宗教改革は、16世紀ヨーロッパにおける「神中心」から「人間中心」への価値観の大転換をもたらした歴史的事件です。
ルターやカルヴァンによる改革は、単にカトリック教会を分裂させただけではありません。国家体制・社会構造・思想・科学・経済までも揺るがし、近代ヨーロッパを形成する原動力となりました。
さらに宗教改革は、近代思想への橋渡しという観点でも重要です。
中世スコラ哲学からの決別、ルネサンス人文主義の影響、そして宗教戦争を経て成立した近代国家体制——この一連の流れを押さえることで、デカルト・スピノザ・ニュートンら近代思想家たちが登場する背景も理解しやすくなります。
本記事では、
- 宗教改革の背景
- ルター・カルヴァンらの思想
- 宗教改革が国家体制と思想へ与えた影響
を整理し、大学入試論述にも使える知識を体系的にまとめます。
▼ 宗教改革そのものの発端やルター・カルヴァンの思想については、以下の概要記事で基礎からわかりやすく整理しています。
第1章 宗教改革の背景とその必然性
1-1. 中世カトリック世界の限界
16世紀初頭、ヨーロッパは「カトリック教会の権威の揺らぎ」と「国家権力の台頭」が交錯する時代でした。
- 贖宥状(免罪符)販売の横行
ローマ教皇レオ10世はサン=ピエトロ大聖堂建設資金を得るため、贖宥状を販売。 - 教皇庁の腐敗
高位聖職者の買収・職権濫用が横行し、民衆の不満が高まる。 - ルネサンス人文主義の台頭
「原典回帰」の流れで聖書研究が進み、「教会解釈」より「個人の理解」を重視。 - 印刷術の普及
グーテンベルクの活版印刷術により、聖書が各地で翻訳・出版され、教会独占が崩壊。 - 神聖ローマ帝国内の政治対立
ハプスブルク家と諸侯の対立が、宗教改革の受容と拡大を後押し。
1-2. ルターの宗教改革の発端
1517年、ヴィッテンベルク大学神学教授マルティン・ルターは、贖宥状販売に異議を唱え「95か条の論題」を発表しました。
- 核心思想
- 「信仰義認説」:救済は行為でなく信仰による
- 「聖書中心主義」:聖書こそ唯一の権威
- 宗教改革の広がり
印刷術によりルターの主張は瞬く間にドイツ諸侯・市民へ拡散。
1-3. 宗教改革を受け入れた社会背景
- 都市市民層(ブルジョワジー)の支持
「聖職者への高額献金不要」という思想は都市経済と親和的。 - 諸侯の政治的計算
カトリック教会からの独立は領邦権強化につながった。 - 民衆の宗教意識変容
「神と個人」の直接的関係を重視し、中世的共同体の枠組みから離脱。
1-4. 宗教改革の初期的意義
宗教改革は単なる宗教論争ではなく、近代ヨーロッパを形作る第一歩でした。
- 「個人と神との直接的関係」の強調 → 個人主義の萌芽
- 教会中心から国家中心へのシフト → 近代国家形成の端緒
- 教会権威の崩壊 → 思想・科学・政治の多様化
1-5. 入試で狙われるポイント
- ルターの「95か条の論題」(1517年)と贖宥状販売の関係
- 信仰義認説と聖書中心主義の違い
- 印刷術の普及が宗教改革に与えた影響
- 宗教改革と神聖ローマ帝国内の政治対立との関連
- 宗教改革がヨーロッパ社会と思想に与えた影響を、ルターの思想と当時の政治状況に触れながら200字以内で説明せよ。
-
16世紀、カトリック教会の腐敗に対しルターは95か条の論題を発表し、信仰義認説と聖書中心主義を主張した。印刷術により思想は広まり、諸侯は教会権威からの独立を図るため宗教改革を支持。これにより、個人と神との直接的関係が強調され、中世的共同体は解体。国家中心の体制形成や近代思想への転換を促す契機となった。
第1章: 宗教改革と近代思想 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
1517年、ルターが宗教改革のきっかけとして発表した文書は何か。
解答:95か条の論題
問2
ルターが主張した「救いは信仰による」という考え方を何というか。
解答:信仰義認説
問3
ルターが唯一の権威としたものは何か。
解答:聖書
問4
贖宥状販売を主導したローマ教皇は誰か。
解答:レオ10世
問5
ルターの思想を広める上で決定的役割を果たした技術革新は何か。
