大学受験の世界史では、「コロンブス交換(Columbian Exchange)」は頻出テーマの一つです。
ただし、単に「作物や家畜が新大陸と旧大陸の間でやりとりされたこと」という知識だけでは、資料問題や論述問題で得点を伸ばすことはできません。
重要なのは、この現象が1492年のコロンブス航海をきっかけに始まった「世界史的な大転換」だったという点です。
ジャガイモやトマトがヨーロッパへ伝わったことはもちろん大切ですが、それだけでは不十分。疫病の流入、奴隷貿易の拡大、人口構造の変化、植民地経済の形成など、世界規模で連鎖的に起きた社会変動を理解してこそ、入試で差がつきます。
特に最近の大学入試では次のような出題傾向があります:
- 図や表を使ってコロンブス交換の流れを読み取らせる問題
- 食料・人口・経済構造への影響を問う問題
- 三角貿易や産業革命と絡めた論述問題
この記事では、コロンブス交換を 「なぜ起きたのか」→「何が動いたのか」→「どう世界を変えたのか」 という流れで詳しく解説します。
背景から丁寧に押さえることで、用語暗記にとどまらない理解型学習に近づけます。
第1章 コロンブス交換とは? ― 大航海時代の文脈でつかむ
大学受験で「コロンブス交換(Columbian Exchange)」という用語は頻繁に登場します。
しかし、単に「作物や家畜が新大陸と旧大陸の間で交換されたこと」と覚えるだけでは、入試で高得点を取るのは難しいです。
本質を理解するためには、大航海時代という歴史的背景と、そこから生まれた世界規模の社会変動まで視野を広げる必要があります。
この章では、まず「コロンブス交換」という言葉の意味を整理し、大航海時代とのつながり、そして現象の本質に迫ります。
コロンブス交換を理解する前提として、大航海時代の知識は必須です。
1-1. 「コロンブス交換」という言葉の意味
「コロンブス交換(Columbian Exchange)」とは、1492年のコロンブスによるアメリカ大陸到達をきっかけに、旧大陸(ヨーロッパ・アジア・アフリカ)と新大陸(アメリカ)の間で、作物・家畜・病原菌・技術・文化などが大規模にやりとりされた現象を指します。
この概念は、1972年に歴史学者アルフレッド・W・クロスビー(Alfred W. Crosby)が著書『The Columbian Exchange』で提唱した比較的新しい学説です。
しかし、大学入試世界史では、用語そのものだけでなく、大航海時代から始まる世界規模の変化を説明するためのキーワードとして頻出しています。
1-2. 大航海時代との関係 ― 世界の一体化の始まり
コロンブス交換は、大航海時代の動きと切り離して理解することはできません。
15世紀後半、ヨーロッパ諸国は「アジアへの新航路」を求めて海洋進出を進めていました。
オスマン帝国が東地中海貿易を支配していたため、香辛料市場へ直接アクセスするためには、新たな航路を開拓する必要があったのです。
・1492年:コロンブス(スペイン)がアメリカ大陸に到達
・1494年:スペインとポルトガルが勢力圏を分割する「トルデシリャス条約」締結
・1498年:ヴァスコ=ダ=ガマ(ポルトガル)がインド航路を開拓
この一連の動きによって、ヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカが初めて直接つながることになります。
つまり、大航海時代は「世界史の一体化」が始まった転換点であり、コロンブス交換はその象徴的な現象として位置づけられます。
1-3. コロンブス交換の本質 ― 物質だけでなく「人・病原菌・文化」も動いた
高校世界史の教科書では、コロンブス交換を「作物や家畜の移動」として図解で示すことが多いですが、本質を理解するには、人口・病原菌・宗教・価値観といった非物質的な側面にも目を向ける必要があります。
① モノの移動
- 新大陸 → 旧大陸:ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、カカオ、タバコ
- 旧大陸 → 新大陸:馬、牛、豚、小麦、ブドウ、サトウキビ
② 人の移動
