中世ヨーロッパは「暗黒時代」と呼ばれることもありますが、実際には 都市と商業の発展を軸に社会が大きく変化した時代 でした。
農業生産力の向上により余剰生産物が生まれ、交易路が活発になり、やがて自由都市やギルドが登場します。さらに、ハンザ同盟やシャンパーニュの定期市などが広域経済圏を形成し、中世後期には 「商業革命」 への道を開きました。
この記事では、大学受験世界史で頻出する 「中世都市と商業の発展」 について、
- 都市発展の背景
- 商業の広がりとギルドの役割
- 国際交易網と経済圏の拡大
などを体系的に解説します。さらに、章末では 論述問題 や 一問一答+正誤問題 で知識を定着させ、入試に直結する実戦力を養います。
【ときおぼえ世界史シーリーズ】では、大学受験世界史で頻出のポイントを押さえつつ、章末には関連する論述問題や一問一答も用意しているので、入試対策にも最適です。
また、大学入試では、用語の暗記だけでなくどのような切り口で試験に理解することが重要です。
次の【中世都市と商業の発展 総合問題演習50本勝負】では、MARCHレベル、早慶レベルの問題をこなすことができますので、この記事をお読みになった後、チャレンジをしてみてください。
第1章 中世ヨーロッパにおける都市の発展
中世の初期(10世紀頃まで)は農村社会が中心で、都市はローマ時代に比べて大きく衰退していました。しかし11世紀以降、農業技術の進歩と人口増加を背景に、都市が再び活気を取り戻します。この都市の復興は、単に経済活動の場が広がっただけでなく、封建社会の構造にも影響を与えました。
都市の復興と発展の背景
農業生産力の向上
10世紀以降、三圃制(さんぽせい) や 重量有輪犂(じゅうりょうゆうりんすき) の普及により農業生産力が飛躍的に向上しました。これにより余剰生産物が生まれ、それが市場で取引されることで都市の経済活動が活発化します。
封建社会の変化と都市の自立
当初、都市は領主に支配されていましたが、交易の活発化と住民の経済力の向上によって、自治権を獲得する自由都市 が現れます。
特にドイツのニュルンベルクやハンブルク、北イタリアのヴェネツィアやフィレンツェなどは、強大な都市国家として発展しました。
都市経済を支えたギルド
ギルドの種類と役割
中世都市の商業活動を管理したのが ギルド(同業組合) です。
- 商人ギルド:都市の商取引を独占し、外部商人を排除
- 手工業者ギルド(ツンフト):製品の品質や価格を統制
ギルドは都市経済の安定に寄与しましたが、新興商人の進出を阻む存在にもなりました。
ギルドと都市の自治
ギルドの力が強まるにつれて、都市は領主に依存しない自治体制を確立します。こうした自由都市は、封建制に対抗する拠点としての役割も果たしました。
国際商業圏の形成
シャンパーニュの定期市
フランス北部のシャンパーニュ地方では、12〜13世紀にかけて大規模な定期市が開催され、南欧と北欧を結ぶ国際交易の中心となりました。
ハンザ同盟の台頭
北ドイツを中心に発展したハンザ同盟は、北海・バルト海交易を独占し、ロンドンやノヴゴロドに商館を設置しました。この同盟は中世後期のヨーロッパ経済に大きな影響を与えました。
入試で狙われるポイント
三圃制・重量有輪犂・水車など 農業技術革新の名称と効果
- 自由都市の成立と自治権獲得の背景
- ギルドの種類(商人ギルド・手工業者ギルド)と役割
- シャンパーニュ定期市とハンザ同盟の位置と機能
- 都市経済が封建社会を揺るがした意義
- 11〜13世紀にかけて中世ヨーロッパで都市が発展した背景と、その発展が封建社会に与えた影響について、120〜150字で説明せよ。
-
