16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパ社会は大きな変革期を迎えました。
中世の封建的な農業中心社会から、世界規模の交易を基盤とした「近代経済」へと移行する、その転換点の中心にあったのが商業資本主義です。
「商業資本主義」という言葉は世界史の教科書でも頻出しますが、受験生の多くが「重商主義や産業資本主義との違いが分かりにくい」と感じています。そして、なんとなく表面的な意味が分かったような気がして、簡単に流してしまう受験生が多いです。
さらに、大航海時代や価格革命と深く関係するため、単独で暗記するのではなく、ヨーロッパ世界経済全体の流れの中で理解することが重要です。
本記事では、
- 商業資本主義の定義と特徴
- 大航海時代・価格革命とのつながり
- 重商主義や産業資本主義への発展
- 大学入試で狙われる論述・正誤問題の頻出ポイント
を体系的に解説します。
読み終える頃には、単なる用語暗記ではなく、世界経済史の大きな流れを掴めるはずです。
第1章 商業資本主義とは何か
商業資本主義とは、「商業活動を通じて利潤を追求する経済体制」を指します。
農業や手工業ではなく、遠隔地貿易・金融・投資など、商業そのものから利益を得る仕組みが中心でした。
この経済体制が生まれた背景には、大航海時代の新航路開拓やアメリカ大陸からの銀の大量流入があります。
中世ヨーロッパでは「ギルド」による生産と地域内の市場が中心でしたが、16世紀以降はヨーロッパ・アジア・アメリカ・アフリカを結ぶ大規模な貿易網が形成され、商業資本家たちが莫大な富を蓄積するようになります。
ここでは、まず商業資本主義の定義や時代背景、特徴を整理します。
商業資本主義の定義
商業資本主義とは、生産活動ではなく商業活動を通じて利潤を追求する経済体制です。
- 中心となる主体:商人・金融業者・貿易商人
- 利潤の源泉:商品の売買差益・遠隔地貿易・投資
- 生産活動との違い:自らは生産に従事せず、商業活動に特化
この点で、後に登場する産業資本主義(工場生産に投資して利潤を得る体制)とは明確に異なります。
大学入試では、「商業資本主義 → 重商主義 → 産業資本主義」という流れを整理することが重要です。
時代背景:中世から近代への転換
商業資本主義が発展したのは、中世的経済秩序の崩壊と新しい世界貿易の出現が重なったためです。
(1) 中世的なギルド経済からの脱却
- 中世ヨーロッパでは、生産・販売をギルド(同業組合)が厳しく統制していました。
- しかし、ギルドは地域的な市場しか想定しておらず、大規模な国際貿易には不向きでした。
- 新大陸発見後、ヨーロッパ経済は地中海世界から大西洋世界へシフトし、ギルド経済は急速に時代遅れとなります。
(2) 大航海時代による新航路開拓
- 15世紀後半から始まった大航海時代は、インド航路・アメリカ大陸・アフリカ西岸を結ぶ新たな貿易ルートを開きました。
- とくにスペインとポルトガルが先行し、16世紀にはオランダ・イギリスが台頭します。
- 遠隔地貿易による高利益が、商業資本主義を急速に発展させました。
(3) アメリカ大陸からの銀の大量流入
- ポトシ銀山(ボリビア)などからの膨大な銀がヨーロッパに流入。
- この銀はアジア貿易の決済にも使われ、ヨーロッパ経済を地球規模へ拡張する原動力となりました。
商業資本主義の特徴
(1) 遠隔地貿易の拡大
- 香辛料・砂糖・銀など、高付加価値商品を中心とした貿易。
- アジア・アフリカ・アメリカを結ぶ大西洋三角貿易が形成。
(2) 金融資本の台頭
- 貿易には莫大な資本が必要だったため、アムステルダムやアントワープなどの都市で金融市場が発展。
- 両替商や金融業者が資本家階級として台頭します。
(3) 商業都市の繁栄
- アントワープ(16世紀)、アムステルダム(17世紀)、ロンドン(18世紀)などが国際商業の中心都市に。
入試で狙われるポイント
- 商業資本主義の定義
→ 生産ではなく商業活動からの利潤追求 - 大航海時代との関連
→ 新航路開拓・遠隔地貿易・銀流入が商業資本主義を促進 - 産業資本主義との違い
→ 商業資本主義は「取引中心」、産業資本主義は「生産中心」 - 頻出論述テーマ
「16〜17世紀における商業資本主義の発展がヨーロッパ社会に与えた影響を、大航海時代と価格革命に触れながら説明せよ。」
- 16〜17世紀における商業資本主義の発展がヨーロッパ社会に与えた影響を、大航海時代と価格革命に触れながら説明せよ。
-
16〜17世紀、大航海時代により香辛料・銀などの遠隔地貿易が拡大し、商業活動から利潤を追求する商業資本主義が発展した。アメリカ大陸のポトシ銀山などから大量の銀が流入し、価格革命を引き起こして物価が上昇すると、遠隔地貿易を担う商業資本家や金融業者は巨額の利益を得て台頭した。一方、賃金の上昇が物価に追いつかず農民や都市労働者は困窮し、封建的農奴制は衰退した。こうしてヨーロッパ社会は貨幣経済化が進み、近代的経済構造への転換が進んだ。
第1章:商業資本主義 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10題)
問1
商業資本主義とは、主にどのような活動を通じて利潤を追求する経済体制か。
解答:商業活動(貿易・投資・金融)
問2
商業資本主義の中心となった主体は誰か。
解答:商人・金融業者・貿易商人
問3
商業資本主義と産業資本主義の違いを簡潔に述べよ。
解答:商業資本主義は商業活動から利潤を得るのに対し、産業資本主義は生産活動から利潤を得る。
問4
中世ヨーロッパで生産や販売を統制していた組織を何というか。
解答:ギルド
問5