- 新大陸の先住民は疫病や過酷な労働で激減
- 労働力不足を補うため、アフリカから奴隷が大量移送されるようになる
③ 病原菌の移動
- 天然痘・麻疹などの旧大陸由来の病原菌が新大陸で猛威を振るい、アステカ帝国やインカ帝国では人口の約90%が失われたとされます
④ 文化・宗教の移動
- キリスト教布教の進展
- ヨーロッパ的価値観・技術・政治制度の導入
つまり、コロンブス交換は単なる「農産物のやりとり」ではなく、
人口構造・経済体制・文化価値観までも変えてしまった、世界史規模の現象なのです。
1-4. 大学入試での出題傾向
コロンブス交換は世界史Bの大学入試で頻出ですが、出題形式は単純な一問一答にとどまりません。
近年は因果関係や複数地域を絡めた出題が増えており、以下の3パターンで出ることが多いです。
① 一問一答形式
コロンブス交換によって旧大陸にもたらされた作物を次から選べ。
→ 正解例:ジャガイモ・トマト・トウモロコシなど
② 正誤問題形式
コロンブス交換により、馬や牛は新大陸から旧大陸へ伝わった。
→ ×(逆なので要注意)
③ 論述・資料問題形式
コロンブス交換がヨーロッパ経済・アメリカ先住民社会に与えた影響を説明せよ。
このように、単語暗記だけでは対応できず、世界規模での因果関係を理解することが重要です。
まとめ
第1章では、コロンブス交換の定義と背景を押さえ、単なる作物・家畜の移動にとどまらない現象であることを確認しました。
- コロンブス交換とは、大航海時代を背景にした世界規模の交換現象
- 作物・家畜だけでなく、人・病原菌・文化・宗教も動いた
- 世界史入試では、因果関係や複数地域を絡めた出題が増加傾向
次章では、具体的にどのような作物・家畜・病原菌がやり取りされ、それが各大陸にどんな影響を及ぼしたのかを詳しく見ていきます。
第2章 コロンブス交換で移動したモノたち【作物・家畜・病原菌】
コロンブス交換を深く理解するためには、まず「何が、どこからどこへ移動したのか」を正確に把握することが欠かせません。
大学入試では、「作物や家畜の移動」を一問一答で問う問題もありますが、それ以上に、その移動が人口構造や経済体制、社会変動にどのようにつながったかまで説明できるかどうかが得点差を生むポイントです。
この章では、新大陸から旧大陸、旧大陸から新大陸への物資や家畜の流れに加えて、疫病の拡大や人口移動など、コロンブス交換が世界をどう変えたかを具体的に整理します。
2-1. 新大陸 → 旧大陸:ヨーロッパを変えた「新しい作物」
コロンブスの航海以降、アメリカ大陸で栽培されていた作物がヨーロッパやアジアへ伝わり、食文化や人口動態に大きな変化をもたらしました。
特に ジャガイモとトウモロコシは、大学入試で頻出のテーマです。
作物 | 主な伝播先 | 世界史的影響 |
---|---|---|
ジャガイモ | ヨーロッパ全域(特にアイルランド・ドイツ・ロシア) | 高カロリー・栽培効率の高さ → 人口爆発を支える |
トウモロコシ | ヨーロッパ・アフリカ・中国 | 乾燥に強く、アフリカや中国南部の人口増加に寄与 |
トマト | 南欧から北欧へ拡大 | イタリア料理・フランス料理など、食文化に革命 |
カカオ | ヨーロッパ | チョコレート文化の形成 |
タバコ | ヨーロッパ・アジア | 社会文化的影響が大きく、植民地経済の重要産品に |
特にジャガイモの影響は大きく、18世紀以降のヨーロッパでは「人口急増 → 都市労働力の供給 → 産業革命の推進」という歴史的流れを支えました。
一方で、アイルランドのジャガイモ飢饉(1845〜1849年)では、飢餓に苦しんだ人々が大量移民として北米に渡るなど、世界人口移動の一因ともなりました。
2-2. 旧大陸 → 新大陸:ヨーロッパがもたらした「家畜と作物」
一方で、ヨーロッパからアメリカ大陸に伝わった家畜や作物は、先住民社会や植民地経済を根本から変革しました。
家畜・作物 | 新大陸での影響 | 入試での狙われ方 |
---|---|---|
馬 | 北米・南米で先住民文化を変革。狩猟・戦闘能力が飛躍的に向上。 | 「馬は旧大陸→新大陸」が正解 |