解答:活版印刷術
問6
宗教改革を支持したドイツ諸侯の動機は何だったか。
解答:教会権威から独立し領邦権を強化するため
問7
宗教改革の中心となった都市はどこか。
解答:ヴィッテンベルク
問8
神聖ローマ帝国内で宗教改革を弾圧しようとした皇帝は誰か。
解答:カール5世
問9
宗教改革の広まりに対抗して結成されたカトリック側の組織は何か。
解答:イエズス会
問10
ルター派とカトリック派の対立を決定づけた戦争は何か。
解答:シュマルカルデン戦争
正誤問題(5題)
問1
ルターは贖宥状を支持し、販売を推進した。
解答:誤(ルターは贖宥状に反対し、批判した)
問2
ルターは「人は信仰によってのみ義とされる」と主張した。
解答:正
問3
宗教改革は印刷術の普及とは無関係に進展した。
解答:誤(印刷術の普及が思想拡散に大きく寄与した)
問4
神聖ローマ帝国の諸侯は、教会権威の強化を目的にルターを支持した。
解答:誤(権威強化ではなく独立のため)
問5
カール5世は宗教改革に反対し、ルター派を弾圧した。
解答:正
第2章 カルヴァン派の拡大と近代社会への影響
2-1. ジャン・カルヴァンの思想と予定説
16世紀スイス・ジュネーヴを拠点に活動した神学者ジャン・カルヴァンは、ルターに続く宗教改革の第2世代として大きな役割を果たしました。
- 予定説
「救済は神によってあらかじめ定められており、人間の意志や行為では変えられない」という思想。
これにより、人々は「選ばれし者」であることを証明するため、禁欲的で勤勉な生活を送るようになりました。 - 職業召命観(コーリング)
「世俗の職業も神から与えられた使命である」という考え方。
→ 働くこと自体が神への奉仕と位置づけられた点が重要です。
2-2. カルヴァン派の国際的広がり
カルヴァンの思想は、ジュネーヴを中心にヨーロッパ各地へ急速に拡散しました。
- フランス:ユグノー(カルヴァン派信徒)として広がる
- オランダ:独立運動の思想的支柱となる
- スコットランド:ジョン・ノックスが長老派教会を設立
- イングランド:清教徒(ピューリタン)運動を推進
- 新大陸アメリカ:ピルグリム・ファーザーズによる植民活動に影響
2-3. 資本主義とプロテスタンティズムの関係
近代社会における経済倫理の変化を考える上で、カルヴァン主義は極めて重要です。
- マックス・ウェーバーの命題
著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、
カルヴァン派の禁欲的職業倫理が近代資本主義の形成を促進したと主張。 - 勤勉・倹約・蓄財の肯定
富を神の恩寵の証とみなす思想が、投資活動の拡大を後押し。
2-4. カルヴァン派と近代国家形成
カルヴァン主義は、宗教と国家の関係にも大きな影響を与えました。
- 教会と国家の分離の萌芽
- 識字率向上による市民社会の成熟
- 政治参加意識の向上 → 民主主義の基盤形成
2-5. 入試で狙われるポイント
- 予定説と職業召命観の内容
- カルヴァン派の国際的広がり(ユグノー・ピューリタン・長老派など)
- カルヴァン主義と近代資本主義の関連(ウェーバーの命題)
- 宗教改革と近代国家形成との関係
- カルヴァン派の思想が近代社会と経済に与えた影響を、予定説と職業召命観に触れながら200字以内で説明せよ。
-
カルヴァンは予定説を唱え、人々は自らが救済される「選ばれし者」であることを示すため、禁欲的で勤勉な生活を送るようになった。また、職業召命観により、世俗の職業を神の使命と捉える意識が広がった。これらは倹約・蓄財を肯定する価値観を生み、マックス・ウェーバーが指摘したように、近代資本主義の形成を促進するとともに、市民社会や近代国家体制の基盤を築いた。
第2章: 宗教改革と近代思想 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
カルヴァンが拠点とした都市はどこか。
解答:ジュネーヴ
問2
カルヴァンの思想の核心である「救済はあらかじめ神によって決定されている」という考えを何というか。
解答:予定説
問3