商業資本主義が発展する契機となった、15世紀末から始まる大規模な航海活動を何というか。
解答:大航海時代
問6
16世紀以降、遠隔地貿易の拡大によって大きく発展した商業都市を1つ挙げよ。
解答:アントワープ(またはアムステルダム、ロンドンでも可)
問7
ヨーロッパに大量の銀が流入した原因となった、現在のボリビアにある大銀山はどこか。
解答:ポトシ銀山
問8
大航海時代の進展で、ヨーロッパ経済の中心は地中海世界からどこへ移動したか。
解答:大西洋世界
問9
商業資本主義の発展に伴い、国家や商人が海外進出を強化する中で設立された貿易会社を何というか。
解答:東インド会社
問10
遠隔地貿易により台頭した資本家階級は、後に何と呼ばれるか。
解答:ブルジョワジー(市民階級)
正誤問題(5題)
問11
商業資本主義は、生産活動を通じて利潤を得ることを目的とする経済体制である。
解答:誤(商業活動を通じて利潤を得る)
問12
16世紀以降、商業資本主義の発展に伴い、ヨーロッパ経済の中心は次第に大西洋沿岸へ移っていった。
解答:正
問13
商業資本主義は、封建社会の安定を強化し、農奴制をより固定化した。
解答:誤(商業資本主義は貨幣経済を拡大させ、農奴制の衰退を促した)
問14
遠隔地貿易の拡大は、商業資本家の台頭と金融市場の発展を促した。
解答:正
問15
商業資本主義の発展により、アジア・アフリカ・アメリカを結ぶ世界規模の交易ネットワークが形成された。
解答:正
第2章 大航海時代と商業資本主義の発展
商業資本主義は、大航海時代の到来と切り離しては語れません。
15世紀後半から16世紀にかけて、スペイン・ポルトガルを中心としたヨーロッパ諸国は、新航路を求めてアフリカ・アジア・アメリカへと進出しました。
この大航海時代によって、ヨーロッパはそれまで閉じた地中海経済圏から脱却し、世界規模の貿易ネットワークを築きます。
とくに、アメリカ大陸の発見やアジア貿易の拡大は、莫大な利益を生み出し、商業資本家たちが巨額の富を蓄積するきっかけとなりました。
ここでは、大航海時代と商業資本主義の関係を、交易の仕組みと貿易の中心地の変遷を通して整理します。
大航海時代が商業資本主義を加速させた理由
(1) 香辛料貿易と莫大な利潤
- 中世ヨーロッパでは、アジア産の胡椒・ナツメグ・クローブなどの香辛料は極めて高価でした。
- 15世紀末まで香辛料貿易はイタリア商人(ヴェネツィア商人)が独占していましたが、オスマン帝国の台頭により地中海経路が不安定化。
- スペイン・ポルトガルはインド航路やアメリカ航路を切り開き、香辛料を直接輸入することで、巨大な利益を獲得。
- この香辛料貿易こそ、商業資本主義の資本蓄積を促進した最大の要因のひとつです。
(2) アメリカ大陸の発見と銀の大量流入
- コロンブスのアメリカ大陸到達(1492年)を皮切りに、スペインは新大陸で膨大な銀山を発見。
- 特にポトシ銀山(現ボリビア)は世界最大級で、16世紀中だけでヨーロッパに約1万8千トンの銀が流入。
- 銀はアジア貿易の決済にも用いられ、ヨーロッパ商人の手元を経由して中国・インドなどへ流れ込みました。
- この銀の大量流入は価格革命を引き起こし、商業資本主義のさらなる発展を後押ししました。
(3) 大西洋三角貿易の形成
- 17世紀以降、オランダ・イギリス・フランスが加わり、大西洋貿易ネットワークが完成。
- 代表的な構造は以下の通り: 出発地輸出品輸入品ヨーロッパ繊維製品・銃器砂糖・綿花アフリカ奴隷製品アメリカ砂糖・綿花・コーヒー奴隷
- 特に奴隷貿易は莫大な利益を生み、商業資本の蓄積に大きく貢献しました。
商業都市の変遷と国際金融の発展
大航海時代以降、国際貿易の中心は地中海から大西洋へと移動します。
(1) アントワープの繁栄(16世紀)
- スペイン領ネーデルラントの中心都市。
- アメリカ銀の流通拠点として繁栄し、「世界の倉庫」と呼ばれる。
(2) アムステルダムの台頭(17世紀)
- オランダ東インド会社(1602年設立)の本拠地。
- 世界初の株式会社制度と証券取引所を設立。
- 「17世紀=オランダの時代」と呼ばれる所以。
(3) ロンドンの支配(18世紀)
- イギリス東インド会社(1600年設立)がインド・東南アジアの貿易を独占。
- イギリスは産業革命前夜に、すでに国際金融・貿易の中心地となっていました。
入試で狙われるポイント
- 大航海時代と商業資本主義の関係
→ 新航路開拓による香辛料貿易の拡大が、資本蓄積を加速。 - 銀の大量流入と価格革命
→ ポトシ銀山などから流入した銀は、ヨーロッパ経済を変革し、商業資本主義の発展を後押し。 - 三角貿易の意義
→ ヨーロッパ・アフリカ・アメリカを結ぶ交易ネットワークが形成され、商業資本家が台頭。 - 国際商業都市の変遷
→ 16世紀アントワープ → 17世紀アムステルダム → 18世紀ロンドン - 頻出論述テーマ
「大航海時代がヨーロッパ経済に与えた影響を、香辛料貿易・銀の流入・商業資本主義の発展に触れて説明せよ。」
- 大航海時代がヨーロッパ経済に与えた影響を、香辛料貿易・銀の流入・商業資本主義の発展に触れて説明せよ。(180字程度)
-
15世紀末からの大航海時代により新航路が開拓され、ヨーロッパはアジア産の香辛料を直接入手し、遠隔地貿易で巨額の利益を得た。さらに、アメリカ大陸のポトシ銀山などから大量の銀が流入し、価格革命を引き起こしてヨーロッパ経済を活性化させた。これにより商業活動から利潤を追求する商業資本主義が発展し、商人や金融業者が台頭した結果、貨幣経済が進展し、ヨーロッパ経済は地中海中心から大西洋中心へ転換した。
第2章:商業資本主義 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10題)