牛・豚・羊 | 新大陸で牧畜業を発展させる。アルゼンチンの牛肉産業の基盤に。 | 植民地経済史で頻出 |
小麦・ブドウ | 新大陸農業の多様化に寄与。 | ヨーロッパ型農業の伝播として出題 |
サトウキビ | カリブ海・ブラジルでプランテーション農業の中心作物に。 | 大西洋三角貿易とセットで問われる |
特にサトウキビは重要です。
新大陸でのサトウキビ栽培は大規模プランテーションを発展させ、その労働力確保のため、アフリカ奴隷貿易が拡大しました。
つまり、コロンブス交換は作物の移動にとどまらず、世界経済の再編成を促す起点になったのです。
2-3. 病原菌の移動:先住民社会を崩壊させた「見えない侵略者」
コロンブス交換がもたらした最も劇的な変化のひとつが、病原菌の移動です。
・天然痘・麻疹・インフルエンザなどの旧大陸由来の病原菌が新大陸に流入
・免疫を持たなかった先住民社会では壊滅的な被害が発生
・アステカ帝国・インカ帝国では人口の約90%が失われたとされる
これにより、ヨーロッパによる征服は武力だけでなく、疫病の拡大によって容易になったとも言えます。
近年の入試では、「天然痘流行が征服に与えた影響」など、因果関係を問う問題が増加しています。
2-4. 人口移動とアフリカ奴隷貿易への接続
先住民人口の激減により、新大陸では深刻な労働力不足が発生しました。この不足を補うため、アフリカから大量の奴隷が移送されるようになります。
この流れは、やがて大西洋三角貿易へとつながっていきます。
大西洋三角貿易の流れ
- ヨーロッパ → アフリカ:武器・工業製品を輸出
- アフリカ → 新大陸:奴隷を移送
- 新大陸 → ヨーロッパ:サトウキビ・綿花・タバコなどを輸出
このように、コロンブス交換は単なる物質的交換を超え、ヨーロッパ・アメリカ・アフリカを結ぶ国際経済システムの基盤を作り出したのです。
まとめ
第2章では、コロンブス交換による作物・家畜・病原菌・人口移動を整理しました。
重要なのは、「何がどこからどこへ移動したか」だけでなく、その結果として世界がどう変わったのかまで理解することです。
- 新大陸作物 → ヨーロッパ・アジアで人口増加
- 旧大陸家畜・作物 → 新大陸でプランテーション農業発展
- 病原菌の移動 → 先住民社会の崩壊
- 労働力不足 → アフリカ奴隷貿易・三角貿易の拡大
次章では、これらの変化が世界各地域に与えた長期的な影響をさらに深掘りします。
第3章 コロンブス交換が世界に与えた長期的影響
コロンブス交換は、単なる「作物や家畜のやりとり」にとどまらず、人口・経済・社会・文化といったあらゆる側面で世界に長期的な影響を与えました。
大学入試では、この「長期的変化」を複数地域にわたって説明させる問題が増えており、一問一答よりも、因果関係を意識した理解が重要です。
この章では、ヨーロッパ・アメリカ・アフリカ・アジアそれぞれへの影響を整理し、最後に大学入試の論述対策として視点をまとめます。
3-1. ヨーロッパへの影響:人口増加と商業資本主義の発展
新大陸から伝わった作物や産品は、ヨーロッパ社会を大きく変えました。
① 新大陸作物による人口増加
- ジャガイモ・トウモロコシなどの高カロリー作物が普及
- 17世紀以降のヨーロッパ人口急増を支える基盤となる
- 特に18〜19世紀、産業革命期の都市労働力供給に直結
② 植民地産品と商業資本主義の発展
- サトウキビ・綿花・タバコなどの換金作物がヨーロッパに流入
- 植民地経済の発展により、商業資本主義が加速
- 新大陸から流入した銀(ポトシ銀山など)が国際貿易を活発化させる
3-2. アメリカ大陸への影響:先住民社会の崩壊と植民地経済の形成
新大陸では、コロンブス交換をきっかけに社会構造が根本から変わりました。
① 疫病による人口激減
- 天然痘・麻疹などの旧大陸由来の病原菌が流入
- 免疫を持たない先住民社会では壊滅的被害
- アステカ帝国・インカ帝国では人口の約90%が失われたとされる
② プランテーション農業と奴隷制の定着
- サトウキビ・タバコ・綿花など換金作物の大規模栽培が始まる
- 労働力不足を補うため、アフリカから奴隷を大量移送