カルヴァンが世俗の職業を神からの使命と捉えた思想を何というか。
解答:職業召命観(コーリング)
問4
フランスにおけるカルヴァン派信徒を何と呼ぶか。
解答:ユグノー
問5
スコットランドでカルヴァン派教会を設立した人物は誰か。
解答:ジョン・ノックス
問6
イングランドでカルヴァン派の影響を受けた改革派を何と呼ぶか。
解答:ピューリタン(清教徒)
問7
カルヴァン派がアメリカ新大陸に及ぼした影響として有名な集団は誰か。
解答:ピルグリム・ファーザーズ
問8
オランダ独立戦争におけるカルヴァン派の役割は何か。
解答:スペインからの独立運動を思想的に支えた
問9
カルヴァン派の思想が近代資本主義と関連すると主張した社会学者は誰か。
解答:マックス・ウェーバー
問10
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を著した人物は誰か。
解答:マックス・ウェーバー
正誤問題(5問)
問1
カルヴァンは救済は人間の善行によって獲得できると説いた。
解答:誤(救済は神があらかじめ定めたとする予定説)
問2
職業召命観は、世俗の職業を神から与えられた使命とする考え方である。
解答:正
問3
カルヴァン派はヨーロッパに広がらず、ジュネーヴ周辺にのみ限定された。
解答:誤(ユグノー・ピューリタン・長老派など広範囲に拡大)
問4
マックス・ウェーバーは、カルヴァン主義が資本主義発展に影響したと指摘した。
解答:正
問5
カルヴァンはローマ教皇レオ10世と協力して改革を推進した。
解答:誤(ローマ教皇の権威に反発した)
第3章 宗教戦争とヴェストファリア条約:近代国家体制の形成
3-1. 宗教戦争の時代
宗教改革によって生じたカトリックとプロテスタントの対立は、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパ各地で武力衝突を引き起こしました。
3-1-1. フランス宗教戦争(ユグノー戦争)
- 背景:フランス国内でのカトリックとユグノー(カルヴァン派)の対立
- 主な事件
- サン=バルテルミの虐殺(1572年)
→ カトリック勢力によるユグノー大量虐殺 - ナントの勅令(1598年)
→ アンリ4世が発布し、ユグノーに一定の信仰の自由を保障
- サン=バルテルミの虐殺(1572年)
3-1-2. オランダ独立戦争
- 背景:カルヴァン派の多いネーデルラント地方がスペイン・ハプスブルク家の支配に反発
- 結果:1581年、北部7州が独立を宣言(ネーデルラント連邦共和国の成立)
3-1-3. 三十年戦争(1618〜1648年)
- 発端:ボヘミアのプロテスタントがハプスブルク家支配に反発し、布告撤回を要求
- 展開:
- ボヘミア・プファルツ戦争期
→ ハプスブルク家(カトリック)優勢 - デンマーク戦争期
→ プロテスタント諸侯側がデンマーク王を盟主として参戦 - スウェーデン戦争期
→ グスタフ=アドルフ王が参戦し、戦況逆転 - フランス・スウェーデン戦争期
→ カトリックのフランスがプロテスタント側に加勢
- ボヘミア・プファルツ戦争期
- 特徴:宗教対立から国家間戦争へと移行した点が重要
3-2. ウェストファリア条約(1648年)
三十年戦争を終結させたヴェストファリア条約は、近代国際秩序の出発点とされています。
- 主な内容
- 神聖ローマ帝国内の諸侯に主権を認める
- カルヴァン派を公認宗派に追加
- ネーデルラント・スイスの独立承認
- フランス・スウェーデンの領土拡大
- 意義
- 国家主権の確立
→ 宗教ではなく国家利益を優先する近代国際関係の誕生 - 神聖ローマ帝国の衰退
→ 帝国は事実上の名目上存在のみ - フランスの台頭
→ ルイ14世による絶対王政への流れ
- 国家主権の確立
3-3. 国家体制と思想への影響
ヴェストファリア体制は単なる外交秩序にとどまらず、近代思想形成にも大きな影響を及ぼしました。
- 宗教から国家へ
国家が宗教より優越するという原則が成立 - 寛容思想の拡大
多様な宗派が共存する社会への転換 - 理性重視の土壌形成
宗教対立への疲弊 → 合理主義・科学的思考の発展を促進