11世紀以降、三圃制や重量有輪犂などの農業技術革新により余剰生産物が増加し、交易が活発化した。市場の発展に伴い都市が復興し、住民は自治権を獲得して自由都市を形成した。こうして都市は領主の支配から脱し、封建社会の構造を揺るがす要因となった。
第1章: 中世都市と商業の発展 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
中世ヨーロッパで農業生産力を飛躍的に高めた耕作法を何というか。
解答:三圃制
問2
重量有輪犂は主にどの地域で普及したか。
解答:北ヨーロッパ
問3
自治権を獲得した都市を何と呼ぶか。
解答:自由都市
問4
中世都市の商人による同業組合を何と呼ぶか。
解答:商人ギルド
問5
製品の品質や価格を統制した職人組合を何というか。
解答:手工業者ギルド(ツンフト)
問6
シャンパーニュ地方で開催された大規模な市を何と呼ぶか。
解答:定期市
問7
北ドイツを中心に発展した都市同盟を何というか。
解答:ハンザ同盟
問8
ハンザ同盟の主要拠点となった都市を1つ挙げよ。
解答:リューベック
問9
南北交易をつなぐ中継地として繁栄したイタリアの都市を1つ挙げよ。
解答:ヴェネツィア、ジェノヴァ など
問10
都市の発展が封建社会に与えた影響を一言で説明せよ。
解答:封建領主の支配力を弱めた
正誤問題(5問)
問1
三圃制では農地を4つに分け、毎年異なる作物を植えた。
解答:誤(3つに分ける)
問2
商人ギルドは都市外の商人にも自由に取引を許した。
解答:誤(排除した)
問3 ハンザ同盟は北海・バルト海の交易を独占した。
解答:正
問4
シャンパーニュの定期市は主に東欧と中央アジアを結ぶ中継点だった。
解答:誤(南欧と北欧を結ぶ)
問5
自由都市は領主権から独立して自治を行った。
解答:正
第2章 中世商業の拡大と国際交易網の形成
11世紀以降、都市の復興とともに商業活動はヨーロッパ全域で拡大しました。南ヨーロッパでは地中海交易が、北ヨーロッパではハンザ同盟を中心とする北海・バルト海交易が発展し、これらを結ぶ広域経済圏が形成されました。
さらに、東方貿易を巡る十字軍遠征や香辛料貿易は、都市の繁栄と商人階級の台頭を後押ししました。
南ヨーロッパの商業圏
イタリア都市国家の繁栄
ヴェネツィア、ジェノヴァ、ピサなどのイタリア都市は、地中海交易の拠点として急速に発展しました。特にヴェネツィアは東方との貿易で莫大な富を蓄積し、商業国家として中世後期のヨーロッパをリードしました。
香辛料貿易とレヴァント交易
香辛料は中世ヨーロッパにおける最重要輸入品であり、レヴァント地方(東地中海沿岸)を通じてアジアから流入しました。
この交易ルートの支配権を巡って、十字軍遠征や後の大航海時代が大きな意味を持つことになります。
北ヨーロッパの商業圏
ハンザ同盟の台頭
北ドイツの諸都市は、リューベックを盟主とするハンザ同盟を結成し、北海・バルト海の交易を独占しました。
ロンドンやノヴゴロドなどに商館を設置し、北ヨーロッパ経済を支配しました。
バルト海貿易と毛織物産業
フランドル地方(現在のベルギー・オランダ)は毛織物産業で繁栄し、バルト海地方の穀物と連携することで強大な経済圏を形成しました。
これにより北ヨーロッパは南欧との交易と結びつき、ヨーロッパ全体の経済統合が進んでいきます。
商業活動の国際化と金融の発展
手形と両替商の台頭
遠隔地取引が増加するにつれ、現金輸送の危険性を避けるため手形(bill of exchange)が広まりました。フィレンツェやジェノヴァの大商人は、両替商や銀行業を営み、国際金融の中心地として発展します。
フッガー家とメディチ家
15世紀には、アウクスブルクのフッガー家やフィレンツェのメディチ家が台頭し、国際金融を支配しました。
特にメディチ家は銀行業だけでなく、ルネサンス文化の保護者としても知られています。