問1
15世紀末以降、インド航路を開拓し香辛料貿易を独占した国を2つ挙げよ。
解答:ポルトガル、スペイン
問2
1492年にアメリカ大陸に到達した航海者は誰か。
解答:コロンブス
問3
ポルトガル人が1498年にインド航路を開拓した航海者は誰か。
解答:ヴァスコ=ダ=ガマ
問4
ヨーロッパに大量の銀を供給した、現在のボリビアにある大銀山はどこか。
解答:ポトシ銀山
問5
大航海時代以降、アメリカ銀の多くはヨーロッパを経由してどの地域に流入したか。
解答:中国(アジア)
問6
17世紀以降に形成された、ヨーロッパ・アフリカ・アメリカを結ぶ交易システムを何というか。
解答:大西洋三角貿易
問7
大西洋三角貿易において、アフリカからアメリカ大陸へ運ばれたものは何か。
解答:奴隷
問8
大西洋三角貿易において、アメリカからヨーロッパに運ばれた主要な農産物を1つ挙げよ。
解答:砂糖(または綿花、コーヒーも可)
問9
16世紀に「世界の倉庫」と呼ばれた、当時の国際商業都市はどこか。
解答:アントワープ
問10
17世紀に「オランダの黄金時代」を支えた東インド会社の本拠地はどこか。
解答:アムステルダム
正誤問題(5題)
問11
大航海時代が始まった背景には、オスマン帝国の台頭による香辛料ルート遮断があった。
解答:正
問12
アメリカ大陸から流入した銀はヨーロッパ内でしか流通せず、アジア貿易にはほとんど使われなかった。
解答:誤(アジア貿易の決済手段として大量に流入した)
問13
大西洋三角貿易では、アフリカからヨーロッパへは砂糖やコーヒーが輸送された。
解答:誤(アフリカからは奴隷がアメリカへ送られた)
問14
大航海時代によって、経済の中心は地中海沿岸から大西洋沿岸へと移行した。
解答:正
問15
アムステルダムは18世紀に国際商業都市として繁栄し、その後アントワープに中心地が移った。
解答:誤(順序は逆で、16世紀アントワープ → 17世紀アムステルダム)
第3章 価格革命と商業資本主義
16世紀から17世紀にかけてヨーロッパで起きた「価格革命」は、商業資本主義をさらに加速させる大きな要因となりました。
価格革命とは、主にアメリカ大陸からの大量の銀流入によって、ヨーロッパ全体で物価が長期的に上昇した現象を指します。
この価格変動は単なる経済現象にとどまらず、
- 商業資本家と地主層の台頭
- 農民・都市労働者の没落
- 封建社会の解体
など、社会構造にまで大きな影響を与えました。
ここでは、価格革命の仕組みとその結果として生じた社会変動を、商業資本主義との関係から整理します。
価格革命とは何か
価格革命は、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパ全域で物価が2倍から5倍にまで上昇した現象です。
特に穀物や生活必需品の値上がりが著しく、都市労働者や農民の生活を直撃しました。
(1) 原因
- アメリカ銀の大量流入
- ポトシ銀山(現ボリビア)やメキシコ銀山から膨大な銀がスペインに流入。
- その銀はヨーロッパ全域を循環し、さらにアジアとの交易決済にも使用された。
- 人口増加
- 大航海時代の富の流入と農業生産力の向上で、ヨーロッパ人口が急増。
- 穀物需要の高まりが物価を押し上げた。
- 国際貿易の拡大
- 香辛料・砂糖・綿花など高付加価値商品の大量取引により、資本需要が高騰。
- 商人・金融業者が積極的に資本投下した結果、経済が一層活性化。
価格革命がもたらした社会変化
価格革命は、単に物価が上がっただけではなく、ヨーロッパ社会の階層構造を大きく変化させました。
(1) 商業資本家の台頭
- 遠隔地貿易を通じて商品価格差で莫大な利益を得た商人階級が台頭。
- 銀の価値変動を利用した投資活動により、金融業者も大きく成長。
- 彼らは後の「ブルジョワジー」として、政治的発言力を強めていきます。
(2) 貨幣経済の拡大と農業形態の変化
- 物価上昇に伴い、領主たちは農奴からの労役よりも地代収入を重視。
- 「賃金労働者」や「独立自営農民」が増加し、封建的農奴制が衰退。
- 西ヨーロッパでは「囲い込み(エンクロージャー)」が進み、羊毛生産を中心とした商業的農業が拡大。
(3) 負担を強いられた農民・都市労働者
- 賃金は物価上昇に追いつかず、実質的な生活水準は低下。
- 都市労働者の困窮化は、17世紀の都市暴動や農民反乱の一因となりました。
商業資本主義との関連
価格革命は商業資本主義の進展に追い風となりました。
- 銀の流入により、遠隔地貿易に必要な決済手段が安定。
- 商品価格の高騰が商人にとって有利に働き、利潤追求が加速。
- 蓄積された資本は、後の重商主義政策や産業資本主義の基盤となる。
価格革命から重商主義へ
16〜17世紀にかけて、商業資本主義を背景とした国家の経済政策が進展します。
とくに有名なのが重商主義政策です。
- 国家が東インド会社を設立し、貿易を国家主導で管理・独占。
- 保護貿易政策を採用し、自国に銀・金を蓄積。
- 商業資本家と国家が一体となって植民地経営を進め、世界規模の競争が激化。
この流れを押さえると、価格革命と商業資本主義が「産業資本主義」へとつながる必然性が理解できます。
入試で狙われるポイント
- 価格革命の定義と原因
- アメリカ銀の大量流入と人口増加が主要因。
- 社会構造の変化
- 商業資本家・金融業者の台頭、封建社会の衰退、賃金労働者の増加。
- 商業資本主義との関係
- 銀の流通が貿易資本を支え、資本蓄積を加速。
- 重商主義へのつながり
- 商業資本主義 → 価格革命 → 重商主義 → 産業資本主義という流れを理解。
- 頻出論述テーマ
「価格革命が16〜17世紀ヨーロッパ社会に与えた影響を、商業資本主義との関係に触れながら説明せよ。」