3-4. 入試で狙われるポイント
- サン=バルテルミの虐殺とナントの勅令の関係
- オランダ独立戦争とネーデルラント連邦共和国成立
- 三十年戦争の4段階の流れ
- ヴェストファリア条約の具体的内容と意義
- ウェストファリア条約の意義を、三十年戦争の経過と関連させて200字以内で説明せよ。
-
1618年の三十年戦争は、神聖ローマ帝国内のプロテスタントとカトリックの対立から始まったが、次第にフランス・スウェーデンなどの大国が参戦し、宗教戦争から国家間戦争へ発展した。1648年のヴェストファリア条約で戦争は終結し、諸侯の主権が承認され、カルヴァン派も公認された。この条約は宗教より国家利益を優先する近代国際秩序を形成し、神聖ローマ帝国の衰退とフランス台頭を促した。
第3章: 宗教改革と近代思想 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
1572年、フランスでユグノーが大量虐殺された事件を何というか。
解答:サン=バルテルミの虐殺
問2
1598年、ユグノーに信仰の自由を保障した勅令を何というか。
解答:ナントの勅令
問3
オランダ独立戦争の結果、独立した国は何か。
解答:ネーデルラント連邦共和国
問4
三十年戦争の発端となった地域はどこか。
解答:ベーメン(ボヘミア)
問5
三十年戦争期に参戦し、戦局を逆転させたスウェーデン王は誰か。
解答:グスタフ=アドルフ
問6
三十年戦争の終結を定めた条約は何か。
解答:ヴェストファリア条約
問7
ヴェストファリア条約で独立を承認された2つの国はどこか。
解答:ネーデルラント・スイス
問8
ヴェストファリア条約で諸侯に認められた重要な権利は何か。
解答:領邦主権
問9
ヴェストファリア条約後、国際秩序で台頭した国はどこか。
解答:フランス
問10
神聖ローマ帝国の名目的存在化を決定づけた条約は何か。
解答:ヴェストファリア条約
正誤問題(5問)
問1
ナントの勅令はカルヴァン派を弾圧するために発布された。
解答:誤(信仰の自由を保障した)
問2
オランダ独立戦争は、スペイン・ハプスブルク家支配への反発から始まった。
解答:正
問3
三十年戦争は当初から国家間戦争として始まった。
解答:誤(当初は宗教戦争として始まり、途中で国家間戦争化)
問4
ヴェストファリア条約でカルヴァン派が正式に公認された。
解答:正
問5
ヴェストファリア条約によってフランスは領土を失い、国際的地位を低下させた。
解答:誤(フランスは領土を拡大し台頭した)
第4章 近代思想の誕生:宗教から理性へ
4-1. 宗教改革から合理主義への転換
16世紀の宗教改革は、神と個人との直接的関係を重視する思想を広めた一方で、宗教対立の激化と宗教戦争の悲惨さをもたらしました。
この経験はヨーロッパ社会に「宗教より理性を重視する」方向性を促しました。
- 宗教戦争の疲弊
長期にわたる対立は、宗教的権威に対する懐疑を生んだ。 - 多元的社会の到来
カトリック・ルター派・カルヴァン派が共存せざるを得ない現実が、宗教的寛容を必要とした。 - 科学革命との連動
自然科学の発展が、合理主義的世界観を強化。
4-2. デカルトと近代合理主義
デカルト(1596〜1650)は、「近代哲学の父」と呼ばれる思想家です。
- 方法的懐疑
「すべてを疑い、絶対に確実なものを見つける」
→ 到達した結論が「我思う、ゆえに我あり(Cogito, ergo sum)」。 - 理性重視
真理を導くのは信仰ではなく人間の理性だと主張。 - 演繹法の確立
幾何学的推論を哲学に導入し、体系的な合理主義を確立。
4-3. スピノザと汎神論
バールーフ・スピノザ(1632〜1677)は、オランダの哲学者で、神=自然という独自の汎神論を展開しました。
- 思想の核心
神と自然は同一であり、宇宙は神の一部である。 - 宗教的寛容
ユダヤ教から追放された経験を踏まえ、信仰の自由を強調。 - 合理的自由の追求
人間は理性を用いて「神的必然性」を理解し、真の自由を獲得できると説いた。
4-4. ロックと経験論
ジョン・ロック(1632〜1704)は、経験を基盤とする思想を展開し、近代民主主義にも大きな影響を与えました。
