【世界史】科学革命と啓蒙思想を完全攻略|近代ヨーロッパ思想の流れを徹底解説

当サイト「もう一度、学ぶ」は、Amazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。また、A8.netなど他のアフィリエイトプログラムを利用しており、当サイト内のリンクを通じて商品を購入した場合、報酬を得ることがあります。

近代ヨーロッパ思想を語るうえで欠かせないのが、科学革命(16〜17世紀)と啓蒙思想(18世紀)です。

「ニュートン」「デカルト」「ロック」「ルソー」「カント」などの思想家の名前は覚えていても、彼らがどのように時代の流れと関係しているかを整理できていない受験生は多いでしょう。

本記事では、

  • 科学革命の背景とその意義
  • 啓蒙思想へのつながり
  • 代表的な思想家の主張と相互関係

を時系列で解説します。さらに、入試頻出の論述問題や一問一答・正誤問題も盛り込み、科学革命と啓蒙思想を体系的に理解できるように構成しました。

目次

第1章 科学革命と近代自然観の形成

16〜17世紀ヨーロッパでは、ルネサンス以降の人文主義の高まりを背景に、従来の「神中心の世界観」が大きく揺らぎました。

コペルニクスの地動説、ガリレオの観測、ケプラーの惑星運動法則、そしてニュートンによる万有引力の発見により、自然は神の意志ではなく法則によって支配されるという近代的な自然観が誕生します。

この「科学革命」は、啓蒙思想へとつながる合理主義的世界観の基盤となりました。

1-1 科学革命が生まれた背景

科学革命は突然始まったわけではなく、複数の歴史的要因が重なっていました。

  • ルネサンスの人文主義
    → 古典文献の再発見により、「自然を観察し、実験によって理解する」意識が強まった。
  • 大航海時代の進展
    → 新大陸や新しい星図がもたらされ、従来のプトレマイオス的宇宙観に疑問が生じた。
  • 宗教改革の影響
    → 聖書解釈の多様化が「権威への懐疑」を促し、自由な思索を後押しした。

これらが重なり、16世紀後半から17世紀にかけて「科学的知識の体系化」が急速に進みます。

1-2 コペルニクスからニュートンへ:近代科学の確立

科学革命の流れを理解するには、主要な科学者の成果を押さえることが重要です。

  • コペルニクス(1473〜1543)
    → 『天球回転論』で地動説を提唱。従来の天動説を根底から揺るがした。
  • ガリレオ(1564〜1642)
    → 望遠鏡で木星の衛星を観測し、地動説を実証的に支持。
    しかし宗教裁判で有罪となり、以後「科学と宗教の対立」を象徴する存在に。
  • ケプラー(1571〜1630)
    → 惑星の運動が「楕円軌道」であることを発見。天文学を数学的法則で説明。
  • ニュートン(1643〜1727)
    → 『プリンキピア』で万有引力の法則運動の三法則を体系化。
    ここに近代自然科学の枠組みが完成した。

1-3 科学革命がもたらした思想的転換

科学革命は単なる自然科学の進歩ではなく、人間の世界観を根底から変える出来事でした。

  • 「神が宇宙を動かしている」という世界観 → 「自然は数理的法則に従う」へ
  • これにより、「理性に基づいて世界を理解する」という合理主義が形成され、啓蒙思想の哲学的土台となった。

1-4 入試で狙われるポイント

  • 地動説と天動説の違い
  • ニュートン『プリンキピア』の意義
  • 科学革命と啓蒙思想の関係
  • 科学革命に対する宗教界の反応(例:ガリレオ裁判)

重要論述問題にチャレンジ

16〜17世紀の科学革命がヨーロッパ社会に与えた影響を、ニュートンやガリレオなどの科学者を例に挙げながら説明せよ。(180字程度)

6〜17世紀の科学革命は、神中心の世界観を揺るがし、合理主義的な自然観を形成した。コペルニクスの地動説は天動説を否定し、ガリレオは望遠鏡観測で地動説を実証した。ケプラーは惑星運動法則を数学で説明し、ニュートンは『プリンキピア』で万有引力と運動の法則を体系化。これにより、自然は神の意志ではなく数理的法則で説明できるという思想が定着し、後の啓蒙思想を準備した。

一問一答+正誤問題に挑戦しよう!