入試で狙われるポイント
- ヴェネツィア・ジェノヴァなどイタリア都市国家の役割
- レヴァント交易と香辛料貿易の重要性
- ハンザ同盟と北海・バルト海交易
- フランドル毛織物産業とブリュージュの繁栄
- 手形・両替商・フッガー家・メディチ家の金融史的意義
- 中世後期のヨーロッパにおける南北商業圏の形成とそれらを結ぶ国際交易網の特徴について、120〜150字で説明せよ。
-
南ヨーロッパではヴェネツィアやジェノヴァなどがレヴァント交易を独占し、香辛料や絹織物を輸入した。一方、北ヨーロッパではハンザ同盟が北海・バルト海交易を支配し、フランドル毛織物産業と結びついた。これら南北の商業圏はシャンパーニュ定期市などを介して接続され、国際的な商業網を形成した。
第2章: 中世都市と商業の発展 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
地中海交易を支配した代表的なイタリア都市国家を1つ挙げよ。
解答:ヴェネツィア
問2
ヴェネツィアやジェノヴァが交易で主に扱ったアジアからの重要品は何か。
解答:香辛料
問3
香辛料貿易で重要な役割を果たした東地中海沿岸地域を何というか。
解答:レヴァント地方
問4
北ドイツの都市同盟で北海・バルト海交易を独占した組織は何か。
解答:ハンザ同盟
問5
ハンザ同盟の盟主として知られる都市はどこか。
解答:リューベック
問6
フランドル地方が発展した主な産業は何か。
解答:毛織物産業
問7
フランドル地方の交易拠点として繁栄した都市はどこか。
解答:ブリュージュ
問8
中世後期に普及した、現金輸送の危険を避ける金融手段は何か。
解答:手形
問9
15世紀アウクスブルクで国際金融を支配した豪商一族は何か。
解答:フッガー家
問10
ルネサンス文化の保護者としても知られる銀行家一族は何か。
解答:メディチ家
正誤問題(5問)
問1
ヴェネツィアは地中海交易よりも北海交易で発展した都市である。
解答:誤(地中海交易で発展)
問2
レヴァント地方はアジアからの香辛料が流入する重要な中継地だった。
解答:正
問3
ハンザ同盟はロンドンやノヴゴロドに商館を設置した。
解答:正
問4
フランドル地方はワイン産業で発展した地域である。
解答:誤(毛織物産業で発展)
問5
メディチ家はフィレンツェを拠点に銀行業を展開した。
解答:正
第3章 商業革命と金融資本の発展
15世紀後半から16世紀にかけて、ヨーロッパの商業活動は質的に大きく変化し、商業革命(Commercial Revolution)と呼ばれる時代を迎えました。
大航海時代の到来によりアメリカ大陸から大量の銀や新商品が流入し、国際交易は地中海から大西洋へと重心を移します。また、資本の蓄積と銀行業の発展が進み、近代的な世界経済システムが形成されていきました。
大航海時代と世界経済の拡大
新航路の開拓と大西洋交易
ポルトガルとスペインは15世紀後半以降、アジア・アフリカ・アメリカへと航路を開拓し、新大陸発見や香辛料貿易で莫大な利益を得ました。
これにより、交易の中心は地中海から大西洋へと移行し、従来のレヴァント交易を独占していたイタリア都市は次第に没落します。
アメリカ銀の流入と価格革命
スペイン領アメリカから大量の銀がヨーロッパに流入したことで、価格革命(Price Revolution)が起きました。物価が急上昇し、封建領主の地代収入は目減りする一方、商人や資本家階級が台頭するきっかけとなります。
商業資本主義と金融の発展
株式会社と東インド会社
遠隔地貿易には巨額の資本が必要だったため、出資者を募って設立する株式会社が登場しました。
代表例がオランダ東インド会社(1602年設立)やイギリス東インド会社(1600年設立)で、これらはアジア貿易を独占し、莫大な富を蓄積しました。