- 価格革命が16〜17世紀ヨーロッパ社会に与えた影響を、商業資本主義との関係に触れながら説明せよ。(180字程度)
-
16〜17世紀、アメリカ大陸のポトシ銀山などから大量の銀がヨーロッパに流入し、価格革命が起こって物価が長期的に上昇した。これにより、遠隔地貿易を担う商業資本家や金融業者は、商品の売買差益を利用して巨額の利益を得て台頭し、商業資本主義が一層発展した。一方、賃金が物価上昇に追いつかず、農民や都市労働者は困窮した。この結果、貨幣経済が拡大し、封建的農奴制が衰退、ヨーロッパ社会は近代経済への転換を進めた。
第3章:商業資本主義 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10題)
問1
16世紀から17世紀にかけてヨーロッパで発生した長期的な物価上昇現象を何というか。
解答:価格革命
問2
価格革命の最大の原因となった、アメリカ大陸からの何の大量流入か。
解答:銀
問3
価格革命の時期、アメリカから流入した銀の主要な供給地はどこか。
解答:ポトシ銀山(現ボリビア)やメキシコ銀山
問4
価格革命によって最も大きな利益を得た社会階層は誰か。
解答:商業資本家・金融業者
問5
価格革命によって没落した社会階層を1つ挙げよ。
解答:農民(または都市労働者)
問6
価格革命により、農業経済ではどのような変化が進んだか。
解答:貨幣経済が拡大し、農奴制が衰退した
問7
価格革命後、西ヨーロッパで進んだ羊毛生産拡大のための農地囲い込み政策を何というか。
解答:囲い込み(エンクロージャー)
問8
価格革命によって台頭した資本家階級は、後に何と呼ばれるようになったか。
解答:ブルジョワジー(市民階級)
問9
価格革命による物価上昇に賃金が追いつかず、困窮化した人々はどのような階層か。
解答:都市労働者
問10
価格革命は、後のどの経済政策や体制の進展を促したか。
解答:重商主義(または商業資本主義の発展)
正誤問題(5題)
問11
価格革命は、アメリカからの銀流入が主因で、ヨーロッパの物価を長期的に上昇させた。
解答:正
問12
価格革命によって封建的農奴制は強化され、農民は領主への労役を強いられるようになった。
解答:誤(農奴制は衰退し、貨幣経済が拡大した)
問13
価格革命では工業製品の価格のみが上昇し、穀物などの食料価格にはほとんど影響がなかった。
解答:誤(穀物など生活必需品の価格上昇が特に顕著だった)
問14
価格革命は、商業資本家や金融業者の台頭を促し、資本蓄積を加速させた。
解答:正
問15
価格革命の影響はヨーロッパ内部にとどまり、アジアやアメリカには及ばなかった。
解答:誤(アメリカ銀のアジア流入など世界規模で影響した)
第4章 商業資本主義から重商主義へ
16〜18世紀のヨーロッパでは、商業資本主義を背景に国家主導の経済政策である重商主義が急速に進展しました。
大航海時代と価格革命によって蓄積された巨額の商業資本をもとに、各国は植民地支配と貿易独占を推進します。この時代は、ヨーロッパ諸国が国家の威信をかけて世界経済に参入する「大西洋経済の時代」とも呼ばれます。
ここでは、商業資本主義から重商主義への移行を、東インド会社の設立・植民地経営・保護貿易政策などを中心に整理します。
国家主導の重商主義政策の特徴
(1) 国家と資本家の一体化
- 重商主義の根本は、「国家の富=貴金属の蓄積」という考え方。
- 商業資本家たちは国家と手を結び、植民地貿易・遠隔地貿易で莫大な利益を得る。
- 国家は商人に特権を与え、彼らの活動を保護することで経済力を強化。
(2) 東インド会社の設立と貿易独占
大航海時代に形成された貿易網を国家主導で支配するため、各国は東インド会社を設立しました。
国 | 設立年 | 特徴 |
---|---|---|
イギリス | 1600年 | インド・東南アジアを拠点に活動 |
オランダ | 1602年 | 世界初の株式会社制度を導入、アジア貿易を支配 |
フランス | 1664年 | コルベールの重商主義政策の一環として設立 |
デンマーク・スウェーデン | 17世紀中期 | 規模は小さいが参入 |
特にオランダ東インド会社は、香辛料・砂糖・コーヒーなど高付加価値商品を独占し、17世紀の「オランダの黄金時代」を支えました。
(3) 保護貿易政策と植民地経営
- 各国は「輸出を増やし、輸入を抑え、貴金属を国内に蓄積する」という保護貿易政策を展開。
- 関税を高く設定し、国内産業を保護。
- 植民地を原料供給地・商品市場として組み込み、世界規模の経済圏を形成。
例:
- イギリスの「航海法(1651年)」
→ イギリス船以外による植民地貿易を禁止し、オランダ商人を排除。 - フランスのコルベール政策
→ 国内産業育成と植民地貿易の強化を一体で推進。
商業資本主義から重商主義への発展メカニズム
商業資本主義で蓄積された富は、国家の経済政策と結びつき、重商主義として制度化されました。
(1) 商業資本主義の段階
- 商人や金融業者が個別に利潤を追求。
- 大航海時代の貿易・価格革命で資本を蓄積。
(2) 重商主義への移行
- 国家が商人に特権を与え、貿易を管理。
- 東インド会社・植民地経営・保護貿易政策が推進。
(3) 産業資本主義への道
- 商業資本主義 → 重商主義 → 産業資本主義という連続的発展。
- 特にイギリスでは、重商主義政策で得た資本が産業革命の原資となった。
国際競争と覇権争い
重商主義の時代は、ヨーロッパ諸国間の激しい競争の時代でもありました。
- 17世紀前半:オランダの時代
- アムステルダムが「世界の商業中心地」に。
- 17世紀後半〜18世紀:イギリスの台頭