科学革命と啓蒙思想を完全攻略 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1
『天球回転論』を著し、地動説を唱えたポーランドの天文学者は誰か。

解答:コペルニクス

問2
ガリレオが地動説を支持する証拠とした木星の観測結果は何か。

解答:木星の4大衛星の発見

問3
惑星の運動法則を「楕円軌道」で説明した科学者は誰か。

解答:ケプラー

問4
『プリンキピア』を著し、万有引力を発見した人物は誰か。

解答:ニュートン

問5
科学革命の背景として、ルネサンスがもたらした思想は何か。

解答:人文主義

問6
地動説を唱えたため宗教裁判にかけられた科学者は誰か。

解答:ガリレオ

問7
科学革命を支えた望遠鏡や顕微鏡などの発明を促した時代的背景は何か。

解答:ルネサンスと大航海時代

問8
ケプラーの惑星運動法則はどのような形状の軌道を前提としていたか。

解答:楕円軌道

問9
科学革命が啓蒙思想に与えた影響を一言でまとめると何か。

解答:合理主義的世界観の確立

問10
ニュートンの科学観は、後の哲学者にどのような影響を与えたか。

解答:自然法則に基づく合理的世界観を強化し、啓蒙思想を促進した

正誤問題(5問)

問1
ガリレオは『プリンキピア』を著し、万有引力を体系化した。
解答:誤(ニュートンの著作)

問2
ケプラーは惑星が円軌道を描くと主張した。
解答:誤(楕円軌道)

問3
『天球回転論』は、ガリレオが木星の衛星を発見した後に執筆した。
解答:誤(コペルニクスが木星衛星発見前に著す)

問4
ニュートンの『プリンキピア』は近代自然科学の体系を完成させた。
解答:正

問5
科学革命は啓蒙思想の発展に重要な役割を果たした。
解答:正

第2章 啓蒙思想と近代市民社会の形成

18世紀ヨーロッパでは、科学革命によって確立された合理主義的世界観を背景に、「人間の理性による社会の改善」を目指す啓蒙思想が広まりました。

「封建社会から市民社会へ」という時代的転換のなかで、啓蒙思想は政治・社会・経済に大きな影響を与えます。

ロック、モンテスキュー、ルソーといった思想家たちの理論は、アメリカ独立宣言フランス革命の理念的基盤となり、近代ヨーロッパ史を大きく動かしました。

ここでは、主要思想家たちの主張を整理し、啓蒙思想が近代市民社会の形成にどのように寄与したのかを解説します。

2-1 啓蒙思想の誕生と特徴

啓蒙思想は、科学革命の合理主義を社会や政治の領域に応用することで誕生しました。

キーワードは「理性」「進歩」「自然権」です。

  • 理性主義:人間は理性的存在であり、理性によって社会をより良くできる
  • 自然法思想:人間は生まれながらに自由・平等であり、これを保障する政治体制が正当
  • 進歩史観:教育と理性によって人類は進歩するという信念

この思想の広がりは、「啓蒙専制君主」や「立憲主義」の形成にも影響を与えました。

2-2 主要な啓蒙思想家とその思想

啓蒙思想を理解するには、代表的な思想家の理論と時代背景を押さえることが重要です。

(1) ジョン・ロック(イギリス)

  • 著作:『統治二論』
  • 主張:
    • 自然権思想:「生命・自由・財産は生まれながらに保障される」
    • 社会契約説:「国家は自然権を保護するために成立した」
    • 抵抗権の承認:「政府が自然権を侵害するならば国民は政府を打倒できる」
  • 影響:
    • アメリカ独立宣言(1776年)に大きな影響

(2) モンテスキュー(フランス)

  • 著作:『法の精神』
  • 主張:
    • 三権分立論:「権力は立法・行政・司法に分けて相互に抑制させるべき」
  • 影響:
    • アメリカ合衆国憲法やフランス革命後の制度設計に影響

(3) ルソー(フランス)

  • 著作:『社会契約論』
  • 主張:
    • 人民主権論:「主権は人民にあり、政府はその委任を受ける存在」
    • 一般意志:「個々の利害を超えた公共善を実現する意志」
  • 影響:
    • フランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」の理論的基盤

(4) ヴォルテール(フランス)

  • 著作:『哲学書簡』ほか
  • 主張:
    • 宗教批判と信仰の自由:「寛容思想」を提唱し、カトリック教会の権威を批判
    • 「私はあなたの意見には反対だ。しかし、あなたがそれを言う自由は命をかけて守る」

(5) カント(ドイツ)

  • 著作:『純粋理性批判』
  • 主張:
    • 理性の自律:「人間は自らの理性によって行動を律すべき」
    • 啓蒙とは何か:「人間が自らの未成年状態から脱すること」