- 経験論の核心
「人間の心は生まれたときは白紙(タブラ・ラサ)であり、経験によって知識を得る」 - 寛容論
宗教的多様性を認めるべきだと主張。 - 社会契約論
統治権は人民の同意に基づくべきだと説き、アメリカ独立宣言にも影響。
4-5. 啓蒙思想への橋渡し
- 科学革命との連動
ニュートン力学の発展により、「自然は普遍的法則に従う」という認識が広がる。 - 啓蒙思想の萌芽
理性・科学・経験を重視する価値観は、18世紀のヴォルテールやモンテスキューらにつながる。
4-6. 入試で狙われるポイント
- デカルトの「方法的懐疑」と「我思う、ゆえに我あり」
- スピノザの汎神論と宗教的寛容思想
- ロックの経験論と社会契約論
- 宗教対立から寛容思想・近代科学へ至る流れ
- デカルト・スピノザ・ロックら近代思想家の思想が、宗教改革後のヨーロッパ思想に与えた影響を200字以内で説明せよ。
-
宗教改革後、宗教戦争を経たヨーロッパでは、宗教権威への懐疑と理性重視の傾向が強まった。デカルトは「我思う、ゆえに我あり」を唱え、人間理性を真理探究の基盤とした。スピノザは神=自然という汎神論を展開し、宗教的寛容を主張。ロックは経験論を確立し、社会契約論で人民主権を提唱した。これらは科学革命と結びつき、啓蒙思想や近代民主主義形成の思想的基盤となった。
第4章: 宗教改革と近代思想 一問一答&正誤問題15問 問題演習
一問一答(10問)
問1
「我思う、ゆえに我あり」を唱えた近代哲学の父と呼ばれる人物は誰か。
解答:デカルト
問2
デカルトが提唱した、疑うことで確実な真理に到達しようとする方法を何というか。
解答:方法的懐疑
問3
デカルトが哲学体系に導入した推論方法を何というか。
解答:演繹法
問4
神=自然とする汎神論を唱えた哲学者は誰か。
解答:スピノザ
問5
スピノザが強調した、宗教の多様性を尊重する立場を何というか。
解答:宗教的寛容
問6
「人間の心は生まれたときは白紙である」と唱えた哲学者は誰か。
解答:ジョン・ロック
問7
ロックが説いた「統治権は人民の同意に基づくべき」という理論を何というか。
解答:社会契約論
問8
ロックの思想が特に大きな影響を与えた18世紀の歴史的出来事は何か。
解答:アメリカ独立宣言
問9
近代思想と連動して進展した、17世紀の自然科学上の大革命を何というか。
解答:科学革命
問10
ニュートンが発展させた自然法則を基盤とする世界観を何というか。
解答:機械論的世界観
正誤問題(5問)
問1
デカルトは「信仰こそ真理探究の唯一の基盤」と主張した。
解答:誤(理性を重視し、信仰からの独立を目指した)
問2
スピノザは神と自然を同一視する汎神論を唱えた。
解答:正
問3
ロックは人間は生まれながらに知識を持つと主張した。
解答:誤(経験によって知識を得るとする経験論を提唱)
問4
ロックの社会契約論は人民主権の思想形成に大きく影響した。
解答:正
問5
近代思想は宗教改革と無関係に発展した。
解答:誤(宗教改革と宗教戦争が思想転換を促す契機となった)
第5章 まとめ:宗教改革から近代思想への大転換を俯瞰する
5-1. 宗教改革がもたらした歴史的意義
16世紀に始まった宗教改革は、単なる教会内部の改革運動ではなく、ヨーロッパ社会の構造そのものを変える契機となりました。
- 個人と神の直接的関係の重視
→ 中世的共同体からの解放、個人主義の萌芽 - 教会権威の相対化
→ 国家主権の台頭、近代国家体制の形成 - 宗教戦争の経験
→ 宗教より国家利益を優先する近代国際秩序の誕生 - 思想の多様化と科学革命への道
→ 理性・科学を重視する近代思想が開花
5-2. 宗教改革から近代思想への4つのステップ
ステップ | 時期 | キーワード | 代表人物 | 影響 |
---|---|---|---|---|
① 宗教改革の始まり | 16世紀初頭 | 信仰義認説・聖書中心主義 | ルター | 教会権威を否定し、宗教分裂を引き起こす |
② カルヴァン派の拡大 | 16世紀中頃 | 予定説・職業召命観 | カルヴァン | 資本主義倫理・市民社会の基盤形成 |