銀行・手形・証券取引所の発達
アムステルダムやロンドンでは証券取引所が開設され、近代的な資本市場が形成されました。
また、手形取引や為替システムの発達により、国際金融ネットワークが整備され、近代資本主義の萌芽が見られるようになります。
経済構造の変化と社会への影響
商人資本家と新興ブルジョワジー
商業革命によって富を得た商人や金融業者は、封建領主に匹敵する経済力を持つようになり、ブルジョワジーとして都市社会の主導権を握ります。
近代世界経済への移行
この時期に形成されたアジア・アフリカ・アメリカを結ぶ大西洋経済圏は、やがて近代世界システムの基盤となり、17世紀以降の重商主義政策にもつながっていきます。
入試で狙われるポイント
- 大航海時代と地中海から大西洋への交易重心の移動
- アメリカ銀流入による価格革命と社会変動
- 株式会社と東インド会社の設立年・特徴
- 手形・証券取引所・銀行業など金融制度の発達
- 商業資本主義から近代資本主義への移行
- 大航海時代から商業革命にかけて、ヨーロッパ経済の中心が地中海から大西洋に移行した過程と、その影響について120〜150字で説明せよ。
-
15世紀後半以降、ポルトガルやスペインがアジア航路や新大陸を開拓し、香辛料・銀などの大西洋交易が拡大した。これによりヴェネツィアなど地中海都市の地位は低下し、アントウェルペンやアムステルダムなど大西洋沿岸都市が繁栄した。さらに、アメリカ銀の流入が価格革命を引き起こし、商業資本家が台頭した。
第3章: 中世都市と商業の発展 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
15〜16世紀の交易構造の変革を何と呼ぶか。
解答:商業革命
問2
商業革命をもたらした最大の契機となった出来事は何か。
解答:大航海時代
問3
新航路開拓によって没落した地中海交易の中心都市を1つ挙げよ。
解答:ヴェネツィア
問4
アメリカ大陸から大量の銀が流入したことで16世紀に起きた経済現象は何か。
解答:価格革命
問5
オランダ東インド会社が設立された年はいつか。
解答:1602年
問6
イギリス東インド会社の設立年はいつか。
解答:1600年
問7
17世紀に開設され、近代証券取引所の原型となった都市を1つ挙げよ。
解答:アムステルダム
問8
商業革命期における商人や金融業者などの新興都市富裕層を何と呼ぶか。
解答:ブルジョワジー
問9
メディチ家やフッガー家が展開した金融業務の特徴を一言で言うと何か。
解答:国際金融網の形成
問10
商業革命期の国際貿易で重要な中継地として栄えたネーデルラントの都市はどこか。
解答:アントウェルペン
正誤問題(5問)
問1
大航海時代以降、地中海交易の中心はますます繁栄を続けた。
解答:誤(大西洋交易へ重心が移動)
問2
アメリカ銀の大量流入は物価の急上昇をもたらした。
解答:正
問3
オランダ東インド会社はイギリス東インド会社より後に設立された。
解答:正
問4
価格革命により封建領主の地代収入は増加した。
解答:誤(貨幣価値下落で収入減)
問5
商業革命は近代資本主義の萌芽を生み出した。
解答:正
第4章 中世商業の発展が社会・政治・文化に与えた影響
中世後期の商業発展は、単に経済的な豊かさをもたらしただけではありませんでした。
それは 社会構造・政治体制・文化のあり方 に深い影響を及ぼし、封建制から近代国家への移行を加速させました。
商業資本の台頭は封建領主の権威を弱め、国王権を強化し、さらに文化面ではルネサンスの発展を促すなど、広範囲な変化をもたらしたのです。
社会構造の変化
農奴制の解体
価格革命や都市の発展により、領主の地代収入は目減りし、領主は労働力確保のため農奴を解放する傾向を強めました。