2-3 啓蒙思想と社会変革

啓蒙思想は、単なる思想運動にとどまらず、社会や国家のあり方を変革する原動力となりました。

  • アメリカ独立戦争(1775〜1783)
    → ロックの自然権思想・抵抗権思想が独立宣言に反映
  • フランス革命(1789)
    → ルソーの人民主権論・一般意志が革命思想に直結
  • 啓蒙専制君主の登場
    → フリードリヒ2世(プロイセン)、マリア=テレジア、ヨーゼフ2世らが改革を推進

2-4 入試で狙われるポイント

  • 啓蒙思想家とその著作の正確な対応
  • 社会契約説の違い(ロック vs ルソー)
  • 三権分立論と人民主権論の違い
  • 啓蒙思想がアメリカ独立戦争やフランス革命に与えた影響

重要論述問題にチャレンジ

18世紀ヨーロッパの啓蒙思想が近代市民社会の形成に果たした役割を、代表的思想家を例に挙げて説明せよ。(200文字程度)

18世紀ヨーロッパで広まった啓蒙思想は、人間の理性による社会改善を掲げ、近代市民社会の形成を促した。ロックは『統治二論』で自然権と抵抗権を主張し、モンテスキューは『法の精神』で三権分立を提唱した。ルソーは『社会契約論』で人民主権と一般意志を説き、ヴォルテールは宗教的寛容と信仰の自由を訴えた。これらの思想はアメリカ独立宣言やフランス革命に反映され、市民の自由と平等を基盤とする近代社会を形成した。

一問一答+正誤問題に挑戦しよう!

第2章:科学革命と啓蒙思想を完全攻略 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1
『統治二論』を著し、自然権思想を提唱した人物は誰か。

解答:ジョン・ロック

問2
モンテスキューが提唱した政治体制の原則は何か。

解答:三権分立

問3
『社会契約論』を著し、一般意志を唱えた思想家は誰か。

解答:ルソー

問4
「宗教的寛容」と信仰の自由を主張した啓蒙思想家は誰か。

解答:ヴォルテール

問5
カントが著した『純粋理性批判』はどのようなテーマを扱ったか。

解答:人間理性の限界と可能性

問6
啓蒙思想がアメリカ独立宣言に与えた思想的影響は何か。

解答:ロックの自然権思想と抵抗権思想

問7
「一般意志」という概念が影響を与えた歴史的出来事は何か。

解答:フランス革命

問8
啓蒙思想が批判した社会的権威は何か。

解答:絶対王政とカトリック教会

問9
啓蒙専制君主の代表例として挙げられるプロイセン王は誰か。

解答:フリードリヒ2世

問10
「人間は理性によって自立すべき」と説いたドイツの思想家は誰か。

解答:カント

正誤問題(5問)

問1
ロックは『社会契約論』で一般意志を唱えた。

解答:誤(一般意志はルソー)

問2
モンテスキューは『法の精神』で三権分立を主張した。

解答:正

問3
ヴォルテールはカトリック教会を全面的に擁護した。

解答:誤(むしろ批判し、宗教的寛容を訴えた)

問4
ルソーの思想はフランス革命に大きな影響を与えた。

解答:正

問5
啓蒙思想はアメリカ独立戦争とは無関係だった。

解答:誤(ロック思想などが強く影響)

第3章 啓蒙思想と近代革命の連動

第2章で解説した啓蒙思想は、単なる思想運動にとどまらず、18世紀後半の大変革を導く原動力となりました。

ロックの自然権思想やルソーの人民主権論は、アメリカ独立戦争やフランス革命に思想的基盤を与え、近代市民社会の成立を促します。

ここでは、啓蒙思想がどのように具体的な社会・政治変革につながったのか、アメリカ独立革命・フランス革命・啓蒙専制君主の改革を中心に解説します。

3-1 アメリカ独立革命と啓蒙思想

18世紀後半、イギリスの植民地政策に反発した北米13植民地は独立を目指します。
このとき、ロックの自然権思想抵抗権が重要な思想的武器となりました。

  • 背景
    • イギリスの重商主義政策 → 「代表なくして課税なし」のスローガンで反発
  • 思想的影響
    • ロックの「生命・自由・財産は自然権」 → 植民地の独立権を正当化
  • 独立宣言(1776年)
    • ジェファソンが起草
    • 「すべての人間は平等に造られ、生命・自由・幸福追求の権利を有する」