- 新大陸社会は、植民地経済+奴隷制を基盤とする体制に再編
3-3. アフリカへの影響:奴隷貿易と社会不安
アフリカは、コロンブス交換による世界経済再編の中で大きな影響を受けた地域です。
- 大西洋奴隷貿易の拡大
→ 16〜19世紀にかけ、約1,000万人以上が新大陸へ強制移送 - 人口減少と社会不安の拡大
→ 労働人口流出、内戦、社会構造の混乱 - 新大陸作物の導入による一部人口増加
→ トウモロコシやキャッサバの導入が食料問題を部分的に改善
3-4. アジアへの影響:銀と新大陸作物の流入
アジアもコロンブス交換によって大きな影響を受けました。
- 新大陸銀の流入
→ スペインを経由した大量の銀が中国へ流入
→ 明の「一条鞭法」(16世紀後半)で銀納税制度が確立
→ アジア経済の安定化に寄与 - 新大陸作物の導入
→ サツマイモ・トウモロコシなどが中国南部・東南アジアへ広まり、人口増加を支える
アジア史を含む大学入試問題では、
「新大陸銀が中国経済に与えた影響」を説明させる問題が増えています。
3-5. 大学入試で狙われる論述視点
コロンブス交換を素材とした論述問題では、複数地域のつながりを横断的に説明できるかが鍵です。
頻出例題
解答の骨子
- ヨーロッパ:新大陸作物 → 人口増加 → 資本蓄積
- アメリカ:疫病流入 → 先住民社会崩壊 → プランテーション・奴隷制
- アフリカ:奴隷貿易拡大 → 人口移動・社会不安
- アジア:新大陸銀の流入 → 経済安定、一条鞭法の背景
まとめ
第3章では、コロンブス交換がもたらした世界的規模の長期的変化を整理しました。
- ヨーロッパ:人口増加・資本主義の発展
- アメリカ:先住民社会の崩壊・植民地経済形成
- アフリカ:奴隷貿易・人口移動・社会変動
- アジア:銀と作物の流入による経済と人口増加
大学入試では、こうした複数地域のつながりを横断的に説明できるかが得点の分かれ目です。
次章では、コロンブス交換をテーマにした図・地図問題の攻略法を詳しく解説します。
第4章 よく出る図解・地図問題の攻略
大学入試の世界史では、近年「図や地図を使った出題」が増加しています。
コロンブス交換に関しても、作物・家畜・病原菌の移動を示した地図や、人口変動を示すグラフを用いた資料問題が頻出です。
単なる暗記ではなく、矢印の方向や影響の広がりを正しく読み取る力が求められます。この章では、地図問題で出題されやすいポイントを整理し、資料問題を攻略するための視点を身につけましょう。
4-1. 作物・家畜・病原菌の移動図を読み解く
コロンブス交換の資料問題では、矢印で示された移動方向を正確に理解しているかがカギです。
以下は、教科書や資料集に載っている代表的な項目です。
① 新大陸 → 旧大陸
- 作物:ジャガイモ、トウモロコシ、トマト、カカオ、タバコ
- 影響:ヨーロッパ・アジア・アフリカの人口増加や食文化の変化を促進
② 旧大陸 → 新大陸
- 家畜:馬、牛、豚、羊
- 作物:小麦、ブドウ、サトウキビ
- 影響:新大陸で牧畜業やプランテーション農業が発展
③ 病原菌の移動
- 天然痘・麻疹・インフルエンザなどの旧大陸由来の病原菌が新大陸へ
- アステカ・インカ帝国の人口が激減し、植民地化を容易にした
地図問題では、特に「矢印の向きを逆にするひっかけ問題」が頻出です。
たとえば「馬は新大陸から旧大陸へ伝わった」といった誤りを見抜けるかが得点差になります。
4-2. 人口変動グラフから読み取る視点
コロンブス交換を扱う資料問題では、人口変動や奴隷貿易の移送数を示すグラフがよく出題されます。
数字を暗記する必要はありませんが、原因と結果を言葉で説明できるかが問われます。
① アメリカ先住民人口の激減
- グラフでは、1492年以降の急激な人口減少が顕著
- 原因:天然痘・麻疹などの疫病、過酷な労働、戦争
- 結果:アステカ・インカ帝国の崩壊、植民地支配の加速
② アフリカ奴隷貿易の影響
- 棒グラフで示されることが多いのが、16〜19世紀の奴隷移送数
- アフリカから新大陸へ移送される人口が増加する一方で、
アフリカ内部では人口減少と社会不安が拡大