都市へ流入した農民は 自由民 として職人や商人に転じ、農村中心の封建社会から都市中心の商業社会へと変化しました。
ブルジョワジーの台頭
商業活動で富を蓄積した ブルジョワジー(都市富裕層) は、都市の自治や王権強化を支える重要な存在となりました。
彼らは封建領主より国王に協力することで、政治的影響力を高めていきます。
政治体制への影響
王権強化と近代国家への萌芽
都市や商業の発展により、国王は新たな財源を得ることができました。
国王は都市のブルジョワジーと協力して中央集権化を進め、封建諸侯の力を抑え込みます。
これにより、フランスやイギリス、スペインなどで 近代国家の形成 が進展しました。
都市と王権の協調関係
王権は自治都市を保護し、都市住民から直接課税を行うことで安定した収入を得ました。
一方、都市側は国王から特権を与えられ、経済活動の自由度を高めることができました。
文化への影響とルネサンスの進展
経済的繁栄と文化の開花
フィレンツェやヴェネツィアなどの都市国家では、商業利益をもとに ルネサンス文化 が開花しました。
メディチ家などの豪商は芸術家や学者を保護し、ヨーロッパ文化史を大きく前進させました。
人文主義の広がり
都市の発展によって知識人や商人が集まり、書物や学問が普及しました。
こうした環境が、 人文主義(ヒューマニズム) の発展を後押しし、やがて宗教改革の思想的土台にもつながっていきます。
入試で狙われるポイント
- 商業発展が農奴制解体を促進した流れ
- ブルジョワジーと都市自治の役割
- 国王と都市の協力関係と王権強化
- 経済的繁栄がルネサンス文化を支えた事実
- 商業と思想・宗教改革との関連性
- 中世ヨーロッパにおける商業発展が封建社会と文化に与えた影響について、120〜150字で説明せよ。
-
商業の発展により農奴は都市に移動して自由民となり、封建社会の基盤は揺らいだ。商業資本を蓄えたブルジョワジーは王権と結びつき、中央集権化を推進した。また、フィレンツェやヴェネツィアの商業利益はルネサンス文化を支え、人文主義の発展を促進した。
第4章: 中世都市と商業の発展 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
商業発展によって農奴が都市へ移住し、自由民となった現象を何というか。
解答:農奴解放
問2
商業発展によって力をつけ、都市自治や政治に関与した都市富裕層を何と呼ぶか。
解答:ブルジョワジー
問3
王権が都市と協力して中央集権化を進めた背景にある財源を何というか。
解答:商業収入・都市税
問4
フィレンツェで銀行業を営み、ルネサンス文化を保護した豪商一族は誰か。
解答:メディチ家
問5
商業発展と文化開花の拠点となったイタリア都市国家を1つ挙げよ。
解答:ヴェネツィア、フィレンツェなど
問6
商業発展に伴って都市住民が獲得した特権を何というか。
解答:都市自治権
問7
都市の発展により中世末期に勢力を失った社会階層は何か。
解答:封建領主
問8
商業利益を背景に学問や芸術の発展を支えた思想を何というか。
解答:人文主義(ヒューマニズム)
問9
商業発展が思想や宗教に与えた影響の一例を挙げよ。
解答:宗教改革の思想的基盤を準備した
問10
ルネサンス文化を開花させた資金源となった経済活動は何か。
解答:遠隔地貿易・銀行業
正誤問題(5問)
問1
商業発展は農奴制を強化し、封建領主の権威を高めた。
解答:誤(農奴制を解体に向かわせた)
問2
ブルジョワジーは国王と協力し、中央集権化を推進した。
解答:正
問3
商業発展による都市の繁栄はルネサンス文化の開花に寄与した。
解答:正
問4
価格革命は封建領主の収入を増大させた。
解答:誤(貨幣価値下落で収入減)