結果、独立戦争(1775〜1783)を経てアメリカ合衆国が成立し、世界初の近代的立憲国家が誕生しました。

3-2 フランス革命と啓蒙思想

1789年、フランスで絶対王政を打倒する大革命が勃発します。
ルソーの人民主権論一般意志、モンテスキューの三権分立が革命思想の理論的支柱となりました。

  • 背景
    • 旧体制(アンシャンレジーム)の不平等構造
    • 財政破綻と第三身分の不満
  • 革命理念
    • 「自由・平等・博愛」
    • 『人権宣言』(1789年)にロック・ルソーの思想が反映
  • 影響
    • 王権神授説の否定
    • 国民主権と近代憲法の普及

3-3 啓蒙専制君主と改革

啓蒙思想は革命だけでなく、一部の君主による上からの改革にも影響しました。
これを啓蒙専制主義と呼びます。

  • フリードリヒ2世(プロイセン)
    • 宗教的寛容を認め、司法・教育制度を改革
  • ヨーゼフ2世(オーストリア)
    • 農奴解放令や宗教寛容令を実施
  • エカチェリーナ2世(ロシア)
    • 啓蒙思想を一部採用したが、プガチョフの乱後は農奴制強化へ転換

これらの改革は革命ほど急進的ではありませんでしたが、近代化を進める契機となりました。

3-4 啓蒙思想と近代市民社会の成立

啓蒙思想は科学革命を基盤とし、合理主義的世界観のもとで「自由・平等・権利」を社会に実装する原動力となりました。

アメリカ独立革命、フランス革命、啓蒙専制改革を通じて、近代的立憲主義と国民主権の理念が定着します。

3-5 入試で狙われるポイント

  • アメリカ独立宣言とロック思想の関係
  • 『人権宣言』における啓蒙思想の影響
  • 啓蒙専制君主とその政策
  • 革命・改革・専制の違いを時系列で整理

重要論述問題にチャレンジ

啓蒙思想がアメリカ独立革命とフランス革命に与えた影響を、代表的思想家を挙げながら説明せよ。(200字程度)

啓蒙思想は18世紀後半の革命運動に思想的基盤を与えた。アメリカ独立革命では、ロックの自然権思想と抵抗権思想が独立の正当性を裏付け、独立宣言に反映された。フランス革命では、ルソーの人民主権論や一般意志が革命理念を支え、モンテスキューの三権分立論が立憲政治の設計に活かされた。この結果、「自由・平等・権利」を保障する近代市民社会が形成され、啓蒙思想は政治体制に深く影響を及ぼした。

一問一答+正誤問題に挑戦しよう!

第3章:科学革命と啓蒙思想を完全攻略 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10題)

問1
アメリカ独立宣言の起草者は誰か。

解答:トマス・ジェファソン

問2
アメリカ独立宣言に影響を与えた思想家は誰か。

解答:ジョン・ロック

問3
「代表なくして課税なし」というスローガンを掲げた運動は何か。

解答:アメリカ独立運動

問4
フランス革命のスローガンは何か。

解答:「自由・平等・博愛」

問5
フランス『人権宣言』に強い影響を与えた思想家は誰か。

解答:ルソー

問6
『法の精神』の三権分立論が影響を与えた国の憲法はどこか。

解答:アメリカ合衆国憲法

問7
農奴解放令を発布した啓蒙専制君主は誰か。

解答:ヨーゼフ2世

問8
啓蒙専制主義を掲げたプロイセン王は誰か。

解答:フリードリヒ2世

問9
プガチョフの乱後に農奴制を強化したロシア女帝は誰か。

解答:エカチェリーナ2世

問10
啓蒙思想が世界的に広がるきっかけとなった18世紀の思想運動を何というか。

解答:啓蒙思想運動

正誤問題(5題)

問1
アメリカ独立宣言はルソーの人民主権論に基づいて起草された。

解答:誤(ロックの自然権思想が主)

問2
『人権宣言』は啓蒙思想を反映した文書である。

解答:正

問3
フリードリヒ2世は啓蒙思想を完全否定し、絶対王政を強化した。

解答:誤(啓蒙専制改革を推進した)

問4
アメリカ合衆国憲法はモンテスキューの三権分立論を採用した。

解答:正

問5
啓蒙思想はヨーロッパだけでなく、アメリカにも大きな影響を与えた。

解答:正

第4章 啓蒙思想と産業革命・資本主義の展開

第3章では、啓蒙思想がアメリカ独立革命やフランス革命を導く原動力となったことを解説しました。

しかし、啓蒙思想の影響は政治だけにとどまりません。18世紀後半以降、ヨーロッパ社会は産業革命を迎え、経済・社会・思想が大きく変革します。

本章では、啓蒙思想がどのように産業革命や資本主義社会の形成と結びついたのか、さらに「自由」「平等」「所有権」など近代的価値観が経済制度にどのように反映されたのかを詳しく解説します。