4-3. 地域別の影響を地図で整理する
地域ごとの影響を地図上でイメージすると、複数地域を絡めた資料問題や論述問題に強くなります。
地域 | 受けた影響 | 入試で狙われやすい視点 |
---|---|---|
ヨーロッパ | 新大陸作物で人口増加 植民地産品・銀による資本蓄積 | 産業革命との接続 |
アメリカ | 疫病で先住民社会崩壊 プランテーション農業・奴隷制の定着 | アステカ・インカ帝国の崩壊 |
アフリカ | 奴隷貿易による人口流出と社会不安 新大陸作物導入による一部人口増加 | 大西洋三角貿易 |
アジア | 新大陸銀の流入 トウモロコシ・サツマイモ導入による人口増加 | 中国の一条鞭法と人口爆発 |
この表を覚えておくと、地図問題だけでなく論述問題の骨子作りにも活用できます。
4-4. 資料問題の攻略法
コロンブス交換は、単なる用語暗記では解けない「資料読解型問題」で狙われやすいです。
次の3ステップで考える癖をつけると、得点率が上がります。
- 矢印・図の向きを正確に把握する
→ 何がどこからどこへ動いたかを瞬時に答えられることが前提 - 原因と結果をつなげて説明する
→ 例:疫病流入 → 先住民人口激減 → 植民地支配加速 - 複数地域を横断的に結びつける
→ 例:サトウキビ → プランテーション → 奴隷貿易 → 資本主義発展
この3つを意識すれば、共通テストや難関大の資料問題にも対応できます。
まとめ
第4章では、大学入試で頻出する図・地図・資料問題の攻略法を整理しました。
- 作物・家畜・病原菌の移動方向を正しくイメージする
- 人口変動グラフは「原因と結果」で読み解く
- 地域ごとの影響をまとめることで、論述問題にも応用可能
- 矢印・数字・因果関係を結びつける力が得点力に直結
次章では、コロンブス交換が大学入試でどのように問われるか、一問一答・正誤問題・資料問題・論述問題の形式別に具体例を挙げて解説します。
第5章 大学入試問題での出題パターンと攻略法
コロンブス交換は大学入試世界史で頻出のテーマです。
しかし、単に「ジャガイモは新大陸から旧大陸へ」といった一問一答だけでは得点できません。近年の入試では、資料問題・論述問題での出題が増加しており、作物や家畜の移動にとどまらず、人口・経済・社会への影響を含めた理解が求められます。
この章では、出題形式ごとの特徴と具体例を示しながら、効率的な学習法を紹介します。
5-1. 一問一答形式:基本知識を確実に押さえる
最初に押さえるべきは、作物・家畜・病原菌の移動方向です。
基礎知識として暗記しておかないと、正誤問題や資料問題にも対応できません。
頻出例題
- ジャガイモ・トマト → 新大陸 → 旧大陸
- 小麦・サトウキビ → 旧大陸 → 新大陸
5-2. 正誤問題形式:ひっかけパターンを攻略
正誤問題では、移動方向を逆にしたひっかけが頻出です。地図の矢印をイメージできるかどうかで正答率が大きく変わります。
頻出例題
5-3. 資料問題形式:原因と結果を読み解く力がカギ
最近の大学入試では、人口変動グラフや作物の移動地図を提示する資料問題が増えています。数字を暗記する必要はありませんが、因果関係を言葉で説明できるかが問われます。
頻出例題
5-4. 論述問題形式:複数地域を横断する力を鍛える
難関大では、コロンブス交換を素材に世界規模の変化を説明する論述問題がよく出題されます。
単発的な知識ではなく、複数地域をつなぐ因果関係を意識することが必要です。
頻出例題
解答の骨子
- ヨーロッパ:新大陸作物導入 → 人口増加 → 資本蓄積
- アメリカ:疫病で先住民社会崩壊 → 植民地化・プランテーション農業
- アフリカ:奴隷貿易拡大 → 人口流出・社会不安
- アジア:新大陸銀流入 → 一条鞭法導入・人口増加
5-5. 学習ステップと過去問活用法
コロンブス交換対策は、以下の3ステップで進めると効率的です。
- 基礎固め
→ 作物・家畜・病原菌の移動方向を暗記 - 資料問題対策
→ 地図・グラフを使い、原因と結果を説明する練習 - 論述対策
→ 地域ごとの影響をつなげて、世界規模の変化をまとめる