- 航海法でオランダを排除し、大西洋貿易を独占。
- フランスとの植民地戦争を制し、インド・北米で覇権を確立。
- 18世紀末:イギリスの世界支配
- 「太陽の沈まぬ帝国」への布石。
入試で狙われるポイント
- 商業資本主義から重商主義への移行
- 個人商人の利潤追求から、国家主導の貿易独占体制へ。
- 東インド会社の設立年
- イギリス(1600)・オランダ(1602)・フランス(1664)は頻出。
- 保護貿易政策の具体例
- 航海法・コルベール政策など。
- 覇権交代の流れ
- 16世紀スペイン → 17世紀オランダ → 18世紀イギリス。
- 頻出論述テーマ
「商業資本主義から重商主義への移行がヨーロッパ世界経済に与えた影響を、東インド会社の設立や植民地経営を中心に説明せよ。」
- 商業資本主義から重商主義への移行がヨーロッパ世界経済に与えた影響を、東インド会社の設立や植民地経営を中心に説明せよ。(180字程度)
-
16〜17世紀、商業資本主義で蓄積された富を背景に、ヨーロッパ諸国は国家主導の重商主義政策を推進した。
イギリス(1600年)やオランダ(1602年)などは東インド会社を設立し、アジア貿易を独占するとともに、アメリカ大陸やアジアで植民地経営を拡大した。これにより、香辛料・砂糖・銀などの交易網が世界規模で形成され、大西洋三角貿易も発展した。その結果、ヨーロッパは世界経済の中心となり、近代資本主義発展の基盤が整えられた。
第4章:商業資本主義 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10題)
問1
商業資本主義の発展を背景に16〜18世紀にかけてヨーロッパ諸国で進められた、国家主導の経済政策を何というか。
解答:重商主義
問2
重商主義政策において、「国家の富」と見なされたものは何か。
解答:金や銀などの貴金属の蓄積
問3
国家が商人に特権を与え、海外貿易を独占させるために設立した組織を何というか。
解答:東インド会社
問4
イギリス東インド会社の設立年は何年か。
解答:1600年
問5
オランダ東インド会社の設立年は何年か。
解答:1602年
問6
フランス東インド会社を設立した大臣は誰か。
解答:コルベール
問7
1651年にイギリスが制定した、オランダ商人を排除する目的の保護貿易法を何というか。
解答:航海法
問8
重商主義政策を推進するために、フランスで国内産業の保護と育成を図った政策を何というか。
解答:コルベール主義(コルベール政策)
問9
重商主義政策によって最も繁栄した17世紀の都市を1つ挙げよ。
解答:アムステルダム
問10
重商主義政策による国家間競争の結果、18世紀に世界覇権を握った国はどこか。
解答:イギリス
正誤問題(5題)
問11
重商主義では、自由貿易を促進して各国の資本流通を活発化させることが重視された。
解答:誤(自由貿易ではなく、国家による貿易統制と保護が重視された)
問12
イギリスの航海法は、自国の植民地貿易を自国船に限定することで、オランダ商人を排除する目的があった。
解答:正
問13
オランダ東インド会社は世界初の株式会社制度を採用し、アジア貿易を独占した。
解答:正
問14
重商主義政策のもとで、国家は貿易を民間に完全に任せ、国家は経済にほとんど介入しなかった。
解答:誤(国家は商人に特権を与え、貿易を厳しく管理した)
問15
17世紀はオランダ、18世紀はイギリスが国際的な経済覇権を握った。
解答:正
第5章 商業資本主義が世界史に与えた影響
16〜18世紀の商業資本主義は、単なる経済活動の変化にとどまらず、世界規模で社会・経済・政治に大きな影響を与えました。
商業資本主義の進展により、ヨーロッパはアジア・アフリカ・アメリカと結びつき、初めて地球規模の交易ネットワークが誕生します。
その結果、
- ヨーロッパ社会構造の変化
- 植民地支配と世界経済の一体化
- 近代資本主義と産業革命への道筋
など、現代にもつながる大きな流れが生まれました。
ここでは、商業資本主義がもたらした世界史的な影響をヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカの各地域ごとに整理します。
ヨーロッパ社会への影響
(1) 市民階級(ブルジョワジー)の台頭
- 遠隔地貿易・金融業で巨額の富を得た商業資本家は、市民階級(ブルジョワジー)として政治的影響力を拡大。
- 特にオランダ・イギリスでは、商業資本家が議会を通じて政策決定に関与。
- この市民階級の成長は、後の市民革命(イギリス清教徒革命・フランス革命など)の土台となる。
(2) 都市経済の発展
- アントワープ、アムステルダム、ロンドンなど国際商業都市が繁栄。
- 金融機関・証券取引所・銀行制度の整備が進み、近代的な資本市場が誕生。
(3) 農業経済から商業経済への転換
- 封建制経済から貨幣経済への移行が加速。
- 西欧では農業が商品化し、「囲い込み(エンクロージャー)」による羊毛・綿花生産が拡大。
- 結果的に産業資本主義の基盤が形成されました。
アジアへの影響
(1) アジア貿易の変容
- インドや東南アジアは、香辛料・綿織物・茶などの主要輸出地として重要性を増す。
- オランダ・イギリスの東インド会社がアジア貿易をほぼ独占。
- 中国の絹・陶磁器、日本の銀なども国際貿易に組み込まれる。
(2) インド支配の始まり
- インドは17世紀以降、イギリス東インド会社の拠点化が進み、18世紀には事実上の植民地に。
- 商業資本主義は、後のアジア植民地支配の序章となりました。
アフリカへの影響
(1) 奴隷貿易の拡大
- 大西洋三角貿易により、西アフリカから大量の奴隷がアメリカ大陸へ移送。