4-1 産業革命と啓蒙思想の関係

18世紀半ばから19世紀にかけて、イギリスを中心に産業革命が進展しました。

この過程では、啓蒙思想が育んだ「理性」「自然法」「進歩」といった理念が、経済や技術革新を後押ししました。

  • 理性重視と科学的思考
    → 科学革命の成果を応用した機械技術の発達
  • 個人の自由と所有権の尊重
    → 資本主義経済の思想的基盤
  • 教育・知識の普及
    → 啓蒙思想による識字率向上と情報の共有が、産業革命を支えた

4-2 自由主義経済思想の台頭

産業革命と同時期に、自由主義的経済思想が形成されました。その中心人物がアダム=スミスです。

(1) アダム=スミス(1723〜1790)

  • 著作:『国富論』(1776年)
  • 主張:
    • 自由放任主義(レッセ=フェール)
      → 国家は経済活動に干渉せず、市場の自由に委ねるべき
    • 見えざる手
      → 個々の利益追求が社会全体の利益につながる
  • 影響:
    • 19世紀の資本主義思想の基盤を確立
    • 啓蒙思想の「理性」「自然法」理念を経済分野に適用

4-3 産業革命と社会問題の顕在化

産業革命が進むにつれて、資本主義社会には新たな課題も生じました。

  • 貧富の格差拡大
  • 労働者の過酷な環境
  • 都市問題(衛生・住宅・犯罪)

このような社会問題に対して、啓蒙思想を継承した社会主義思想人道主義的改革運動が現れます。

4-4 啓蒙思想から資本主義・社会主義へ

啓蒙思想は「自由」「平等」「合理性」を重視することで、資本主義経済の発展を理論的に支えました。
一方で、資本主義がもたらした格差や労働問題は、社会主義思想の台頭を促し、19世紀の思想史をさらに多様化させます。

  • 資本主義の基盤
    → 自然権思想(所有権)+自由放任主義
  • 社会主義への萌芽
    → 平等主義的価値観と人道主義から発展

4-5 入試で狙われるポイント

  • アダム=スミス『国富論』の内容と意義
  • 啓蒙思想と産業革命の関係
  • 自然権思想と資本主義の思想的基盤
  • 資本主義と社会主義思想の萌芽の対比

重要論述問題にチャレンジ

18世紀後半の啓蒙思想が産業革命と資本主義経済の発展に与えた影響を説明せよ。。(0字程度)

18世紀後半、啓蒙思想は産業革命と資本主義の発展に重要な役割を果たした。科学革命を受け継いだ合理的思考は技術革新を促進し、理性と自然法に基づく自由主義的価値観は経済制度に適用された。アダム=スミスは『国富論』で自由放任主義を提唱し、「見えざる手」による市場調整を主張した。啓蒙思想の個人主義と所有権尊重の理念は資本主義社会を理論的に支えたが、同時に貧富格差や労働問題の顕在化をもたらし、社会主義思想の萌芽につながった。

一問一答+正誤問題に挑戦しよう!

科学革命と啓蒙思想を完全攻略 一問一答&正誤問題15問 問題演習

一問一答(10問)

問1
『国富論』を著した経済学者は誰か。

解答:アダム=スミス

問2
アダム=スミスが提唱した市場経済を導く原理を何というか。

解答:「見えざる手」

問3
「国家は経済に介入すべきでない」という主張を何というか。

解答:自由放任主義(レッセ=フェール)

問4
産業革命が最初に起こった国はどこか。

解答:イギリス

問5
啓蒙思想が資本主義思想に与えた影響の中心的概念は何か。

解答:自然権思想(所有権の尊重)

問6
産業革命期に顕在化した都市問題の一例を挙げよ。

解答:衛生悪化・住宅不足・犯罪増加など

問7
社会問題の深刻化に対応して発展した思想は何か。

解答:社会主義思想

問8
啓蒙思想が産業革命を後押しした理由の一つを答えよ。

解答:科学的合理主義による技術革新の促進

問9
啓蒙思想が教育に与えた影響は何か。

解答:識字率の向上と知識普及を促した

問10
産業革命期における労働環境悪化が促進した改革運動を何というか。

解答:人道主義的改革運動

正誤問題(5問)

問1
アダム=スミスは『社会契約論』で人民主権を唱えた。

解答:誤(『国富論』で自由放任主義を唱えた)