最後は志望校の過去問演習で総仕上げを行うと、得点力が一気に高まります。
まとめ
第5章では、大学入試での出題形式別対策を整理しました。
- 一問一答:作物・家畜・病原菌の移動方向を正確に覚える
- 正誤問題:逆パターンで問われやすいので、矢印イメージで覚える
- 資料問題:数字ではなく「原因と結果」で読み解く
- 論述問題:複数地域を横断して因果関係を説明する力を鍛える
次章では、コロンブス交換を「世界史のハブ」として位置づけ、大航海時代から産業革命までの世界史的つながりを総まとめします。
第6章 コロンブス交換は「世界史のハブ」
コロンブス交換は、大航海時代の一現象にとどまらず、世界経済・人口構造・社会体制を根本から変えた歴史的転換点です。
大学入試では、「ジャガイモがヨーロッパに渡った」という単発知識だけではなく、世界史全体のつながりの中で位置づけられるかが問われることが多いです。
この章では、コロンブス交換を「世界史のハブ」として捉え、大航海時代から産業革命へ至る長期的流れを整理します。
6-1. 大航海時代から産業革命へ ― 世界の一体化の起点
15〜16世紀の大航海時代は、世界の一体化をもたらした歴史的な転換点でした。
コロンブス交換は、その象徴的な現象です。
① 大航海時代の始まり
- 1492年:コロンブスがアメリカ大陸へ到達
- 1498年:ヴァスコ=ダ=ガマがインド航路を開拓
- 16世紀以降:スペイン・ポルトガルを中心に、アジア・アフリカ・アメリカが直接結ばれる
② 世界経済の再編
- 新大陸作物の導入 → ヨーロッパ・アジアの人口増加
- 新大陸銀の流入 → 中国・インドなどアジア経済に影響
- プランテーション農業 → アフリカ奴隷貿易の拡大
③ 産業革命への接続
- ヨーロッパでは人口増加と資本蓄積が進み、
18世紀後半に産業革命が加速 - 植民地は原材料供給地・消費市場としての役割を強める
6-2. 地域別に見た長期的影響まとめ
コロンブス交換は、一地域だけでなく複数大陸を同時に変えた現象です。
大学入試では、各地域の影響をつなげて説明できると高得点につながります。
地域 | 受けた影響 | 世界史的つながり |
---|---|---|
ヨーロッパ | ジャガイモ・トウモロコシ導入 → 人口増加 植民地産品・銀で資本蓄積 | 産業革命・資本主義形成 |
アメリカ | 疫病流入で先住民社会崩壊 プランテーション農業と奴隷制が定着 | 植民地経済・三角貿易 |
アフリカ | 奴隷貿易による人口流出と社会不安 新大陸作物導入による一部人口増加 | 植民地支配・近代アフリカ史 |
アジア | 新大陸銀の大量流入 サツマイモ・トウモロコシ導入で人口増加 | 中国の一条鞭法・清朝人口爆発 |
この表を活用すると、世界全体を一枚の図として把握でき、論述問題の骨子作りにも役立ちます。
6-3. 論述問題で差がつく「世界の一体化」視点
コロンブス交換をテーマにした難関大の論述問題では、複数地域を横断し、世界規模での因果関係を説明できるかが鍵となります。
6-4. 効率的な復習法
コロンブス交換は、用語暗記だけでは対応できません。複数地域をつなげた「理解型学習」が必要です。
① 図解で全体像を把握
- 作物・家畜・病原菌・人口移動を一目で整理
- 資料集や自作ノートで矢印図を作ると効果的
② 因果関係でつなげる
- 疫病 → 先住民激減 → 植民地化
- 新大陸作物 → ヨーロッパ人口増加 → 産業革命
- サトウキビ → プランテーション → 奴隷貿易 → 資本主義発展
③ 過去問で実戦力を鍛える
- 共通テスト対策では地図・グラフ問題を優先
- 難関大は論述問題で地域横断型の解答を意識
まとめ
コロンブス交換は、世界史の一体化を象徴する出来事です。
- 大航海時代 → 世界経済の再編 → 産業革命への流れを理解
- ヨーロッパ・アメリカ・アフリカ・アジアの複数地域を結ぶ視点が重要
- 資料問題・論述問題では、因果関係を世界規模で説明できるかが得点の分かれ目
この章までをしっかり理解すれば、コロンブス交換関連の問題は一問一答から論述まで自信を持って対応できます。
コメント