- ヨーロッパ商人は奴隷貿易で莫大な利益を得る一方、アフリカ社会は壊滅的な人口流出に直面。
- 一部のアフリカ国家は、奴隷供給を通じて一時的に繁栄するものの、長期的には経済・社会の停滞を招いた。
アメリカ大陸への影響
(1) 植民地支配とプランテーション経済
- カリブ海・ブラジル・北米南部では、砂糖・コーヒー・綿花のプランテーション農業が急拡大。
- 奴隷労働に依存した経済構造が形成され、社会的不平等が深刻化。
(2) 銀山開発と世界経済の結合
- ポトシ銀山・メキシコ銀山からの銀は、スペインを経由してヨーロッパ・アジアに流通。
- アメリカ大陸は世界貿易ネットワークの原動力となりました。
世界経済のグローバル化
商業資本主義の発展により、初めて世界はひとつの経済圏として結びつきます。
- 国際分業の始まり
- アジア=香辛料・織物
- アフリカ=奴隷供給
- アメリカ=砂糖・銀・綿花
- ヨーロッパ=金融・工業製品供給
- 地球規模の交易ネットワーク
- ヨーロッパを中心に、アジア・アフリカ・アメリカが一体化。
- 世界経済の「中心と周辺」という構造が成立し、近代世界システムの原型が形成されました。
近代資本主義への道
商業資本主義で蓄積された巨額の資本は、18世紀以降の産業革命を可能にしました。
- 重商主義政策による資本集中
- 植民地支配から得た豊富な原料と市場
- 金融・証券制度の発展
結果として、ヨーロッパは産業資本主義を確立し、近代世界の覇権を握ることになります。
入試で狙われるポイント
- 世界規模での影響
- アジア貿易の変容、アフリカの奴隷供給、アメリカの植民地化。
- ブルジョワジーの台頭
- 商業資本家が市民革命や近代国家形成の原動力に。
- 国際分業体制
- アジア=香辛料、アフリカ=奴隷、アメリカ=砂糖・銀・綿花、ヨーロッパ=金融。
- 近代資本主義への道
- 商業資本主義 → 重商主義 → 産業資本主義という流れを押さえる。
- 頻出論述テーマ
「16〜18世紀の商業資本主義が世界経済に与えた影響を、アジア・アフリカ・アメリカを含めて説明せよ。」
単なる用語暗記ではなく、「大航海時代 → 価格革命 → 重商主義 → 産業革命」という流れで整理することで、入試問題への対応力が格段に高まります。
- 16〜18世紀の商業資本主義が世界経済に与えた影響を、アジア・アフリカ・アメリカを含めて説明せよ。(180字程度)
-
16〜18世紀、商業資本主義の発展によりヨーロッパを中心とした世界経済が形成された。アジアでは東インド会社が香辛料・綿織物・茶などの貿易を独占し、インド植民地化の端緒となった。アフリカでは大西洋三角貿易によって多数の奴隷がアメリカ大陸へ送られ、社会構造が大きく変化した。アメリカでは銀山開発やプランテーション農業が進み、砂糖・綿花・銀などがヨーロッパへ輸出された。こうして国際分業体制が成立し、世界規模の経済ネットワークが生まれた。
第5章:商業資本主義 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10題)
問1
商業資本主義の発展により、遠隔地貿易や金融業で台頭した資本家階級を何というか。
解答:ブルジョワジー(市民階級)
問2
商業資本主義で蓄積された資本が、18世紀後半にヨーロッパで起こったどの大変革の原動力となったか。
解答:産業革命
問3
17世紀以降、アジア貿易を独占したオランダ東インド会社の本拠地はどこか。
解答:アムステルダム
問4
インドがイギリスの拠点化を進められたきっかけとなった組織は何か。
解答:イギリス東インド会社
問5
アメリカ大陸では、砂糖や綿花などの大農園経営が拡大したが、この大農園制度を何というか。
解答:プランテーション
問6
大西洋三角貿易でアフリカからアメリカに送られた労働力は何か。
解答:奴隷
問7
ポトシ銀山やメキシコ銀山から産出された銀は、ヨーロッパを経由して主にどの国に大量に流入したか。
解答:中国(明)
問8
商業資本主義の進展によって、世界各地域が役割を分担する経済体制が形成された。このような構造を何というか。
解答:国際分業体制(または世界経済システム)
問9
商業資本主義の発展により、ヨーロッパでは国家と商人が一体化して推進した経済政策を何というか。
解答:重商主義
問10
商業資本主義で台頭した市民階級が、後に政治的権利を求めて展開した運動を総称して何というか。
解答:市民革命
正誤問題(5題)
問11
商業資本主義はヨーロッパ内部だけに影響を及ぼし、アジアやアフリカにはほとんど影響しなかった。
解答:誤(アジア貿易や奴隷貿易など世界規模で影響を与えた)
問12
商業資本主義の進展により、アジアでは東インド会社による貿易独占やインド植民地化が進んだ。
解答:正
問13
大西洋三角貿易では、アメリカからアフリカへ奴隷が大量に輸送された。
解答:誤(奴隷はアフリカからアメリカへ輸送された)
問14
プランテーション農業では、砂糖や綿花などの換金作物を生産し、ヨーロッパ市場に供給した。
解答:正
問15
商業資本主義で形成された世界経済の構造は、後の産業資本主義や植民地支配の基盤となった。
解答:正
【総まとめ】商業資本主義を世界史全体で俯瞰する|受験で差がつく理解ポイント
商業資本主義は、16〜18世紀の世界史をつなぐ「見えない軸」です。
「大航海時代」「価格革命」「重商主義」「産業革命」などの用語は知っていても、それらがどうつながっているかを理解していないと、入試では得点できません。
世界史では、単語の暗記よりも「時代の流れと構造を押さえること」が重要です。
ここでは、商業資本主義を全体の中で位置づけ、受験で差がつく理解のポイントを総括します。
ポイントの整理ができたら、次の問題に挑戦しよう!