問2
産業革命はフランスで最初に始まった。

解答:誤(イギリスで始まった)

問3
「見えざる手」という言葉はアダム=スミスの経済理論に由来する。

解答:正

問4
産業革命期の社会問題は啓蒙思想とは無関係だった。

解答:誤(啓蒙思想の自由主義的理念が資本主義発展を促進)

問5
社会主義思想は産業革命によって生じた社会問題への対応として生まれた。
解答:正

第5章 総まとめ|科学革命から啓蒙思想・革命・産業革命までを俯瞰する

ここまで第1章から第4章にかけて、

科学革命 → 啓蒙思想 → 近代革命 → 産業革命・資本主義の展開

という近代ヨーロッパ思想史の大きな流れを解説してきました。

最後に、これらを一気に整理し、入試に頻出する重要人物・思想・出来事のつながりを俯瞰してまとめます。

この章を押さえることで、複雑に見える近代思想史を「一本のストーリー」として理解できるようになります。

5-1 科学革命から啓蒙思想へのつながり

まずは第1章・第2章で扱った「科学革命」と「啓蒙思想」の関係を整理します。

  • 科学革命(16〜17世紀)
    • コペルニクス → 地動説
    • ガリレオ → 観測的実証主義
    • ケプラー → 惑星運動法則
    • ニュートン → 万有引力・運動法則体系化
    • 意義:神中心の世界観から「合理主義的自然観」へ転換
  • 啓蒙思想(18世紀)
    • 科学革命の合理主義を社会・政治へ応用
    • 理性・自由・平等・自然権を重視
    • ロック・モンテスキュー・ルソー・ヴォルテール・カントらが登場

まとめると:
科学革命が「自然法則の合理的理解」を提示し、それを社会に応用したのが啓蒙思想です。

5-2 啓蒙思想と近代革命の連動

啓蒙思想は、18世紀後半に起きた革命運動に大きな影響を与えました。

  • アメリカ独立革命(1775〜1783)
    • ロックの自然権思想・抵抗権が独立宣言に反映
  • フランス革命(1789〜1799)
    • ルソーの人民主権・一般意志が理念の基盤
    • 『人権宣言』に啓蒙思想が色濃く反映
  • 啓蒙専制君主の改革
    • フリードリヒ2世(プロイセン)、ヨーゼフ2世(オーストリア)、エカチェリーナ2世(ロシア)らが啓蒙思想を政策に応用

まとめると:
啓蒙思想は「理性と自由」を重視し、革命・改革・立憲主義の広がりを支えました。

5-3 産業革命・資本主義と啓蒙思想

18世紀後半からの産業革命は、啓蒙思想と深く結びついています。

  • 科学的合理主義 → 技術革新へ
    • 科学革命で培った知識を産業に応用
  • 自然権思想(所有権) → 資本主義の基盤
    • 個人の自由と財産権の尊重が経済制度の原理に
  • 自由主義経済思想
    • アダム=スミス『国富論』(1776年)
    • 「見えざる手」「自由放任主義(レッセ=フェール)」

一方で、資本主義の進展は貧富の格差や労働問題を引き起こし、社会主義思想の萌芽を促しました。

5-4 時代の流れを整理する年表

世紀出来事・思想家主な著作・理論影響
16世紀コペルニクス『天球回転論』地動説を提唱
17世紀ガリレオ・ケプラー・ニュートン『プリンキピア』科学的自然観の確立
18世紀前半ロック・モンテスキュー『統治二論』『法の精神』自然権思想・三権分立
18世紀後半ルソー・ヴォルテール・カント『社会契約論』『哲学書簡』『純粋理性批判』啓蒙思想の成熟
18世紀後半アメリカ独立革命独立宣言ロック思想を反映
18世紀末フランス革命『人権宣言』啓蒙思想が理念を提供
18〜19世紀アダム=スミス・産業革命『国富論』資本主義と自由主義経済

5-5 入試で差がつく理解のコツ

  • 思想家と著作・主張の正確な対応を覚える
    → 特にロック・ルソー・モンテスキューの社会契約説の違い
  • 時系列で理解する
    → 科学革命 → 啓蒙思想 → 革命 → 産業革命
  • 思想と社会のリンクを意識する
    → 理論が歴史を動かす具体的な例を押さえる

5-6 まとめ

科学革命で誕生した合理的自然観は、18世紀の啓蒙思想を育み、啓蒙思想は自由・平等・権利を重視する近代的価値観を社会へ広めました。

その結果、アメリカ独立革命・フランス革命が起こり、近代市民社会と立憲主義が成立します。さらに産業革命を経て、資本主義と社会主義が台頭し、近代世界の基盤が形作られました。