③ 宗教戦争と国家主権 | 16〜17世紀 | ユグノー戦争・三十年戦争 | グスタフ=アドルフ、リシュリュー | ヴェストファリア条約により国家主権が確立 |
④ 近代思想と啓蒙への道 | 17世紀〜18世紀 | 方法的懐疑・経験論・理性重視 | デカルト、ロック、スピノザ | 科学革命・啓蒙思想・近代民主主義へ接続 |
5-3. 大学入試で差がつくポイント
- 宗教改革の発端と思想的意義
→ ルターの信仰義認説・聖書中心主義 - カルヴァン派思想と資本主義形成
→ ウェーバーの命題までつなげると論述で有利 - 三十年戦争とヴェストファリア条約の意義
→ 「宗教より国家利益を優先」への転換を強調 - 近代思想家たちの共通点
→ 理性・寛容・科学を軸とした思想的進化
5-4. 図解まとめ:宗教改革から近代思想への流れ
中世カトリック世界
↓(腐敗・贖宥状・教会権威への疑問)
ルターの宗教改革(1517年)
↓
カルヴァン主義の拡大(予定説・職業召命観)
↓
宗教戦争の時代(ユグノー戦争・三十年戦争)
↓
ヴェストファリア条約(1648年)
→ 国家主権の確立
↓
デカルト・スピノザ・ロックら近代思想家の登場
↓
啓蒙思想・科学革命・近代民主主義の形成
5-5. 関連記事リンク
【世界史】スコラ哲学とは?入試必出の思想家・キーワードをわかりやすく解説
→ 宗教改革以前の思想史を押さえるならこちらから!
【世界史】科学革命と啓蒙思想|近代ヨーロッパ思想の流れを徹底解説
→ 本記事の続きとしておすすめ。
【世界史】三十年戦争とウェストファリア条約|近代国家誕生の瞬間
→ 宗教戦争の流れをより詳しく解説。
5-6. まとめメッセージ
宗教改革は、単なるカトリックとプロテスタントの対立ではなく、思想・国家・経済・科学・社会すべてを揺るがした大転換期です。
この流れを一つのストーリーとして理解することで、大学入試の論述問題や一問一答問題に強くなります。
宗教改革から近代思想へ 総合問題演習50本勝負!
一問一答(15問)
問1
1517年、ルターが贖宥状販売を批判して発表した文書は何か。
解答:95か条の論題
問2
ルターが主張した「人は信仰によってのみ義とされる」という思想を何というか。
解答:信仰義認説
問3
ルターが唯一の権威と考えたものは何か。
解答:聖書
問4
カルヴァンが唱えた、救済は神があらかじめ決めているとする考えを何というか。
解答:予定説
問5
カルヴァンが職業を神から与えられた使命とした思想を何というか。
解答:職業召命観(コーリング)
問6
フランスにおけるカルヴァン派信徒を何と呼ぶか。
解答:ユグノー
問7
オランダ独立戦争の結果、独立した国はどこか。
解答:ネーデルラント連邦共和国
問8
1572年、フランスで起きたユグノー大量虐殺事件を何というか。
解答:サン=バルテルミの虐殺
問9
1598年、フランス国王アンリ4世がユグノーに信仰の自由を与えた勅令を何というか。
解答:ナントの勅令
問10
三十年戦争の終結を定めた条約は何か。
解答:ヴェストファリア条約
問11
ヴェストファリア条約で正式に公認されたプロテスタントの宗派は何か。
解答:カルヴァン派
問12
「我思う、ゆえに我あり」と唱えた哲学者は誰か。
解答:デカルト
問13
神=自然とする汎神論を唱えた哲学者は誰か。
解答:スピノザ
問14
「人間の心は生まれたときは白紙である」とする経験論を提唱した思想家は誰か。
解答:ジョン・ロック
問15
ロックが唱えた、統治権は人民の同意に基づくべきとする理論を何というか。
解答:社会契約論
正誤問題(5問)
問16
ルターは贖宥状を支持し、販売促進に尽力した。
解答:誤(ルターは贖宥状販売に強く反対した)
問17
カルヴァンは人間の善行によって救済が得られると主張した。
解答:誤(救済は神があらかじめ定めるとする予定説を唱えた)
問18
ヴェストファリア条約では、スイスとネーデルラントの独立が承認された。
解答:正
問19
スピノザは神と自然を別の存在と捉える二元論を提唱した。
解答:誤(スピノザは神=自然とする汎神論を唱えた)
問20
デカルトは理性を重視し、「方法的懐疑」に基づく哲学体系を構築した。