商業資本主義 総合問題演習50本勝負!
一問一答(15題)
問1
商業資本主義とは、主にどのような活動を通じて利潤を追求する経済体制か。
解答:商業活動(貿易・投資・金融)
問2
商業資本主義の中心的な主体となったのは誰か。
解答:商人・金融業者・貿易商人
問3
商業資本主義と産業資本主義の違いを簡潔に説明せよ。
解答:商業資本主義は取引活動から利潤を得るのに対し、産業資本主義は生産活動から利潤を得る。
問4
中世ヨーロッパで生産・販売を統制した組織を何というか。
解答:ギルド
問5
商業資本主義が発展するきっかけとなった、15世紀末以降の大規模航海活動を何というか。
解答:大航海時代
問6
大航海時代の結果、ヨーロッパ経済の中心は地中海世界からどこへ移動したか。
解答:大西洋世界
問7
16世紀に「世界の倉庫」と呼ばれた国際商業都市はどこか。
解答:アントワープ
問8
17世紀、「オランダの黄金時代」を支えた東インド会社の本拠地はどこか。
解答:アムステルダム
問9
商業資本主義を推進した国家主導の経済政策を何というか。
解答:重商主義
問10
アメリカからの銀供給で有名な南米ボリビアの大銀山はどこか。
解答:ポトシ銀山
問11
16〜17世紀にヨーロッパで長期的な物価上昇をもたらした現象を何というか。
解答:価格革命
問12
価格革命によって最も利益を得た社会階層は誰か。
解答:商業資本家・金融業者
問13
価格革命によって最も打撃を受けた社会階層は誰か。
解答:農民・都市労働者
問14
1651年に制定され、オランダ商人を排除するためのイギリスの保護貿易法を何というか。
解答:航海法
問15
商業資本主義の進展によって台頭した資本家階級は、後に何と呼ばれるか。
解答:ブルジョワジー(市民階級)
正誤問題(5題)
問16
商業資本主義は、生産活動を通じて利潤を追求する経済体制である。
解答:誤(商業活動を通じて利潤を追求する)
問17
アメリカ大陸からの銀流入は、ヨーロッパだけでなくアジア貿易にも影響した。
解答:正
問18
価格革命では、工業製品よりも穀物など生活必需品の価格上昇が大きかった。
解答:正
問19
重商主義は国家による自由貿易の推進を重視した政策である。
解答:誤(自由貿易ではなく、国家管理による貿易独占が重視された)
問20
大西洋三角貿易では、アフリカからアメリカへ奴隷が輸送された。
解答:正
一問一答(10題)
問21
世界初の株式会社制度を採用し、アジア貿易を独占した組織は何か。
解答:オランダ東インド会社(1602年設立)
問22
アメリカ大陸の銀が中国に大量に流入した背景として、中国で何が納税手段として義務化されていたか。
解答:銀納税(「一条鞭法」により銀での納税が求められた)
問23
17世紀、オランダ東インド会社の本拠地アムステルダムに設立された世界初の金融機関は何か。
解答:アムステルダム銀行
問24
17世紀、アムステルダムに設立された世界初の証券取引所は何と呼ばれたか。
解答:アムステルダム証券取引所
問25
イギリス東インド会社設立時のエリザベス1世は、どの王朝の君主か。
解答:テューダー朝
問26
1651年の航海法制定後、オランダとイギリスの間で勃発した戦争を何というか。
解答:第一次英蘭戦争
問27
16世紀に「世界の倉庫」と呼ばれたアントワープは、当時どの国の支配下にあったか。
解答:スペイン(ハプスブルク家)領ネーデルラント
問28
ポトシ銀山の銀はどの港からスペイン本国に輸送されたか。
解答:ポトシ → パナマ地峡 → ハバナ経由 → セビリア港
問29
17世紀に「オランダの時代」を築いた指導者で、東インド会社の拡張を推進した人物は誰か。
解答:ヨハン=ファン=オルデンバルネフェルト
問30
スペイン・ポルトガル間で海外領土を分割した条約は何か。
解答:トルデシリャス条約(1494年)
正誤問題(15題)※複数選択含む
問31
【正しいものをすべて選べ】
アントワープ、アムステルダム、ロンドンに関する記述で正しいものはどれか。
A. アントワープは16世紀に「世界の倉庫」と呼ばれた
B. アムステルダムは17世紀に証券取引所を設立した
C. ロンドンは18世紀に国際金融の中心地となった
D. アムステルダム銀行は18世紀末に設立された
解答:A・B・C
問32
【正しいものをすべて選べ】
大西洋三角貿易に関する記述として正しいものはどれか。
A. アフリカからアメリカへ奴隷が送られた
B. アメリカからヨーロッパへ砂糖や綿花が送られた
C. ヨーロッパからアフリカへ銃器や繊維製品が送られた
D. 奴隷は主に中国へ送られた
解答:A・B・C
問33
価格革命の主因は人口増加による需要増大であり、銀の流入はほとんど関係なかった。
解答:誤(銀流入が最大要因で、人口増加は補助的要因)
問34
オランダ東インド会社は世界初の株式会社制度を導入した。
解答:正
問35
【正しいものをすべて選べ】
東インド会社に関する記述で正しいものはどれか。
A. イギリス東インド会社は1600年に設立
B. フランス東インド会社はコルベール政策の一環
C. オランダ東インド会社は1620年に設立
D. 東インド会社はアジア貿易独占を目的とした
解答:A・B・D
問36
価格革命は、ヨーロッパの都市労働者や農民の生活水準を改善させた。
解答:誤(生活水準は悪化した)
問37
スペインは16世紀、アメリカ銀を背景に「太陽の沈まぬ帝国」と呼ばれた。
解答:正
問38
【正しいものをすべて選べ】
重商主義政策に関連する出来事として正しいものはどれか。
A. 航海法の制定
B. コルベール政策
C. 自由貿易協定の締結
D. 東インド会社設立
解答:A・B・D
問39