この一連の流れを「思想 → 社会 → 経済」という三層で整理すると、大学受験の世界史で差をつけられます。

【付録】科学革命・啓蒙思想・資本主義思想 早見表

区分思想家主な著作主張・理論影響
科学革命コペルニクス『天球回転論』地動説を提唱(地球は太陽の周りを公転)従来の天動説を否定し、科学的宇宙観の出発点に
ガリレオ『天文対話』望遠鏡観測で木星の衛星を発見、地動説を支持科学と宗教の対立(ガリレオ裁判)
ケプラー『新天文学』惑星は楕円軌道を描くと発見数学的自然観を発展させた
ニュートン『プリンキピア』万有引力の法則・運動の三法則を体系化近代自然科学を完成
啓蒙思想ロック『統治二論』自然権思想(生命・自由・財産)と抵抗権を主張アメリカ独立宣言に大きな影響
モンテスキュー『法の精神』三権分立論(立法・行政・司法の相互抑制)アメリカ合衆国憲法に採用
ルソー『社会契約論』人民主権論一般意志を提唱フランス革命の理念的基盤に
ヴォルテール『哲学書簡』宗教的寛容言論の自由を主張教会批判と信仰の自由を推進
カント『純粋理性批判』「理性の自律」・「啓蒙とは未成年状態から脱すること」啓蒙思想を哲学的に体系化
資本主義思想アダム=スミス『国富論』自由放任主義(レッセ=フェール)見えざる手資本主義経済思想の基礎を確立
啓蒙専制君主フリードリヒ2世宗教寛容・司法改革・教育振興プロイセンの近代化を推進
ヨーゼフ2世農奴解放令・宗教寛容令を実施オーストリア改革を先導
エカチェリーナ2世啓蒙思想を一部採用したが後に農奴制を強化ロシア帝国の近代化と中央集権を進めた

使い方のポイント

  • 思想家と著作名は必ずセットで暗記
    → ロック『統治二論』、モンテスキュー『法の精神』、ルソー『社会契約論』などは頻出。
  • 主張のキーワードを押さえる
    → 「自然権」「三権分立」「一般意志」「見えざる手」などは要チェック。
  • 思想と出来事をつなげて覚える
    → ロック → アメリカ独立、ルソー → フランス革命、アダム=スミス → 資本主義。
科学革命と啓蒙思想解説 総合問題演習50本勝負!

【MARCHレベル(20本)】

一問一答(15問)

問1
『天球回転論』を著し、地動説を唱えた科学者は誰か。

解答:コペルニクス

問2
ガリレオが地動説の証拠とした木星の観測結果は何か。

解答:木星の4大衛星の発見

問3
惑星の運動法則を楕円軌道で説明した人物は誰か。

解答:ケプラー

問4
『プリンキピア』を著し、万有引力を体系化した科学者は誰か。

解答:ニュートン

問5
科学革命の背景として、自然を神の意志ではなく法則で説明しようとした思想を何というか。

解答:合理主義

問6
「寛容思想」を唱え、宗教的自由を主張した啓蒙思想家は誰か。

解答:ヴォルテール

問7
『統治二論』を著し、自然権と抵抗権を説いた人物は誰か。

解答:ジョン・ロック

問8
『法の精神』を著し、三権分立論を提唱した思想家は誰か。

解答:モンテスキュー

問9
『社会契約論』を著し、一般意志を重視した思想家は誰か。

解答:ルソー

問10
「理性の自律」を説き、啓蒙の本質を「未成年状態からの脱却」とした哲学者は誰か。

解答:カント

問11
アダム=スミスが『国富論』で提唱した経済原理は何か。

解答:自由放任主義(レッセ=フェール)

問12
『国富論』で示された「見えざる手」とは何を意味するか。

解答:個人の利益追求が社会全体の利益につながること

問13
ロックの自然権思想が反映された歴史的文書は何か。

解答:アメリカ独立宣言

問14
ルソーの人民主権思想が反映された革命は何か。

解答:フランス革命

問15
啓蒙思想が影響を与えたプロイセン王で「啓蒙専制君主」と呼ばれる人物は誰か。

解答:フリードリヒ2世

正誤問題(5問)

問16
ケプラーは惑星が円軌道を描くと主張した。

解答:誤(楕円軌道を主張した)

問17
ヴォルテールは宗教的寛容を否定し、カトリック教会を擁護した。

解答:誤(宗教的寛容を主張し、教会を批判した)