解答:正
一問一答(10問)
問21
カルヴァン派がアメリカ新大陸に及ぼした影響として有名な集団は何か。
解答:ピルグリム・ファーザーズ
問22
オランダ独立戦争中、独立を宣言した北部7州が形成した国家は何か。
解答:ネーデルラント連邦共和国
問23
三十年戦争中、戦局を逆転させたスウェーデン王は誰か。
解答:グスタフ=アドルフ
問24
フランスの宰相で、三十年戦争でプロテスタント側を支援した人物は誰か。
解答:リシュリュー
問25
「方法的懐疑」を唱え、哲学に演繹法を導入した思想家は誰か。
解答:デカルト
問26
スピノザの思想で、神と自然を同一視する立場を何というか。
解答:汎神論
問27
ロックの思想に影響を受けたアメリカ独立宣言の起草者は誰か。
解答:トマス・ジェファソン
問28
ヴェストファリア条約後、国際秩序で台頭した国はどこか。
解答:フランス
問29
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を著し、カルヴァン主義と資本主義の関係を論じた社会学者は誰か。
解答:マックス・ウェーバー
問30
ニュートンの自然法則に基づき、宇宙を巨大な機械として捉える世界観を何というか。
解答:機械論的世界観
正誤問題(15問)
(複数選択を含む)
問31
ナントの勅令はカルヴァン派を弾圧するために発布された。
解答:誤(ユグノーに信仰の自由を与えるため)
問32
オランダ独立戦争は、スペイン・ハプスブルク家支配への反発から始まった。
解答:正
問33
三十年戦争は、当初から国家間戦争として始まった。
解答:誤(当初は宗教戦争として始まり、後に国家間戦争へ発展)
問34
ヴェストファリア条約はカルヴァン派を正式に公認した。
解答:正
問35
三十年戦争後、神聖ローマ帝国の権威は強化された。
解答:誤(ヴェストファリア条約で諸侯主権が認められ、帝国は名目化)
問36
次のうち、デカルトの思想に関する記述として正しいものをすべて選べ。
A. 方法的懐疑を唱えた
B. 経験論を提唱した
C. 「我思う、ゆえに我あり」と主張した
D. 汎神論を唱えた
解答:A・C
問37
次のうち、ロックの思想に関する記述として正しいものをすべて選べ。
A. 経験論を提唱した
B. 社会契約論を唱えた
C. 汎神論を唱えた
D. アメリカ独立宣言に思想的影響を与えた
解答:A・B・D
問38
スピノザは、宗教的寛容を重視する立場を取った。
解答:正
問39
ヴェストファリア条約で正式に独立を承認された国は、スイスとネーデルラントである。
解答:正
問40
カルヴァンは、ルターの贖宥状販売推進を批判したことで知られる。
解答:誤(贖宥状批判はルター。カルヴァンは予定説を提唱した)
問41
デカルトの思想は、後の科学革命にも大きな影響を与えた。
解答:正
問42
ロックの経験論は、生得観念を強く肯定する立場に立っている。
解答:誤(ロックは生得観念を否定し、経験を重視した)
問43
宗教改革は、印刷術の普及と無関係に進展した。
解答:誤(印刷術の普及がルター思想の拡散を後押しした)
問44
カルヴァン派はアメリカ新大陸にも渡り、ピルグリム・ファーザーズとして植民を進めた。
解答:正
問45
スピノザは、神を自然と同一視しない立場からデカルトを批判した。
解答:誤(スピノザは神=自然の立場をとった)
一行問題(5問)
問46
ルターの宗教改革を広める上で決定的役割を果たした技術革新は何か。
解答:活版印刷術
問47
三十年戦争でプロテスタント側に加勢した、カトリック国のフランス宰相は誰か。
解答:リシュリュー
問48
ロックの思想が影響を与えた18世紀アメリカの重要文書は何か。
解答:アメリカ独立宣言
問49
ニュートンが提唱した「万有引力の法則」を中心とした自然観を何というか。
解答:機械論的世界観
問50
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を著した人物は誰か。
解答:マックス・ウェーバー
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