大航海時代以前からヨーロッパとアジアを結んでいた香辛料ルートを支配したのはオスマン帝国である。
解答:正
問40
【正しいものをすべて選べ】
17世紀の「オランダの黄金時代」に関連する事柄として正しいものはどれか。
A. アムステルダム銀行設立
B. アムステルダム証券取引所設立
C. ヨーロッパ覇権の確立
D. 航海法による制限強化
解答:A・B・C
問41
大西洋三角貿易で、アメリカからアフリカへ奴隷が送られた。
解答:誤(奴隷はアフリカからアメリカへ送られた)
問42
フランスのコルベールは、国内産業の育成と植民地貿易強化を一体で推進した。
解答:正
問43
17世紀以降のヨーロッパでは、国家と商人が協力して貿易を独占する体制が進展した。
解答:正
問44
【正しいものをすべて選べ】
商業資本主義の発展による社会変化で正しいものはどれか。
A. ブルジョワジーの台頭
B. 農奴制の再強化
C. 都市金融市場の形成
D. 市民革命の土台形成
解答:A・C・D
問45
ポトシ銀山からの銀はアジア貿易の決済にほとんど使われなかった。
解答:誤(中国を中心としたアジア貿易決済に大量に使用された)
一行問題(5題)
問46
価格革命で特に大きく値上がりした生活必需品は何か。
解答:穀物
問47
オランダ東インド会社が設立された年は西暦何年か。
解答:1602年
問48
イギリス東インド会社設立時の君主は誰か。
解答:エリザベス1世
問49
アムステルダム証券取引所設立によりヨーロッパで初めて整備された金融制度は何か。
解答:株式売買制度
問50
「世界の倉庫」と呼ばれたアントワープは、当時どの帝国の支配下にあったか。
解答:スペイン(ハプスブルク家)
1. 商業資本主義は「近代世界経済」の出発点
まず大切なのは、商業資本主義を「中世から近代への転換点」として捉えることです。
- 中世の経済はギルド・荘園・地中海貿易が中心で、範囲は限定的。
- 15世紀末、大航海時代が始まり、世界規模の交易が進展。
- 商業資本主義は、このグローバルな貿易ネットワークを背景に成立した。
つまり、商業資本主義を理解することは、
「ヨーロッパ経済がなぜ地中海から大西洋へ移動したのか」
「なぜ世界がつながる経済圏になったのか」
を説明できるようになることです。
2. 「大航海時代 → 商業資本主義 → 価格革命」の連動を押さえる
商業資本主義を理解するうえで最重要なのは、大航海時代と価格革命との関係です。
- 大航海時代
→ 香辛料・砂糖・銀など、高付加価値商品の直接取引が可能に。
→ 遠隔地貿易で巨額の利益を得る商人が登場。 - 銀の大量流入
→ ポトシ銀山・メキシコ銀山からの膨大な銀がヨーロッパに流入。 - 価格革命
→ 物価が長期的に上昇し、貨幣経済が拡大。
→ 商業資本家にとっては有利な状況が整う。
この三者は同時並行的に進行した現象であり、ひとつの大きな歴史の流れとしてまとめて理解すると、入試の論述や正誤問題で強いです。
3. 「国家 × 商業資本」=重商主義への発展
商業資本主義はやがて国家の政策と結びつき、重商主義として制度化されます。
- 国家が貿易を統制
→ 東インド会社の設立(イギリス1600/オランダ1602/フランス1664) - 保護貿易政策
→ 航海法(1651)やコルベール政策など。 - 国家間競争の激化
→ スペイン → オランダ → イギリスと覇権が移動。
ここで重要なのは、商業資本主義が単なる「商人の活動」ではなく、国家の経済戦略と直結したという点です。
ヨーロッパ諸国は植民地と貿易路をめぐって熾烈な争いを繰り広げ、世界規模の競争構造が形成されました。
4. 世界規模での影響を意識する
商業資本主義はヨーロッパだけの現象ではなく、アジア・アフリカ・アメリカを巻き込んだグローバル現象でした。
- アジア
→ インド・東南アジアの香辛料貿易を独占。
→ インドはイギリス東インド会社の拠点化へ。 - アフリカ
→ 奴隷貿易が拡大、西アフリカ社会は大きな人口流出に直面。 - アメリカ
→ 銀山開発・プランテーション農業が進み、植民地支配が固定化。
こうした地域間分業により、世界初のグローバル経済が誕生しました。
つまり、商業資本主義は「近代世界システムの原型」を形作った現象といえます。
5. 産業資本主義への布石
商業資本主義の最大の歴史的意義は、18世紀以降の産業資本主義を準備したことです。
- 大航海時代で得た市場と原料供給地
- 重商主義政策で蓄積された資本
- 国際金融システムの整備
この3つの要素が揃ったことで、イギリスは産業革命を起こし、世界経済の中心となります。
6. 入試で差がつく視点
商業資本主義は、一問一答で単語を覚えるだけでは得点できません。
以下のような「流れ・構造・世界規模の視点」で理解することが重要です。
- 流れで押さえる
- 大航海時代 → 商業資本主義 → 価格革命 → 重商主義 → 産業資本主義
- 地域間のつながりを意識する
- ヨーロッパだけでなく、アジア・アフリカ・アメリカを含めた「世界経済の誕生」として捉える。
- 覇権交代を意識する
- スペイン → オランダ → イギリスの順で、なぜ覇権が移動したのかを説明できると強い。
- 論述で問われやすいテーマ 「16〜18世紀の商業資本主義が世界経済に与えた影響を、大航海時代・価格革命・重商主義と関連づけて説明せよ。」
まとめ
商業資本主義は、
- 大航海時代の新航路開拓
- 価格革命による資本蓄積
- 重商主義政策と植民地経営
を経て、近代世界経済を形づくった出発点です。
入試では、
「ヨーロッパ内部の変化」だけでなく、
「世界全体を巻き込むグローバルな経済構造の誕生」
として理解することが、差がつくポイントになります。
コメント