問18
『プリンキピア』はニュートンの著作で、近代自然科学の体系を完成させた。

解答:正

問19
モンテスキューの三権分立論は、アメリカ合衆国憲法にも影響を与えた。

解答:正

問20
啓蒙思想はヨーロッパのみで展開され、アメリカ独立革命には影響しなかった。

解答:誤(独立宣言に大きな影響を与えた)

【早慶レベル(30本)】

一問一答(10問)

問21
ガリレオが著した、天動説と地動説を対話形式で論じた書物は何か。

解答:『天文対話』

問22
カントが著した『純粋理性批判』の中心的テーマは何か。

解答:人間理性の限界と可能性の探究

問23
「私はあなたの意見には反対だ。しかし、それを言う自由は命をかけて守る」という言葉で知られる思想家は誰か。

解答:ヴォルテール

問24
『百科全書』を編纂した代表的啓蒙思想家を1人挙げよ。

解答:ディドロ(またはダランベール)

問25
ルソーが『社会契約論』で提唱した「一般意志」は何を意味するか。

解答:公共善を実現する全体の意志

問26
「啓蒙とは人間が自己の未成年状態から抜け出すことである」と定義した思想家は誰か。

解答:カント

問27
「自由放任主義(レッセ=フェール)」の思想的背景となった啓蒙思想家は誰か。

解答:アダム=スミス

問28
『百科全書』が啓蒙思想の普及に果たした役割は何か。

解答:合理的知識を体系化し、社会改革思想を広めた

問29
アメリカ独立宣言を起草した人物は誰か。

解答:トマス・ジェファソン

問30
『人権宣言』(1789年)は主に誰の思想に影響を受けたか。

解答:ルソー

正誤問題(15問・複数選択含む)

問31
啓蒙思想の代表的著作『百科全書』は、ヴォルテールが単独で編纂した。

解答:誤(ディドロとダランベールが中心となって編纂した)

問32
ニュートンの『プリンキピア』は、科学革命における集大成とされる。

解答:正

問33
カントは経験論と合理論を統合し、人間理性の限界を示した。

解答:正

問34
ロックの自然権思想では「生命・自由・財産」が生得的権利とされた。

解答:正

問35
モンテスキューの三権分立論は、フランス革命期の憲法制定には全く影響しなかった。

解答:誤(アメリカ憲法だけでなくフランス憲法にも影響した)

問36
啓蒙専制君主には以下の人物が含まれる。(複数選択)
A. フリードリヒ2世
B. ルイ14世
C. エカチェリーナ2世
D. ヨーゼフ2世

解答:A・C・D(ルイ14世は絶対王政を強化した君主で啓蒙専制ではない)

問37
ヴォルテールは『社会契約論』を著し、一般意志を提唱した。

解答:誤(『社会契約論』はルソーの著作)

問38
「見えざる手」という言葉はアダム=スミスの経済理論を表す。

解答:正

問39
啓蒙思想の普及を支えたサロン文化は、主に18世紀フランスで発展した。

解答:正

問40
『百科全書』は科学的知識を独占し、啓蒙思想の拡散を防ぐ目的で出版された。

解答:誤(むしろ知識を普及し、社会改革を促す目的だった)

問41
フランス革命における『人権宣言』は、ルソーとヴォルテールの思想を反映している。

解答:正

問42
ケプラーの惑星運動法則は「円軌道」に基づくものである。

解答:誤(楕円軌道)

問43
『国富論』は啓蒙思想の影響を受け、自由主義経済を理論化した著作である。

解答:正

問44
カントは啓蒙の定義を「理性による人間の自律」とした。

解答:正

問45
啓蒙思想は18世紀にヨーロッパで誕生し、アメリカやアジアには影響を与えなかった。

解答:誤(アメリカ独立宣言にも大きく影響した)

一行問題(5問)

問46
『百科全書』編纂の中心人物2人を答えよ。

解答:ディドロ、ダランベール

問47
ニュートンが『プリンキピア』で体系化した法則を2つ答えよ。

解答:万有引力の法則、運動の三法則

問48
啓蒙専制君主の政策例を1つ挙げよ。

解答:ヨーゼフ2世の農奴解放令、フリードリヒ2世の宗教寛容令など

問49
ルソーが提唱した「一般意志」と対立する概念を答えよ。

解答:全体意志(私的利益の総和)

問50
アダム=スミスが『国富論』で主張した経済的理念を簡潔に述べよ。

解答:市場の自由競争による国家の繁栄(自由放任主義)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次