問5
商業発展は宗教改革には影響を及ぼさなかった。
解答:誤(思想的基盤を提供した)
第5章 中世都市と商業発展の総まとめ|入試必勝ポイント整理
ここまで見てきたように、中世ヨーロッパの都市と商業の発展は、単なる経済史の話にとどまりません。
農業生産力の向上をきっかけに都市が復興し、広域的な商業圏が形成され、やがて大航海時代・商業革命を経て近代世界経済への扉が開かれました。
本章では、この記事全体を俯瞰しながら 入試で特に問われやすい知識 を体系的に整理します。
中世都市と商業発展の全体像
発展の流れ
- 第1段階:農業革命と都市復興(10〜11世紀)
三圃制・重量有輪犂 → 余剰生産物の増加 → 市場・定期市の活性化 → 自由都市の誕生 - 第2段階:国際商業圏の形成(12〜13世紀)
シャンパーニュ定期市・ハンザ同盟 → 南北ヨーロッパの経済圏接続 - 第3段階:大航海時代と商業革命(15〜16世紀)
大西洋交易への移行 → アメリカ銀流入 → 価格革命 → 資本主義萌芽 - 第4段階:社会・文化構造の変革(15〜16世紀)
農奴制解体 → ブルジョワジー台頭 → 王権強化 → ルネサンス・宗教改革への影響
重要語句まとめシート
区分 | キーワード | 説明 | 入試頻出度 |
---|---|---|---|
農業技術 | 三圃制 | 耕地を3分割し、冬・夏・休閑を輪作 | ★★★ |
重量有輪犂 | 重い粘土質土壌に適した鉄製の犂 | ★★★ | |
水車・風車 | 生産力向上の象徴 | ★★ | |
都市の発展 | 自由都市 | 領主権から独立して自治を行う都市 | ★★★ |
ギルド | 商人・手工業者組合、都市経済を統制 | ★★★ | |
国際商業圏 | シャンパーニュ定期市 | 南北交易の中継地 | ★★★ |
ハンザ同盟 | 北海・バルト海交易を独占 | ★★★ | |
大航海時代 | レヴァント交易 | 東方貿易の中継地 | ★★★ |
香辛料貿易 | 大航海時代の最大の目的 | ★★★ | |
商業革命 | 価格革命 | アメリカ銀流入による物価上昇 | ★★★ |
東インド会社 | 株式会社制度を導入した貿易会社 | ★★★ | |
証券取引所 | アムステルダム・ロンドンなど | ★★ | |
社会・文化 | ブルジョワジー | 商業活動で台頭した都市富裕層 | ★★★ |
ルネサンス | 経済的繁栄を背景に文化開花 | ★★★ | |
人文主義 | ルネサンスの思想的中心 | ★★★ |
入試で差がつくポイント
設立年を軸に時代を整理
- イギリス東インド会社:1600年
- オランダ東インド会社:1602年
用語の位置関係を地図で把握
- 北欧:ハンザ同盟、リューベック、ハンブルク
- 南欧:ヴェネツィア、ジェノヴァ、フィレンツェ
- 中継地:シャンパーニュ、ブリュージュ
→ 地図で商業圏の位置関係を覚えると、長文問題や論述で差がつきます。
学習戦略と活用法
知識の整理法
- 章ごとに「因果関係」で理解する
例:農業革命 → 都市復興 → 商業圏形成 → 商業革命 → 社会変革 - 用語暗記だけでなく 時代の流れ を意識する
問題演習の活用
この記事の各章末にある論述問題・一問一答・正誤問題を、最低3周 回すことで、用語と流れの両方を定着できます。
まとめ
中世ヨーロッパにおける都市と商業の発展は、封建社会から近代国家・世界経済への転換点となった重要なテーマです。
単語暗記にとどまらず、「農業生産力 → 都市復興 → 商業拡大 → 商業革命 → 社会・文化変革」という大きな因果関係をつかむことで、論述問題にも強くなります。

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