三圃制・重量有輪犂)
    → 余剰生産・人口増加
  2. 都市の復興・定期市の発展(シャンパーニュ定期市)
    → 南北を結ぶ商業ルート形成
  3. 自由都市・ギルド・ハンザ同盟による商業ネットワーク拡大
    → 広域流通の常態化
  4. 金融革新(手形・信用・銀行家メディチ/フッガー)
    → 大口・遠隔取引の安全化
  5. 株式会社の萌芽(東インド会社)
    → 巨額資金の調達・リスク分散
  6. 大航海時代・大西洋交易の拡大
    → 経済重心の地中海→大西洋へ
  7. アメリカ銀の流入
    → 価格革命(物価上昇)
  8. 社会・政治の変容(ブルジョワジー台頭・王権強化)
    → 中央集権化の進展
  9. 文化への波及(ルネサンス・宗教改革の加速)
    →近代資本主義・世界経済の形成
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